転生者との出会い
僕はあまりのことに、一瞬言葉を失った。
まさか、転生者だと言い当てられるとは。そんなスキルが有るのだろうか?思わず天眼を使って仕舞いそうになったが、断りを入れずに診るのは失礼なことだ。僕は、
「何故、そう思うのですか?」と聞いた。
「貴男、オットアイだわ。」
「貴女だって、そうじゃあないか。そんなことで、分かるわけ・・・・」
次が続かなかった。これでは、まるで認めたような言い方だ。
そこで、僕は口を噤んだ。
☆
ここは、ウエストリア国のダンジョンだ。
各地を回って4年になる。僕は22歳になっていた。当初思っていたより、順調にダンジョンコアを潰していけている。
初めはそれなりに時間が掛かっていたが、そのうちステータスが上がるにつれて、加速度的に攻略が進んだ。パーティーには入らずに、ソロで活動することにしてから、時間は掛からなくなった。
他人がいると、ぼくの能力を制限しなければならない。それに、僕一人なら、危なくなったら、転移で逃げられるのだ。
今も、転移でコアの元に一瞬で転移してきたのだ。
何時ものように、まずコアを潰す。その後周りに居た魔物を次々に討伐していく。このダンジョンは終わりだ。ゆっくりと消えていくだろう。
そう思っているとき、このパーティーに気がついた。年配の女性一人を含む8人のパーティーだった。
彼らは、ウエストリアの国王の命令でコアを潰しに来たが一歩及ばず、力尽きようとしていた。
紅一点の彼女は、ヒーラーとポーターを兼任していた。強力なスキルが二つ。
彼女は95歳という高齢で、騎士の孫とその息子と一緒にパーティーに参加していた。
すべて、国の騎士達だった。
目覚めた仲間達に次々と感謝された。そして、僕が、ソロで活動していると聞くと皆驚いていた。
そんな風にワイワイガヤガヤと酒を飲みながら、酒場で打ち解けて居る中、彼女は一言も発していなかった。
やがて、皆が酔い潰れて、ふらふらとテーブルに突っ伏してしまった。
彼女だけが起きていて、まっすぐ僕を見つめていた。僕は観念した。そして、
「そうです。僕は、以前の記憶を持っています。貴女もそうですか?」と聞いた。
「ええ。生れたときは双子でした。貴男もそうでしょう?貴男のその目。双子の片方が亡くなると、スキルと一緒に眼も受け継ぐのよ。知ってた?」
知らなかった。幼い時は自分の目など気にもしなかった。だから、大人になって、他人に言われ、ビックリしたものだった。
「私には双子の姉が居て、姉も転生者だったの。姉は自分の寿命を知っていたわ。そして、それは私にスキルを与える為だと言うことも。亡くなるとき姉は私に、哀しまないで、これは自分で選んだ結果だ。と言ったのよ。11歳の時だったわ。」
僕は衝撃をうけた。若しかしてチイもそうだったのか?チイは虚弱過ぎて僕に伝える事が出来なかったのか?今、チイからのメッセージを、受取ったような不思議な気がした。
「そう。私、もし他の転生者に会えたら、そして、何も知らずに苦しんでいたなら、教えてあげたい。とずっと思っていたの。それが私の姉への贖罪。今まで、苦しかった?」
僕は、素直にうなずいた。
この世界は非常すぎる。
なぜ、このような非常な仕組みなのか。二人とも生かせる道は無かったのか。
彼女に、「教えてくれて、ありがとう」といって、別れた。
酔い潰れた騎士達には彼女が取り繕ってくれるだろう。
僕は物陰に隠れ、次の目的地を天眼で診て、転移した。