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幼少期 6
携帯を持たされても自由に使うことはできなかった。
友達と普通にやりとりをしているだけで、
「どうせ男とばっかやり取りしてるんでしょ」
「うつつを抜かしてる」
と言いがかりをつけられ、何度も没収された。
母親が携帯をチェックするたび、誰と何を話したかを詰問され、プライバシーも尊厳もなかった。
母親が再婚した時、ユリは少しだけ「変わるかもしれない」と期待した。
継父は優しく、ユリにも分け隔てなく接してくれた。
だがそれが逆に災いとなった。
母親は「継父に色目を使ってる」と言いがかりをつけ、継父がユリに気を遣うことすら許さなくなった。
「アンタが色目を使うから悪いんだよ」
「この家の男はアンタのためのもんじゃないから」
ユリはどんどん自分の居場所がなくなっていくのを感じていた。
怒られなくても、無視されても、結局は「家族」と名乗る人々に囲まれている限り、ユリにとって家は地獄だった。