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第77話 王国騎士団団長、シノビの凄さに圧倒される

 メルキスは、正体を隠して村を訪れた王国騎士団団長クレモンとその補佐官ローラを引き連れて、村を案内する。


 周りに他の村人がいないのを確認して、メルキスは声を落として話を始める。


「ええと、正体を隠していますがお2人は王国騎士団団長と補佐官さんですよね?」


「「――!!」」


 クレモンとローラが硬直する。


「うちの村の斥候は優秀で、森の中で怪しい馬車を発見したので詳しく調べて報告してくれました。失礼ながら、お2人の馬車の中でのやり取りについても聞かせてもらいました。食べていたサンドイッチの具まで調べて報告してくれましたよ。クレモン騎士団長がハム、ローラ補佐官が卵ですね?」


「あり得ません!」


 ローラが叫ぶ。


「私は単なる秘書ではありません! これでも気配探知の訓練を受けて来ましたし、成績は騎士団の中でトップです! サンドイッチの具まで分かるくらい近づかれて気付かない訳がありません」


「では、今ローラさんの後ろに何人いますか?」


「今ですか!? そんなもの、いるわけ――」


「「「ニャ」」」


 クレモンとローラの後ろには、3人のキャト族が得意げに立っていた。シノビ達と同じく、黒ずくめの衣装を着ている。


「嘘……」


「我が村が誇る、キャト族のシノビ軍団です。キャト族の特性とシノビという職業がとてもマッチして、音を立てずどこにでも忍び込めますよ」


「そんな、この距離まで近づかれて気付かなかったなんて……」


 自信をなくしたローラが膝から崩れ落ちる。


「もちろん、人間のシノビにも彼らにしかできないことがあります。皆さん、”アレ”を見せてあげてください」


 メルキスが手を叩く。


 すると、近くの物陰から人影が出てくる。現れたのは――


「――え、私!?」


 姿かたちはローラと全く同じ。身長まで全く同じだ。


「クレモン団長! 私が本物のローラです!」


「何を言い出すんですかあなたは! 私が本物です! 騙されないでください!」


「え? え、ええ!?」


 2人のローラに同時に詰め寄られて、クレモンは混乱している。


「ちょっと待って、本気でどっちが分からんくなってもうた」


「「何言ってるんですかこのへっぽこ団長!!」」


 ツッコミのタイミングまで全く同じである。


「「「「団長、私が本物です!」」」」


 更に通りの角から、10人以上のローラが押し寄せてくる。


「うっそやろ……!?」


 10人以上のローラに囲まれて、クレモンは完全にパニックになっていた。


「では次、お願いします」


 メルキスがまたパン、と手を叩く。


 次の瞬間。大量のローラが大量のクレモンに変わっていた。


「え、団長が沢山……!?」


 今度はローラが混乱する番だった。


「「「「ローラちゃん、本物は僕やで? ローラちゃんなら分かるやんな!?」」」」


 全く同じ仕草でクレモン達がローラに訴える。


「……すみません団長。まっっったく分かりません!」


「「「「そんな~」」」」


 全く同じ動作で落ち込んだ後、クレモン達が一斉にシノビ本来の姿に戻る。


「みなさん、ありがとうございました」


 メルキスが手を振ると、一礼してシノビ達が一斉に退散していく。


「……凄いもん見たなぁ」


「ええ、凄かったですね……」


 衝撃が抜けきらないクレモンとローラはぼーっと空を見ていた。


「ふふふ。すみません、刺激が強すぎましたかね? でも、うちの村の手札をしっかりお見せしておきたいのです。それが王都からお越しいただいたお2人への誠意だと思いますので」


「凄すぎやで……これだけの諜報部隊抱えとったら、敵のかく乱なんておちゃのこさいさいやね。これだけの逸材を抱えてるんを隠さずに見せてくれるんは、視察としてはホンマにありがたいわ。……びっくりしたけど」


「シノビの皆さんには伝えていますけど、他の村人達にはお2人の正体は伝えていません。そのほうが、村の普段の様子を見てもらえると思うので」


「お気遣い痛み入ります」


 ローラが深々と頭を下げる。


「では、村の施設を案内していきますね」


 メルキスは先に立ってクレモンとローラを案内していく。


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― 新着の感想 ―
[良い点] シノビの皆さんを公開→疑り深い人だったら「何時でもオメぇの素っ首叩き斬ってやれるぜ?」と言われてると思うでしょうね。ある程度気配察知に心得のある人間すら気付かない隠行とか怖すぎィ!?
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