再びアフロマの地へ
7年ぶりにアフロマに帰ってきた。
今、アフロスの冒険者ギルド総括長に挨拶をしに来ている。
「ハンニバル伯は、惜しいことだったな。」
「・・・はい。」
「して、これから此方に定住する事にするのか?」
「はい。僕はあの国から追放になってしまったので。もし、ご迷惑で無ければ、こちらに登録の魔法士として頂ければありがたいのですが。」
「願ってもない申し出だが。此方には魔道士が少ない。と言うか今のところ登録は君が初めてだ。多分君にはあちこちに行って貰うことになる。それでもいいかね。」
「はい。でも僕は今はレモートに行かなければならないので、取り敢えずレモート預かりにしてくれませんか?」
「よろしい。君の希望は叶えよう。丁度『新地』に行って貰おうと思っていたのだ。」
「ありがとうございます」
と言う事で、僕は再び、レモートに征く事になった。
☆
レモートにはケビンとヨウゼフも一緒に付いてきた。
ケビンも師匠の弟子だ。僕と同じ平民だ。中ツ国にいたら、あの公爵の恨みを買って消されてしまう。
そしてヨウゼフは僕の弟子だ。彼も危ない。登録はまだ、中ツ国にあるが、いずれ此方に移すだろう。
あの公爵の権力は、段々と弱る。金に物を言わせて得た権力だ。ダンジョンはもうなくなったのだ。
彼処は食料を輸入しなければ,立ちゆかない。魔物は居るのだから、なんとかは、やっていけるだろうが、今までのような勢いはなくなるはずだ。
長い目で見れば、マケンロー公爵領も植生が復活するだろう。そうすれば、より豊かになるかも知れない。僕の生まれ故郷のように。お金が無くても、トロン領は素晴らしいところだった。
植生が豊かで、農民は皆、福福と肥えてにこやかに笑っていたのだから。
師匠の遺品が僕達に残されていた。
生前からケビンに預けていた。7年も前から準備していたという。
あのダンジョンについての意見書は、覚悟をもって開示したのだろう。
そんな師匠を,貴族どもはおのれの貪欲さと、浅慮で殺してしまったのだ。
また、どす黒い感情が噴き出しそうになる。しかし、師匠の遺書を見て考えを改めた。
僕達は、師匠の思い出に泣き、深い優しさに感動して泣いた。
君たちがこの手紙見ている頃は、私はこの世にいないだろう。
国に裁かれたか、若しくは誰かに誅されたか。
だが、その様なことは些末なことだ。
君たちは,復讐など考えてはならない。
その様な荒んだ心を抱えて、人生を歩んではならない。
私は、自分の信念のために自分の命を掲げたのだ。
言うならば、自己満足のためだ。
君たちには私の信念を尊重して貰いたい。
君たちも自分の信念を見付けたら、その為に生きなさい。
君たちの今後に大いに期待する。
では、さらば。
良い人生であった。
クリス・ハンニバル