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幼少期 2
そんな中両親は離婚した。
父親は家を出て行き、ユリたちは母方の祖母と同居を始めることになる。
しかしそこに新しい希望が生まれるわけではなかった。
祖母の家での生活はユリに更なる孤独と痛みをもたらした。
小学校に上がる頃、ユリの生活は更に過酷になっていった。
家庭は決して安全な場所ではなく、日常的に罰や暴力が存在していた。
ある日、母親の機嫌を損ねたユリは「出ていけ!」と家を追い出された。
泣きながら玄関先でうずくまるユリを見下ろしながら母親は車のエンジンをかけた。
最初はどこかに出かけるだけかと思ったが、車がユリの方に向かってきた瞬間、それは間違いだと気付いた。
急ブレーキの音とほんの十数cm先で止まった車のフロントがユリの体を硬直させた。
窓越しに母親の顔を見た時、その顔は笑っていたような気がした。
「どうせ泣くならもっと痛い目をみてみれば?」
という声が耳に残り、その日は一晩中眠れなかった。