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輪の大陸にある《4の国》

《4の国》のある会社の幸せになりたい課長さんのお話

近くて遠い4つの世界のお話


世界の始まりはスープ皿に満たされた粘度のある命の水

天から落ちた滴りが水面を押し出し、それは王冠へ、王冠から神へと変化し

波紋は大地となった


波紋から成った大地は、大きな大きな輪の形をしていて

それを四柱の王冠の女神達が、それぞれ守護している


これはそんな世界の《4の国》の話





欲と機械の国、科学が発達した国

仕組みを理解できずとも使える”力”に溺れるかもしれない、危うい国


「あ~、さっむいわね~」

「旅行の醍醐味ですよ、オーロラ綺麗だったですよね」

「さっむいわよ」


寒い寒いと連呼するのはある会社の課長さん、それに答えるのは同じ会社の主任さん。2人は2歳違いだが仲がよく、たまにこうして旅行に出かける。前回は国内だったので今回は海外だ。


「どぞどぞ課長様、ちょこっと奮発したお高いワインですよ」

「うむ、苦しゅうない」


ワインとつまみで盛り上がる。


「主任よ、世界はでっかい輪の形をしている」

「はいはい、そうですね」

「死後の世界を信じるか?」

「さぁ、神殿では言及してませんしね」


ごくりとワインを飲み課長さんは言う。


「輪っていうのは、丸いだろう?丸は回って繋がっている。人の魂もグルグル廻っていると思われる」

「はぁ、どうしました?前世の記憶でも蘇りましたか?」

「無いわよ、そんなもの。でも、生まれ変わっている可能性も無きにしも非ず!!」


主任さんは課長さんのグラスをワインで満たす。しかもなみなみと。おっとっとなんて言いながら、零れそうなワインを慌てて口に運ぶ課長さんは


「グルグルとまわりまわって……、次世では結ばれようってあのひとがぁ~~~!!」

「振られたんですね……」


よしよしとつまみを進める主任さん。もし前世があるのなら、同じ様なこと言われて振られていますよ多分、と思っていたのは内緒で。とても優秀な課長さんは、へっぽこ男にばかりひっかかって、最終的に「俺がいなくても」と振られるのを繰り返している。これでは「前世が」なんて言い出すのも、まぁ多少わかるけどと主任さんもワインを飲む。


「もっといい男が現れますよ、その内」

「あのひと程、いい男なんていないわよぉ」

「じゃあ、終了で」

「酷ッ!!」


そもそも依存してもらわないと愛せない女なんて、邪魔じゃないかしら?結果的にさらに弱弱女へ向かうだけだと思う。そんな風に考える主任さんは結婚に夢を見ていない、全然、まったく。


何故なら……


「いいわよね、アンタ。すでにイイ男の婚約者がいてさ」

「ん~、あれはあれで面倒ですよ。幼馴染で親同士で決めた婚約者ですもの、結婚する前から熟年です」

「……体の相性の方はどうよ、主任」

「無駄に上手くて、キモイです」


リア充め!!と課長さんのクッション攻撃を受ける主任さんだった。






「無駄に上手くて悪かったな……」

「悪くないですよ、キモイといったのです」


帰国後、婚約者に怒られる主任さん。どうしてばれたのかと言うと、課長さんのタレこみの所為だった。ここは彼女たちが務める会社の専務室。お昼休みに婚約者である専務に呼び出され、怒られた。


超怒られた。


どれくらい怒られたのかと言うと、専務室で1発ナニをキメられるくらい怒られた。


「お昼まだ食べていないのですけれど」

「俺のモノを咥えればいい」

「食いちぎるぞ専務」


消臭剤と空気清浄機をフル活動させながら、幼馴染ってときめきがないわよねと思う主任さんだった。





「そりゃお前が悪い」

「……気心も知れているし、親の公認だし、体の相性も良いし……何が不満なんだ?」

「ときめきだよ、専務君」

「男と長く続かないお前に言われてもなぁ……」


なんだと、折角愛のキューピッド役をやってあげているのにと怒る課長さん。課長さんと専務は同期だったので、主任さんの情報を流してあげていたのだった。キューピッドと言うよりは狩人だと思っている専務、どちらも恐ろしい弓矢を持っているけどイメージ的に。


「幼馴染っていうのは、もっとチョロイものだと思っていたのだが、難しいな……」

「そんな事思っている時点でアウトだ、馬鹿」

「何故だ、愛し合っているのだから即結婚したっていいだろう?アイツが16歳になったら入籍するつもりが、高校で苗字が変わると面倒だからって嫌がったから我慢した。高校でたら結婚するつもりが、大学行きたいって言うから我慢した。大学でたら結婚するつもりが仕事したいって言うから、就職活動に時間取られない様にうちの会社に内定ださせたし。入社して1年くらいしたら寿退社させようとしたのに、優秀でプロジェクトリーダーになっているし、出世しているし。さすが俺の婚約者だけど!!早く、家に監禁して俺だけを見て、俺だけを感じさせたいのに……」


お前の愛が重すぎる、そう課長さんは思った。


「じゃあ、お上手な専務君。閨でイかせてほしかったら婚姻届けにサインしろとか言ってみたら?主任に怒られたら、私の入れ知恵だったと言っていいからさ……」

「そうかわかった、やってみる。……動画で残しておいた方がいいかな?」

「アウトだ、完全にアウトだ!!」


怒られるどころの騒ぎじゃない。犯罪だと思われる。






「で、サインしたの?」

「しましたよ、ヤリ殺されるかと思いました。取りあえずイってから破こうと思ったら、駅弁状態でドアの隙間から婚約届を秘書さんに渡して、抜かずのってやつですよ!!意識が戻ったらもう昼で、役所に提出されていました。死ぬかと思いました、死ぬかと思いましたっ!!」

