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第64話 村の図書館がとんでもない進化を遂げる

「我が弟子、1冊目の本が完成したぞ!」


 いつものように剣術の修行をしているところへ、ウキウキした様子の大賢者エンピナ様がやってきた。


「速過ぎではないですか!?」


「頭の中で完成している理論をただ紙に書き写すだけだからな。この程度すぐ出来て当然だ。さぁ我が弟子よ、読むがいい」


 僕はさっそく本の中身を確認する。


「……流石エンピナ様、凄い内容です」


「であろう?」


 エンピナ様は得意げに胸を張る。


 内容は魔法の基礎理論なのだが、世間よりも10年以上研究が進んでいる。読めば魔法への理解が深まり、威力が上がる。


「勿論、これだけではない。基礎理論だけで数千冊。各系統の専門書を書けばその十倍の本になるであろう」


「魔法って奥深いですね……そしてこの本ですが、村のみんなで読めるように、図書館に置きましょう」


「そうするが良い」


 その時、僕は閃いた。


「そうだエンピナ様、村の図書館の館長を務めては頂けませんか?」


「館長だと?」


「はい。本を管理したり、本を探しにきた人に合う本を紹介したり。エンピナ様の書いた本について一番詳しいのは当然エンピナ様です。この仕事は、エンピナ様にしか務まりません」


「……よかろう。どのみち、村に住むからには何らかの仕事はするつもりであった。面倒だが引き受けよう。ただし、建物は改築してもらうぞ?」


 こうして村の図書館大改築が始まった。


――2週間後。


 村の図書館は、見違えるほど立派になった。


 元の図書館は、民家にしては大きい程度のこじんまりした図書館だったのだが、移転して建屋が大きくなった。領主邸宅が丸ごと2つはすっぽり入る大きさだ。


 この土地を確保するために、僕は村の周囲の防壁を移動させて、村の面積を増やした。


 中に入ると、床には足音が立たないように絨毯が敷き詰められている。読書する人の集中を乱さないための工夫だ。


 日光は本を傷めるため、窓はない。代わりに、魔法で発光するランタンがあちらこちらに浮かんでおり、常に昼間と同じ明るさになっている。


 螺旋階段を登った先の2階スペースには読書用の机と椅子が設けられていた。隅の机では、羽ペンが独りでに凄い速度で動いて本を書いている。聞くと、エンピナ様が風属性魔法で操作して魔法の本を書いているらしい。


 エンピナ様が最初に本を書いてきたとき、凄い執筆速度だと思ったが、これが速さのヒミツのようだ。


 館長室の隣には、館長権限によって講義専用部屋が作られていた。明日からは、僕は毎日ここへ通ってエンピナ様から講義を受けることになるのだろう。


 そしてこの図書館が普通の図書館と違うのは、魔法を試し打ちするための防音スペースがあることだ。


 村の冒険者さん達がさっそく、本を読んで学んだことを実践で試している。


「基礎理論をちょっと勉強しただけで、ドンドン魔法の威力が上がる……。まさかまだ俺にこんな伸びしろがあったとはな……」

「俺なんて上級魔法を覚えたぞ!」

「俺は2系統目の魔法が使えるようになったぜェ」


 皆さん【刻印魔法】によって高威力の魔法を扱えるようになっているので、その分理論の理解が速く、すごいスピードで魔法の威力が上がっていく。


「そして、ここが我が最も苦労したポイントだ」


 エンピナ様が指し示した先には、机の上に乗った。ミニチュアサイズの本棚があった。中はミニサイズの本でぎっしりと埋まっている。


 本の前には羊皮紙とペンがある。


「試しに、どんな本が探したいか書いてみよ」


 エンピナ様に勧められた通り、僕はペンを手に取って”火属性魔法 専門書”と書いてみる。


 すると、ミニチュアの本棚から何冊かの本が飛び出してきた。表紙をみると、どれも火属性魔法に関する本だった。


 中を開くと、小さな文字で本の説明が書いてある。


「では、この本を借りたいです」


 僕は1冊の本を選んだ。すると、机の上に勝手に魔法陣が出現する。魔法陣から、青白い色をした小さな人形の光の塊が飛び出した。背中には羽が生えている。


「氷属性魔法”サモン・アイスフェアリー”。小さな疑似生命体である妖精を呼び出すことができる。攻撃魔法としての威力は弱いが、様々なことに使える便利な魔法だ。さぁ、フェアリーについていくが良い」


 宙を飛ぶ氷の妖精についていくと、さっき探そうとした炎魔法に関する専門書にたどり着くことができた。


「上位魔法と、下位魔法を改造して複数連結させることで作り出した図書検索システムだ。この検索システムを用意しておけば、『あの本はどこですか』と聞かれる我の負担が大分減るからな。……が、このシステムを構築するのにさすがに疲れた」


 エンピナ様が、僕にぐったりともたれかかってきた。


「我はもう動けぬ。我が弟子、家まで我を運んでくれ~」


「もう、今回だけですよ」


 この図書館によって、村の魔法の水準は大きく上がった。恐らく他の地上のどこよりも、魔法の研究が進んでいるだろう。


 近いうち、魔族とまた戦う日が来るはずだ。その時にきっと村のみんながどれほど強くなったか見ることができるだろう。



〇〇〇〇〇〇〇〇村の設備一覧〇〇〇〇〇〇〇〇


①村を囲う防壁


②全シーズン野菜が育つ広大な畑


③レインボードラゴンのレンガ焼き釜&1日1枚の鱗生産(百万ゴールド)


④大魔法図書館[Upgrade!!]


⑤広場と公園


⑥華やかな植え込み


⑦極東風公園


⑧極東料理用の畑


⑨極東料理用の畑


⑩温泉

〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇



【根源魔法】

・見た魔法を完全な状態で扱うことができる

・2つの魔法を融合させ、新しい魔法を生み出す


〇使用可能な魔法一覧


・下級火属性魔法”ファイアーボール”


・下級状態異常回復魔法”ローキュアー”


・下級身体能力強化魔法”フォースブースト”


・下級回復魔法”ローヒール”


・下級土属性魔法”ソイルウォール”


・中級植物魔法”グローアップ”


・特殊永続バフ魔法”刻印魔法”(ギフト)


・竜種火属性魔法”サファイアブルーフレア”


・下級氷属性魔法“アイスニードル”


・下級風属性魔法“ウインドカッター”


・下級地属性魔法“ロックエッジ”


・下級氷属性魔法”ブリザード”


・下級雷属性魔法“ライトニングスパーク”


・中級呪詛魔法”カースバインド”


・中級呪詛魔法”マナドレイン”


・中級呪詛魔法”ダークビジョン”


・上級氷属性魔法”サモン・アイスフェアリー”



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