偶然は進化して奇跡となる
「あ、あの!本当にすみませんでした!!」
先程俺に思い切りドアをぶつけた人は召喚術者という役職の人らしい。年は俺よりも若そうなイメージで女性だ、そして美人、なんとも夢というのは都合のいい代物なんだと思う。
「いや、俺の方こそ待機していなくて悪かったよ、ごめんね?」
「ゆ、勇者様が謝られるなんて滅相もないです!!私の不注意なんです!!本当にすみません!!」
彼女の言葉からもわかるように夢の俺は勇者らしい、夢って確か現実の記憶を整理して見せてる筈なんだが……。しかもドアに当たったときものすごく痛かった、随分と夢は自由が聞くんだな。
「それで今どこに向かっているんだい?」
疑問はどうせ夢だしなんとかなるだろう、話を進めてみるかと思い彼女に質問をする。
「王様のところです、勇者様の召喚に成功したということでご挨拶がしたいとのことで。」
「礼儀とかって気をつけた方がいいかな……?」
予想はしていたがやはりVIPとのご対面らしい、これは相当心配だ、突然首をはねられたりした夢も終わってしまいそうだしね。
「多分大丈夫じゃないでしょうか……?王様は温厚な方ですし本当におかしな真似をしなければ大丈夫だと思います。」
「そうか、ありがとう。」
「ええ、どういたしまして、あ、もうすぐ着きますよ。ここからのお話長いと思いますけど頑張ってください!」
そう言いながら彼女は扉に手を掛けた。
「それで、そなたが異世界から召喚された勇者か。」
誠に状況が理解できません、今リーナと王様の会話を聞いていてここまでの仮説が間違っていたと思い知らされた。
リーナっていうのは召喚術者の女の子のことだよ、王様に名前で呼ばれたから覚えたよ。
ここからが本題だ。
彼女達の話では俺は異世界から召喚された勇者らしい、最初は夢か?とも思ったけれど話を聞いているとこの「勇者召喚の儀式」は適性を持つものが瀕死の状態でなくてはならないらしい。なぜなら世界をまたにかけて行う儀式、魂が不安定な瀕死の状態でないとこの世界に引きずり込めないようだ。
そんな状態あったかと不思議に思うが記憶を整理していくと確かに瀕死だった、トラックに跳ね飛ばされたのが最後だったからね。多分あれのせいだろう。
かくして、俺は訳もわからないまま勇者に仕立て上げられてしまった始末である。
やっと自覚しました、この世界が夢じゃないと。わりと鈍いですね。
ちなみにあそこで召喚されていなかったら反対車線から車が止めを刺していた事態になっていたというのは余談です。