第97話 勇者との決戦前夜
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「父上……!?」
カストルの『北の繁華街の方に魔族がいるかもしれない』という情報を元にやってきた僕は、信じられないものを見た。
なんと、父上が街を歩いているではないか!
魔族に捕らえられているはずの父上が、なぜこんなところにいるのかは分からない。だが間違いない、あれは父上だ。
僕は父上の方へ駆け寄るのだが――。
”シュバッ”
父上は、すごい勢いで走り去ってしまった。
「待ってください、父上!」
僕は父上を追いかけようとする。そのとき。
”ポロッ”
父上のズボンのポケットから、何か紙のようなものが落ちた。
「父上、何か落としましたよ!」
僕は紙を拾う。そしてそこに書かれているものを見て愕然とした。
「これは、魔族の拠点の地図……!?」
魔族の潜む地下拠点の詳細な地形と、魔族が巡回するタイミングなどがとても細かに記されている。そして、この街の領主である本物のルスカン伯爵が幽閉されている場所も。
「この地図があれば、ルスカン伯爵を助けに行けるぞ!」
そして魔族の拠点の入口はすぐに見つかった。父上が入って行った狭い路地を調べると、小さな扉が地下に通じていたのだ。
「さっそく街のレジスタンスさんと村の仲間に知らせて、突入しよう」
こうしていよいよ魔族の拠点襲撃計画がスタートしたのだった。
「――というわけで、魔族の拠点を発見しました」
夜。
僕は以前堀った地下通路をとおって街の外に出て、街のはずれにある森に来ていた。
森には、村の仲間が勢ぞろいしている。
戦闘慣れしている、タイムロットさんが率いる街の冒険者の皆さん。
隠密行動が得意なカエデが率いるシノビの一族。
シノビに技術を教わったキャト族さんたちは人間への変装ができない代わりに、シノビよりも俊敏に動けて小柄なので狭い所に隠れることもできる。
そして王女であるマリエル。
レインボードラゴンのナスターシャ。
魔法の達人、大賢者エンピナ様。
スピードだけなら誰にも負けない剣士のジャッホちゃん。
村の仲間ではないが、300年前に魔王を倒したこともある英雄カノンもいる。
しかも、多くのメンバーはドワーフさん達が鍛えてくれた武器を持っている。とてつもない戦力だ。これだけの戦力が
集まれば、小国が相手なら戦争だって出来るだろう。
「魔族の拠点には、この街の領主である本物のルスカン伯爵が捕らわれています。勇者も人類を裏切って魔族に付いています。魔族の拠点に潜入してルスカン伯爵を助け出し、魔族達と勇者を倒す。簡単なことではありません」
勇者の名が出ると、村の皆さんが緊張したのが分かった。
「ですが! これだけの戦力が集まっていれば勝てると僕は信じています! 勝って、魔族の企みを打ち砕きましょう!」
「「「うおおおおお!!」」」
僕が激励すると、タイムロットさんと冒険者たちが拳を力強く突き上げる。
「無論我らも主人殿の為に死力を尽くします。さぁ、御命令を」
カエデ率いるシノビ達が音もなく一切に跪いた。
「ワ、ワタシも出来る限りのご協力はしますぅ……。怖いですけど……」
ナスターシャが、震える声で小さく拳を上げる。
「ボクも村の一員として全力を出すよ。メルキス君に貰った力、実戦で試してみたいと思っていたしね」
ジャッホちゃんが優雅に髪をかきあげる。
「我も同じく、新しく試してみたい技がある」
エンピナ様が好戦的な笑顔を浮かべている。後ろでは、クリスタルが見たことのない不思議な色で光っていた。前々から思っていたが、研究家でありながらエンピナ様は割と戦闘に前のめりなところがある。
「300年前は負けたが、今度こそ勇者をぶちのめして、アタシの方がつええって事を証明してやる!」
カノンは胸の前で拳を打ち合わせている。
これだけのメンバーが揃えば、勇者にだって勝てる。僕は胸を張ってそう言える。
「では、行きましょう。夜明けと同時に作戦開始です。まず、魔族に気取られないように僕が掘ったトンネルで街の中に潜入してください。街には、勇者のレジスタンスの皆さんがいます。彼らに協力してもらいながら、街に散らばって待機。夜明けに再集合して一気に突入しましょう」
「「「了解!!」」」
こうして夜の闇の中、密かに作戦の準備が始まった。
村の仲間は、少しづつトンネルを潜っていく
「お待ちしていました。それでは、ご案内します」
トンネルを潜って、ユーティアさんの酒場の地下にあるレジスタンスの隠れ家に出た村の仲間は、レジスタンスのメンバーに連れられて、別の隠れ家へと移動する。
夜の闇に紛れて、少しづつ、決して怪しまれないように街へ潜入していくのだ。
一箇所に大人数が集まると魔族に怪しまれる可能性があるので、街のあちこちにあるレジスタンスの隠れ家や、レジスタンスメンバーの自宅にバラバラに匿ってもらう。
村の皆さんには、魔族の隠れ家への入り口の地図を渡してある。
夜明けとともに地図の場所へ集合して、一気に突入する。奇襲からの短期決戦だ。
僕はレジスタンスのアジトに待機して、村の仲間が街に潜入するのを最後まで見届けた。
「大丈夫、うまくいくはずだ」
しかしボクは、妙な胸騒ぎを感じていた。何だろう。魔族が何か罠を仕掛けているだとか、そんな不安ではない。計画の一部に綻びがあるような。そんな引っ掛かりだ。
「どうしたの、メルキス?」
マリエルが心配そうな顔で覗き込んでくる。
「いや、何でもない」
僕は首を振って不安を振りきる。
みんなに指示を出す僕が不安そうにしていては、士気に関わる。この違和感のことは頭に残しておきながらも、僕は堂々と構えることにした。
「それより、僕たちも宿に戻ろう。作戦開始まで、まだ時間がある。少し休んで、万全の状態で作戦に向かおう」
「そうだね。相手はあの“勇者”なんだもん。ベストコンディションにしないとね」
マリエルが手を出してくる。
「さぁ、帰ろう」
僕はマリエルと手を繋いで宿に帰り、しばらく眠った。
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