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第81話 湖で水遊び①

 15歳になり、遂にマリエルもギフトがもらえる。


 応接間に鑑定士さんを迎えて、いよいよギフトの鑑定が始まろうとしていた。


 ――王族にとって、ギフトは必ずしも有用なものでなくてもよい。


 僕のような騎士や冒険者さん達と違って、王族は前線に立って戦うこともない。まして、農業等をすることもない。そのためギフトに頼る場面が少ないのだ。


 それでもやはり、緊張してしまう。どうかマリエルには、良いギフトが与えられますように……。


「……鑑定結果、出ました。マリエル様のギフトは、【異次元倉庫】です」


 !?


 超希少な有名ギフトの1つだ!


 【異次元倉庫】はその名の通り、異次元に繋がるゲートを開けてそこに物を保管しておけるギフトだ。


 便利、どころではない。異次元に食料を保管しておけば、軍を率いた戦がドンと楽になる。


 非戦闘向けギフトでありながら、戦闘向けギフトよりも遥かに戦いにおいて有用なギフトだ。


 もちろん、貿易など平和的な用途でも使える、汎用性の高いギフトでもある。


「おおお! すごいよメルキス、なんでもこの穴に入ってく!」


 マリエルは早速異次元につながる穴を出して、部屋の中にあった大きいテーブルや椅子を出したりしまったりしていく。


「マリエル、【異次元倉庫】は使い手によってどれだけ物がしまえるか性能が大きく変わるらしい。どうだ? 物はもっと仕舞えそうか?」


「まだまだ余裕、全然苦しくないよ!」


「だったら、どれだけ物がしまえるかテストしないとな」


 僕とマリエルは、鑑定士さんに御礼を渡してから外に出て仕舞える物を探す。


「そうだメルキス! 私このギフトでやってみたいことがあるんだ!」


「なんだ?」


「私ね、湖の水全部抜いてみたい!」


 マリエルは、とびっきりの笑顔でそう言った。


――――――――


 というわけで。


「今から私のギフトの試運転も兼ねて、水遊び会を開催します!」


「「「うおおおおお!!」」」


 僕とマリエルは村の皆さんを湖の畔に呼び集めた。村のみなさんは、全員水着だ。


「私がガンガン湖の水を抜いていくから、魚をとったり水辺で遊んだりしていこう!」


 そう高らかに宣言するマリエルも、水着姿である。


 腰にパレオがついているので脚は少し隠れているが、胸元は大きく露わになっている。マリエルの豊満な胸がさらに強調されて、とても目のやり場に困る。


「あ、あんなところにお魚がいるのニャ!」


 1人のキャト族さんが、浅瀬を泳いでいる魚を発見する。


「美味しそうなのニャ!」

「捕まえに行くのニャ!」


 キャト族の皆さんが、浅瀬へと飛び込んでいく。


「あ、止めたほうがいいですよ! この湖には大型の水棲モンスターが……」


 と、僕が止めたのだがもう遅く。


“バッシャアアアアン!”


 ワニモンスターが飛び出してきて、キャト族さんに噛みつこうとする。


「風属性魔法“ウインドカッター”!」


 ワニモンスターの身体を、僕が放った風の刃が両断する。


「助かったのニャ……! 領主様、ありがとうございますニャ!」


 キャト族さん達が慌てて陸に戻ってくる。


「この湖にモンスターがいるなんて知りませんでしたニャ。ナスターシャさん、大丈夫ですかニャ……?」


「え? ナスターシャがどうかしたんですか?」


「ナスターシャさん、湖に最初に着いて『やったー! 一番乗りですぅ♪ 久々に羽を伸ばして思いっきり水浴びしてきます~』といって、ドラゴン形態になって湖の中に潜って行っちゃったのニャ」


「えっ」


「ナスターシャさん、大丈夫ですかニャ?」


「大丈夫じゃありませーーーん!!!」


 湖の水面が大きく膨らみ、ドラゴン形態のナスターシャが飛び出してくる。


 尻尾には、ワニモンスターが噛みついていた。


「メルキス様ぁ~、助けてくださーい!」


 ナスターシャが人間形態に変身して湖の畔に着地する。ワニモンスターはまだナスターシャのお尻に噛みついたままだ。


 ちなみに、人間形態のナスターシャも水着になっていた。着ているのは、清楚感のあるワンピースタイプなのだが……それでも普段よりも布面積が少なくなり、大きな胸とお尻が強調されてしまっている。


「メルキス様、コレ外してくださいいいいぃ!」


 ナスターシャがワニモンスターごとお尻を僕に突き出してくる。


「風属性魔法“ウインドカッター”」


 僕はワニモンスターを倒して、ナスターシャから外してやる。


「ありがとうございます、助かりましたぁ……」


 涙目のナスターシャがその場にへたり込む。念のためちらっと見て確認したが、ワニに噛まれていた箇所に傷跡はついていなかった。流石防御力に秀でるレインボードラゴンだ。


「それじゃ、早速水を抜いていくよ~!」


 マリエルが異次元へと繋がる穴を出して、湖に沈める。


“ゴポゴポゴポ……!!”


 直径10メートル程の穴に、湖の水がどんどん吸い込まれていく。ゆっくりと湖の水面が下がっていく


「これがマリエル殿のギフトですか。応用が利きそうで便利なギフトですね」


 水をドンドン吸い込む穴を眺めながらカエデが呟く。


 カエデは黒を基調とした上下一体型の水着を着ている。肌の露出量は普段とあまり変わらないが、体のラインがくっきり出ていてこれも目のやり場に困ってしまう。


「ふっふっふ。凄いでしょう。それにね、こんな事もできるよ」


 カエデの頭上で穴が開いて、勢いよく水が噴き出す。


 カエデはびしょ濡れになった。


「不覚……まさかマリエル殿にしてやられるとは」


 悔しそうに顔を拭うカエデ。そして、湖の浅瀬に足を踏み入れて、足元の水を掬う。


「忍法水遁の術!」


 カエデが両手を組み合わせると、そこから勢いよく水が飛び出す。


「わぷっ!」


 マリエルの顔に水弾が直撃する。


「やったね……?」


 そこから、マリエルとカエデの水の掛け合いバトルが始まった。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★

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