幼少期 5
門限を数分過ぎただけで母親は玄関にユリを全裸で正座させた。
「遅れた分だけそこで反省しろ」
と冷たく言い放ち、誰も玄関を通らないことを願うしかなかった。
妹と弟が喧嘩をすれば、
「お姉ちゃんなんだから」とユリだけが叱られた。
いつも、全ての罪を着せられた。
「お姉ちゃんなんだから」
その言葉は、ユリにとって呪詛のように響いていた。
ただ年上であるという理由だけで、妹や弟の不始末も感情も責任も、全て押し付けられた。
成長とともにユリの顔は父親に似てきた。それが母親には癪だったようで
「あんたの顔見ると本当にムカつく。あの男にそっくり」
と吐き捨てるように言われた。
母親の機嫌のいい日に買い物に誘われて一緒に行っても、途中で機嫌が悪くなると、服も、髪型も、ユリが少しでもおしゃれを楽しもうとすると、すぐに侮辱に変わった。
「そんなに男の気を引きたいなら、風俗で働け。そして家に金入れろ」
「服や髪なんか気にしたって、顔がブサイクなんだから意味ないだろ」
ユリは思春期に入る頃からニキビがひどく、祖母に「ブツブツライオン」とあだ名をつけられ、母や妹もそのあだ名で呼び、笑い者にされた。