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4. 告白

侍女のシンシアに耳打ちされた言葉であんなこと聞くんじゃなかったと大きなため息を零した。

あの時は令嬢の彼女とセルアが無関係とは思えず、兄弟は居ないかと公爵に聞いたのだ。

一人娘だと言われ思い違いかと納得したのだが、その相手に好意を持ってることが二人に伝わってしまったらしい。

面倒なことになったが、今更否定したところで意味もないだろう。

公爵によって充てがわれた部屋のベッドにごろりと寝そべった。

自室より広々としたその部屋に少し居心地が悪いが、そのうち慣れるだろうと目を閉じれば、やってくる眠気に逆らうことなく眠りに落ちる。

どれくらい眠っていたのだろうか。

物音で目が覚め、立て掛けておいた剣を手に窓の外を見ると庭に人影が見えた。


「…?」


屋敷の者だろうが、念のため確認しておこうと窓から外に出る。

気配を消して着いていくと少し開けた場所が現れた。

庭にこんなところがあったのかと視線を彷徨わせていると人影が立ち止まる。


「…こんな夜中に何か御用ですか?」


気付かれていたかと植木から出れば相手もこちらを向いたようだ。

彼女の顔を見て驚いた。

長い髪を結び、スラックスを履いているのは俺が専属騎士として仕える令嬢で。

右手に持った何かをそっと背中に隠すのが見える。

気になったそれを取り上げれば見覚えのある剣に目を見開いた。


「これをどこで…。」


「お父様の…私物です。」


「そんなはずない…この傷はあの時俺がつけたものだ。貴方は一体…。」


「…。」


「セルア…なのか?」


「…いえ、私はセルシアです。セルアという方は存じません。」


視線を逸しながら言うその姿に余計に疑いが強くなっていく。

それは彼自身の願望が入っているからだろう。

セルアが女性ならと何度、夢に見たかわからない。

目の前に居る彼女がそうなら胸の奥に秘め続けた想いを伝えられる。


「今の言葉、俺の目を見てはっきり言えますか。」


「…っ。」


「それが答えだと思っていいんだよな?」


「…騙して、ごめん…。」


「…。」


「専属騎士の件、お父様には私から白紙にするよう…。」


「何言ってるんだ?はぁ…良かった。」


「え、良かった…?」


「セルア、いやセルシア。俺はずっと前からお前が好きだった。」


「え、え、ええええええ!?」


真夜中だというのに屋敷中に響き渡る声に、思わず彼女の口を塞げば鳩尾に一発食らわされた。

本来なら文句の一つも言うところだが、セルアのときには感じられなかった胸の膨らみを触ってしまった手前、自業自得だと甘んじて受ける。


「私の性別に気付いてたってこと?」


「気付いてない。同性でも好きだと思った。だから一生伝えないまま親友でいるつもりだった。」


「いつから…?」


「…手合わせした日。」


「じゃあずっと女性を断り続けてたのって…そういうこと…?」


「そうだ。…セルシアはどう思ってる。」


「わ、私は…。」


「友人としてしか見ていないだろ。理解してるさ。」


「ごめん。」


「なんで謝るんだ?俺は今すごく嬉しい。」


「え?」


「いつか婚約者が出来た時、友人として祝福できる気がしなかったからな。遠征のときもずっとそれが頭から離れなかった。例え今の俺に特別な感情がなくても、その先を望むことが出来ないままでいるより良い。」


その言葉とともにフッと口元が緩むのを感じた。

友人として見られているのは承知の上。

これから先、異性として意識して貰えれば何の問題もないのだから。

そんな事を考えながら困ったような表情の彼女を眺めるのだった。


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