野良魔導師と弟子達
「塔というのは魔法士にとって魅力的なのか?」
白熊オレオが僕に聞いてきた。そう言われれば、ケビンも、ヨウゼフも塔を自分の住まいに決めていた。
そうなのだろうか?どちらにしてもこの広い空間を独り占め出来るのは魅力的だ。魔法士に限らずこの開放感は贅沢だと思う。僕がそう言うと、
「そうか。実は、エンドア国から、魔導師が来ることになった。其れで残った塔を彼等の為の施設にしようと考えている。どう思う?」
其れは良いと思う。とても気に入ってくれると思う。と答えた。
だが、態々、あの北の国から此処に来る、魔導師とは、どういう経歴なのか。普通、魔導師は国の財産のようなものだ。それに殆どが貴族の出身だ。気になって聞いてみると、
「確かに元は貴族の奥方だったが。亭主が死んでから、貴族籍を返して自分で国を回って歩いているそうだ。市井から魔法士を見付けて教育している、変わった御仁だ。この度打診したら、快く受けてくれた。」
2ヶ月後に、なんと8人の魔法士を連れてくると言う。
女性が3人、男性が5人。そして本人を入れれば総勢9人になる。当分は学校の準備に取りかかって貰う、その後はケビンと同じ教師にする、とのことだった。
オレオは魔法士の有用性にやっと気づいたようだ。
☆
その魔導師は、56歳の女性だった。名をマリア・モノゼスと言った。
中ツ国とロミール海を挟んだ,向こう側に位置する、エンドアという国の出身だった。
エンドアは、北側が広大な砂漠に接している小さな国だ。産業は漁業と農業で魔物は余り湧かない国だ。
弟子がこんなにいるのに、魔道士の称号が無いのは弟子の殆どは、彼女の国では認められていないからだそうだ。エンドアでは貴族しか魔法士になれないという。
彼女はそれに憤りを感じ、野良の魔導師になったという。
「称号なんて無くても魔法士は魔法士よ。称号は国で勝手に決めた物でしかないわ。」
確かに。その国の仕事を請け負うなら、必要だが、野良であれば必要は余り感じない。
今連れてきている弟子達は皆、市井の魔法士だ。称号などアフロマでは気にしない。実を取る。
彼女マリアは、弟子の引率で来ている。暫く此方で、様子を見たら、また国に帰り、各地を巡り歩くのだ
とか。
弟子達の年齢は18歳から30歳まで様々だった。一人だけ鑑定眼を持っている魔法士がいた。
後は無属性に適性はなかったが、皆優秀だった。殆どが3つから4つの滴定有りの魔法士だった。
僕は男性の魔法士達に「此方は魔物が多い。魔物を倒せばマナが増えるから。倒して見たら。」
と言うと彼等は、怖がって、今のままで良い,教師になる為に来たと言っていた。
魔物の少ない国から来たから、慣れないのか。仕方が無い。もう少しマナが多い方が良いのに、残念だ。




