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最初の記憶 2
「何やってんだ、役立たずが!」
父親の怒鳴り声が再び響く。
その声の重みは彼女を締め付けた。
動けないままユリは泣きながら震えていた。
隣では母親が叫んでいたが、何を言っているのかはっきりとは聞き取れなかった。
父親に対する怒りなのか、それとも自分への苛立ちなのか。
ヒステリックに言葉を投げつけるその姿はユリにとってさらに混乱を増すものだった。
父親と母親の間で交わされる言葉は、怒りと絶望の嵐のようだった。
誰も彼女を見ていない。
誰も彼女の名前を呼ばない。
ただ物音と叫び声、そして割れた破片が散らばる床。
それがその時の全てだった。
ユリは涙を拭うことも忘れたまま、ただその場に立ち尽くしていた。
腕にいつの間にか赤い筋がついていることに気付いたのは、その後しばらくしてからだった。