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黎命詩―異世界勇者は、名を取り戻す旅に出る―  作者: NaoMizuno
プロローグ

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日輪の外に在るもの

 はじめに、ことわりがあった。

 理は流れ、世界をり、火と水を分かち、空を満たした。

 その循環の中で、人は己の「気」を知り、刀を通して理を学んだ。

 木は育ち、火は燃え、土は支え、金は断ち、水は流れた。

 ――それを、五行ごぎょうという。

 けれど、世界はそれだけではなかった。

 五行の外側に"光"があった。

 それは「命を照らす理」。

 そして、対になる"闇"があった。

 それは「命を包む理」。

 やがて、人はそれらを恐れた。

 光は焼き、闇は呑み、うつろは理そのものを無に帰した。

 世界は裂け、日輪にちりんの光は曇り、理をうたう者は滅んだ。

 ――しかし、理は死なない。

 幾千もの年月を経て、日輪国の片隅。

 河南の山里に、一人の娘が生まれた。

 その瞳は黒く、けれど光を映すたびに、蒼く染まった。

 それは、かつて封じられた"光の理"のしるし

 娘は幼い頃、一人の武人が竹を斬る姿に魅せられた。

 理を織る刃の軌跡。それは、彼女にとって「詠うこと」と同じだった。

 彼女は木刀を握り、静かに呟いた。

『理は、斬るためにあるんじゃない。

 生きるために、詠うもの』

 風が流れ、朝霧あさぎりが揺れる。

 日輪国の外――

 ことわりる者の旅が、今、始まる。

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