公爵領サウス
僕のスキルは、この4年でまた成長した。
神眼は天眼に、剣術は剣士に、健脚は剛脚に、ヒールは何故か治癒魔法になった。
マナも一万を超えた。何か人間離れしてきた。天眼になったことで、誰かに僕のステータスを診られる心配がなくなった。もう、ビクビクする事も無い。堂々とどこでも行ける。
拠点を、一時サウスに戻している。トム兄の以前借りていた家が、売りに出ていたので、購入した。
今、トトとミミが僕の家に来ている。トトが師匠に弟子入りするためだ。
師匠は、普通、適性が三つ以上無いと取らないが、トトの場合獣人でもあるので、興味を持ったらしい。
あす、王都の師匠の所に連れて行く。トトは未だ8歳だが、15歳くらいに見える。
もう僕は、トトをチイに置き換えて診る事はしなくなった。転生者に会って、過去の罪悪感から解放された
「基本魔法文字は完璧に覚えていますが、普通文字はまだ・・です。」
「ほう。何故かね。」
「叔父さんがそうしろって言うから。」
言葉遣いはまだまだ幼いな。まあ、8歳だしな。師匠は、ニタアと笑う。
多分子供に愛想笑いをしたつもりなのだが、いかんせん、あの藪睨みのおっかない顔では相手に伝わらない。トトは僕の方を見て困ったような顔をした。これから、暫くご厄介になるのだ。がんばって、慣れてくれ、トトよ。
トトを置いてきた後は、サウスにもどり、冒険者ギルドにミミを連れていく。
ミミも殆ど、見た目は成人だ。獣人だとはあえて話していない。
此方のギルドに僕が後見人として登録しておく。
暫く、ケビンと、ミミでパーティーを組んで貰った。ケビンは快く受けてくれた。まあ、未だ子供なので基本遊びのような討伐になる。
ケビンは子供が好きみたいで何くれと面倒をみてくれている。
僕が一緒に組んだ方が良いのは分かっているが僕にはやることがある。
その為にはソロでいなければ、だめなのだ。
☆
拠点をサウスに移したのは、各国が次々にダンジョンを潰しているのに、ここ中ツ国では、まだ、話し合いの段階で止っているせいだ。
貴族達、特にマケンロー公爵が、強固に反対している。強い影響力のある公爵はあちこちに手を回し、王も公爵の話になびきつつあるとか。
おかげで、ダンジョンについての意見書を書いた師匠は今、苦しい立場に置かれている。
僕は、万が一に備えて、此処に戻ることにしたのだ。
今日も僕は、ダンジョンに来ている。成長したダンジョンは、迷宮型になる。
ここの三つ在るダンジョンはすべて、迷宮型だ。少なくと50年以上は生きている。
イーストリアのダンジョンほどでは無いが、それでも、スタンピートは起きるのだ。ダンジョンは定期的に周りのマナを吸い取る為にスタンピートを起こす。多分ここも過去にはスタンピートが何度かあったはずだ。スタンピートを繰り返す度、規模が大きくなっていく。それはコアが大きくなる度、より多くのマナを欲しがるからだ。
公爵は過去のスタンピートを押さえた経験があるのだろう。だが、今度スタンピートが起きたら、押さえることは難しい。3つのダンジョンが連動してスタンピートが起きるかも知れない。
今僕は最下層にいる。目の前の禍々しい紫色のコアが脈動している。
多分もうすぐ、5年以内にこいつはスタンピートを起こすだろう。より大きくなる為にマナを求めて、魔物を作り出し、野に放つはずだ。
コア自体は自分で動けない。飢餓状態の魔物を、造りマナを集めさせる。
コアが作り出した魔物とコアは繋がっていて、魔物がマナを喰らうと、すべてコアに吸い取られる。水道管が繋がっているようにコアに流れ込むのだ。魔物は常に飢餓状態で、凶暴になる。常に獲物を求め、特に人間のマナを好む。人間のマナは効率の良いエネルギーだ。
僕がコアに近づくと、まるで涎を垂らしているような気配を感じる。ぼくのマナを欲して居る。
早く潰して仕舞いたい。コアが僕に魔物をけしかけてきた。僕はそいつらを、風の刃で一瞬に切り刻む。
そして転移する。少しはコアの力を削いだだろう。これでもう少し時間が取れる。
国の方針が決まらないと、手が出せない。いよいよとなったら、勝手に潰すしか無いが、それまで応急措置を続けていくいかない。
今まで、何度もコアを潰してきた。こんなに待たされるのは初めてだ。
僕は今『コアハンター』と呼ばれている。