「……アイツの愛は本当に重いな。訴えるのなら、アイツだけにしてくれ」


ここは国内の高級旅館、政治家や芸能人や不倫カップルがしっぽりしそうなほどの高級さ。課長さん(独身)と主任さん(既婚者)は、そんな訳ありっぽい旅館に、女2人で泊まっていた。課長さんは主任さんのお猪口になみなみと酒を注ぐ。ちなみに課長さんは湯呑で飲んでいた。


「もっとお洒落なビュッフェとかの方が良かったですか?アレがここじゃなくちゃ外泊駄目って言うから……アイツ亭主面しやがって!!」

「いや、入籍したんだから亭主であっているよ。……私は構わないぞ、酒も料理もウマ~だし。連れがあのひとだったら、なおよかったのに~~~!!来世にぃぃぃ!!」

「課長、まだ引きずっているんですか?」

「あのひととなら、異世界に行ってもいい……」

「私は嫌ですよ、新婚で出張は」


異世界は出張扱いか……そうつぶやきながら、酒をあおる課長さんだった。酒を分解しやすい体質の課長さんは、内風呂では飽き足らず大浴場へと出かけた。高級旅館なので静々と歩いていると、ちょうど向こうから結構有名なモデルさんが、可憐な女性を連れて歩いてきた。


ここは見てみないふりをしなければ、高級旅館だからな!!と思った課長さんは、私は気にしていませんことよ~と言う感じですれ違う。


(さすがデルモはナウいシャンをつれているのか……)


という死語バリバリな感想を持った。そこまで年ではないのだが親が使っていた言葉を覚えていたのだろう。




さらに旅館内のバーの前を通ったら、なんだか違和感を感じる2人連れを見た。違和感の正体は高級さのかけらもないバカップルっぷりだった……。ああいう空気の読めない輩は痛いよなぁなんて思った課長さんだったが


「お前、ストーカーか!?痛い女だなぁ!!」

「阿保か、んなわけないでしょう!!って言うか薄給の割にこんな高級旅館に来るなんて、ずいぶんと奮発したなキサマ」

「……」

「おぉう、お嬢さんに出してもらったのか。ヒモか、キサマは!!」


まさかの元カレ、まさかの修羅場。そして100年の恋も吹っ飛んだ課長さんでした。転生したって結ばれないからなと、捨て台詞をはきながら高級旅館に相応しくないドタドタとした足取りで逃げる。


そしてやけ酒を飲んだのだった。






「ご機嫌でよろしいですねぇ、専務」

「妻と同じ土産物を俺に渡すな。そして美味くなかったぞ、それ……」


そりゃあワザとですからね。そう課長さんは言いけらけらと笑う。わざわざ試食して一番不味いものを買ってきた2人だったのだが、それは内緒。むすっとした顔でパッケージを睨んだ後、ポイッと机の上に投げだす。


「課長、結婚の協力をしてくれたお礼に男を紹介しようと思ってさ」


マジか!!と新しい恋に飢えていた課長さんは飛びついたのだが……


「俺の弟・従兄・叔父。どれがいい?」

「遠慮する!!絶対重そうだ」

「いや、スレンダーだぞ?そこそこ鍛えているから、弱弱しくないし」

「そういう意味じゃない!!」


バッと机の上に広げられた3枚の写真。それぞれなかなかのイケメンさん達だった……マジかと、もう一回呟いた。改めて写真をガン見すると、どこかで見たような顔に気付いた。


「専務君、これ誰?」

「母方の従兄だけど、年齢は俺の2年上だったはず」

「この人今をときめくモデルさんではないか?先日の高級旅館で、ナウいシャンとしっぽり中だったぞ?」

「……すまない、言葉の意味が全然わからない。どこの言葉だ、それ?」


専務は噂の従兄君に連絡を取ったところ、先日ようやく好きな女を高級旅館に連れ込むことに成功したらしい。なんだよ、ちゃんとフリーなのを確認しろと課長さんは叫んだため、専務は急ぎ確認の電話をしたところ……



『ごめん兄さん……、おれ実は女のひと無理』

「男が好きなのか、限りなく男に近い女でも駄目か?付いていない穴のある男だと思えば……」

「何失礼な事言っているんだ、専務!!」



『ん~、別にいいけど。職業旅人でもいいのかなぁ?そんなにしっかりしたお嬢さんじゃあ、合わないかもしれないぞ?』

「課長、たしか君は旅行が趣味だったな?合うんじゃないか?」

「そんな自由業、嫌ですよ!!」




全然駄目だった。




果たして課長さんに春は来るのか、はたまた異世界へ行ってしまうのか、それとも転生してしまうのか。


「異世界には行かないし、転生もしないわよ、リア充滅べ!!」




課長さんに幸あれ。

妙に重い専務さんと優秀な主任さんの組み合わせは結構好き、拙作の誰かさん達を彷彿させます。突発的なほのぼのと言い張るお話でした。


読んでくださってありがとうございます。

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[一言] 課長さんに幸せになって欲しいです!
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