初めての弟子
彼は、名をヨウゼフ・トロンと言った。
なんと、僕の生まれ故郷トロン領のトロン男爵の末子、5男坊だった。
短慮な彼は家族と喧嘩して家を飛び出した。勉強が嫌いで、腕っ節だけは自信があった。貴族と言っても、5男ともなれば、平民と変わりない。お金も無く、取り敢えず冒険者になって糊口をしのごうとしたようだ。そこで僕に会い、挑んで負けた。そこで、弟子になりたいと思ったそうだ。
適性検査は受けていない。不思議に思って聞くと、貴族は神殿には行かず、鑑定士に来て貰うのだそうだ。貧乏貴族には結構な負担だ。ましてや5男坊。
平民と同じ神殿での適性検査は外聞が悪い、親は彼に自由に生きろと言ったそうだ。
酷い話だ。未だ11歳の子供に自由も何も無い。自分たちの見栄の為に子供の未来を潰して仕舞う。
「ヨウゼフ、字は読めるか?」「はい、家庭教師は、いたんで」其処は、一応貴族なんだな。
体格は素晴らしく、マナは、豊富なはずだ。僕は断りを入れて鑑定してみた。
ヨウゼフ・トロン
年齢・・・13歳
マナ・・・800
適性・・・無、光、土,火
体力・・・200
知力・・・70
スキル・・豪拳
彼には凄い才能があった。勿体ないと思ってしまった。
マナは鍛えればもっと伸びるだろう。年齢の割に知力が低いのが問題だがやる気があれば、なんとかなる・・・かも知れない。
「僕の弟子になる、と言う事は、魔法士になる。ということだな」
「え?」
彼は,自分に適性が在るとは思っていなかったようだ。鳩が豆鉄砲くらったような顔をした。
「どうなんだ?」
「はい・・御願いします。」と、小さな声で答えた。
僕は弟子をとることによって、魔導師にならざるを得なくなった。
☆
トトは指導はしたが、後は師匠に預けた。その時師匠に「君もそろそろ、ギルドに登録しなさい」と言われていた。僕は平民なので、資格が取れないのではと、言ったら「ギルド規約にはそんな記述はない」と言われた。
魔導師になるには、鑑定眼のスキルとが有ること、適性が四つ以上あることだそうだ。この2つの条件が揃うのはなかなか居ない。だから、魔導師はいつも不足している。
僕はすぐに登録出来た。
因みに5人の弟子を育てると、魔道士爵となる。
☆
ヨウゼフは僕の家に同居する事になった。彼には収入が無い。衣食住の面倒をすべて見なければならない。僕も師匠に面倒を見て貰ったのだ。因果は巡る。
魔導師には給与はない。普通の魔導師は国や貴族等に仕えて俸給をもらえるので、問題は無いが、僕のような野良魔導師は完全なボランティアだ。ただ、国から、下賜される、教科書はもらえる。売ればそれなりの金額になるそうだ。
初日、ヨウゼフは、怖い物でも見るようにミミを遠巻きして、緊張しながら、挨拶をしていた。年齢を知ってビビったのだろう。もう一つの問題も無くなった。