第79話 ローラ、図書館で憧れの大賢者に遭遇するが・・・
お待たせしました!
プライベートでの大きな用事が片付いたので更新ペース上げていきまーす!
連載の息抜きにチマチマ書き進めている短編がもうすぐ完成しそうなので、そちらもそのうちお披露目できるかと思いまーす!
メルキスは、焼き鳥で腹をいっぱいにしたクレモンとローラを連れて村を案内する。
その時、村中に”ズシン”という重い音が響く。
重々しい足音とともに、通りの家の影からドラゴン形態のナスターシャが現れた。
「「!!」」
クレモンが腰の剣に手をかけ、ローラは魔法の詠唱を開始して戦闘態勢に入る。
一方のナスターシャは――
「きゃああああぁ! 村に知らない人間さんがいますううぅ! しかも剣持ってます! 怖いですううぅ!!」
悲鳴を上げて、家の影へ隠れてしまった。
「「――え?」」
クレモンとローラが目を丸くする。
「紹介します。あのレインボードラゴンはナスターシャと言って。村の住人の1人です。臆病な性格で、人に危害を加えたりしないので安心してください」
ナスターシャは、家の影に隠れて震えている。
「ナスターシャ、こちらの2人はお客さんだ。怖がらなくても大丈夫だ」
「ほ、本当ですか……?」
ナスターシャが恐る恐る家の影から顔を出す。
「いや、怖がるべきは本当はこっちやねんけどな……?」
クレモンとローラは呆れていた。
次にメルキスが2人を案内したのは、図書館だった。
「図書館って……王都くらいにしか無いのですが。まぁこの村ならあってもおかしくないですね」
「この村やからね」
ローラとクレモンは、感覚がマヒしてもはや驚かなくなってきていた。
3人は図書館に足を踏み入れる。
読書の邪魔をしないように、図書館の床には厚い絨毯が敷き詰められている。日光で本を傷めないように、図書館に窓はない。代わりに、宙には魔法で発光するランプが静かに漂っていた。
「だ、大丈夫です。この程度で驚いたりしません」
ローラの足元がぐらつく。が、踏みとどまる。
「今日はもうたくさん驚かされたんです。もうこれくらい、なんてことは――」
「あ、こちらは蔵書の検索システムです。欲しい本を打ち込むと、魔法が発動して妖精が本の場所まで案内してくれるんですよ」
「なんですかその超テクノロジーは!?」
ローラがひっくり返る。
「んな魔法システム、みたことも聞いたこともありませんと」
「ああそのシステムか。それは我が作った」
「エエエエ、エンピナ様!?」
いつの間にか大賢者エンピナが立っていた
”ズッシャアアアアァ!”
ローラがまるでザリガニのように後ろに凄い勢いで跳ぶ。その距離なんと5メートル。
「王国騎士団 団長補佐官のローラと申します! エンピナ様には大変お世話になっております!」
ローラは勢いよく深々と頭を下げる。
「? 世話などした覚えはないが」
「いえ。5年前。王宮図書館で深夜に魔法理論を勉強していた時のこと。たまたまふらりと王宮に訪れていたエンピナ様に、魔法理論について教えていただきました。あの時に頂いた『若くしてこの理論が分かるとは大したものだ。期待しているぞ』という言葉に、非常に励まされました。エンピナ様にとっては大したことではなかったかもしれませんが。あの時に励ましていただいたおかげで今の私があります。あの五分ほどの時間は、私の宝でございます」
ローラは、一切お辞儀の姿勢を崩さない。
「もちろん、5年も前の話ですし短い時間でしたから覚えてらっしゃらないとは思いますが――」
「ああ、あの時の若者か」
大賢者エンピナが、ぽつりとこぼす。
「私のことを、覚えていてくださった……!?」
「おぼろげだがな」
何の気もなくエンピナがそう告げる。
「――! ありがとうございます、ありがとうございます! 大賢者エンピナ様の記憶の片隅にでも置いていただけたなら、これ以上ない幸せです!」
ローラの目から、熱い涙が流れ出す。
「よかったなぁ、ローラちゃん」
泣きじゃくるローラにクレモンが優しく声をかける。
「ところで我が弟子よ、なんで今日は我が魔法理論を学びに来ぬのだ。折角汝のために図書館に専用の勉強部屋まで作ったというのにー」
「さっき説明したじゃないですかエンピナ様。今日は王宮から、お客様が視察に来ているので村を案内しなくてはいけないと」
大賢者エンピナが、唇をとがらせてメルキスの服のすそを引っ張る。
「え、え、え? 大賢者エンピナ様が、弟子を取った……????」
突然のことにローラが目を白黒させる。
「エンピナ様、お客様が帰ったら必ず勉強しに行きますから。待っていてください」
「な~ら~ぬ~。今勉強しにくるのだ」
大賢者エンピナがメルキスの服のすそを後ろから引っ張るが、メルキスは気にせず歩き続けている。
「大賢者エンピナ様に弟子がいて? エンピナ様の方から『魔法理論を教わってくれ』と頼み込んでいて? 子供のように駄々をこねていて? 私達の相手が優先なので後回しにされている????」
情報量がキャパシティを超えて。
「きゅう」
ローラは気絶した。
「あっちゃー。ローラちゃんのびてしもうた。もう今日は十分見せてもろたし、僕もおいとましますわ。……このまんまやと僕も驚きすぎて気絶してまうかも知らんし」
そう言って、クレモンはローラを担いで帰っていったのであった。
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数日後。
再び王宮の謁見の間で、クレモンが国王にむかってひざまづいている。今回は、補佐官のローラも連れている。
「偵察任務、ご苦労であった。で、どうだったかの。あの村は? メルキス君は信用できそうかの?」
「ええ、ご安心ください陛下。メルキス君もあの村も、完全にシロですわ。村人もメルキス君も、びっくりするくらい平和的で。ほのぼのしてて。なぁんも陛下に対して企ててる様子はありませんでしたわ」
「ほう! それは何よりじゃ」
それから、クレモンとローラは村でのあんな出来事やこんな出来事を報告し、そのたびに国王は手をたたいて喜び、聞き入っていた。
「ほっほっほ。面白い村じゃのう。いつかワシも時間を作って、遊びに行きたいのぅ」









