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第68話 モンスターに襲われているドワーフを助ける②


 ――ドワーフの村は、廃墟同然になっていた。


 家は燃え、レンガでできた工房は無残に破壊されている。


 一部のドワーフ達は脱出できたが、半分以上のドワーフ達は逃げ遅れていた。


 村の中央にある広場に、多くのモンスターが集まっている。


 十数頭のドレッドコブラがとぐろを巻いて広場を囲んでいるのだ。そして、とぐろの中にそれぞれ10人ほどのドワーフ達が閉じ込められていた。


「ぐぅ、痛いデス…!」

「身体が潰れそうデス!」


 ドレッドコブラが気まぐれに締め付けを強めるたびに、ドワーフ達が悲鳴を上げる。 


 そして、広場の中央では1人のドワーフとドレッドコブラが向かい合っていた。


「仲間達を、放すデス!」


 ドワーフが鍛冶用のハンマーを振り上げて、ドレッドコブラに突撃していく。


 しかし、ドワーフは戦闘が不得意な種族。ドワーフの攻撃は簡単にかわされてしまう。


 そして、ドレッドコブラは尻尾でドワーフを弾き飛ばす。


「ゲホッゲホッ!」


 ドワーフが、血の混じった咳をする。目には涙がにじんでいた。ドワーフは呼吸を整えてハンマーを構えなおす。


「おいおいいいのかよ? そんなにのんびりしてて」


 ドワーフに向かって嘲笑うような声をかけたのは、魔族だ。


「約束したよな? 村長のお前とドレッドコブラで一対一の決闘をして、村長のお前が勝てば村人全員を開放してやる。制限時間は10分。時間が過ぎたら、お前も仲間も全員殺すって」


 魔族が、両手の指を立てる。


「残り時間あと10秒だ。ほら、急がなくていいのか?」


 魔族が10本の指を立てる。


「さっさとあがいて見せろ。10,9――」


「うわああああぁ!!」


 ドワーフが死に物狂いでハンマーをもって突撃する。しかし、またドレッドコブラがそれを軽々とかわし、”シュルルル”とあざ笑う。


「3,2,1―」


「みんな、ごめんデス。ワタシが弱いせいで……」


 広場のドレッドコブラが一斉にドワーフを絞め殺すべく力をこめようとした――その時だった。


”ゴウッ!!”


 空から、力強い羽ばたく音が聞こえた。


 その場の全員が空を見上げる。そこには、七色の光の帯が流れていた。


 レインボードラゴンが空を駆け抜けた軌跡だった。


「あれは、虹……?」


 ドワーフは、何が起きたのかただ茫然と空を見上げていた。そして、空から何かが降ってくるのを見つける。


「人間さんが、空から降りてくるデス……!?」


 何故空から人間が降ってくるのか。あの虹は何なのか。ドワーフは、事態を理解できずに混乱していた。


「氷属性魔法”アイスニードル”、14連発動!」


 ドワーフは確かに、そんな声を聞いた。


 次の瞬間。蒼白の氷が空から降り注ぎ、広場を囲んでいたドレッドコブラ”全て”の頭を正確に貫いた。


 力が抜けたドレッドコブラの身体からドワーフ達が逃げ出す。


 そして、ドワーフの村長の隣に人間が着地する。


「ドワーフさん。もう大丈夫です。離れていてください」


「は、はいデス……」


 いまだに混乱しながら、ドワーフの村長は仲間とともに広場の端の方へ逃げていく。


「おい、誰だお前? 俺の手下を全滅させてくれやがってよぉ」


 魔族に対して、空から降りてきた人間は剣を抜きながら名乗る。


「メルキス・ロードベルグ。ある村の領主を務めている者だ」


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