第51話 300年の眠りから復活した魔王との戦いが幕を開ける
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カストルを取り込んだ魔法陣の中から、巨大な影が出現する。圧倒的な巨体が、僕を見下ろしていた。
魔族の特徴をさらに濃縮したような、漆黒の肌と頭部のねじ曲がった角。
『我が名は魔王パラナッシュ。300年にわたる永き眠りより復活した』
闘技場中に、低い声が轟く。
300年前、人間と魔族は大戦争を起こした。そして、魔族を率いていたのが、魔族の上位種である魔王である。10柱ほどいた魔王は、そのどれもが圧倒的な力を持ち、単騎で国を滅ぼしたという。
魔王は300年前の大戦で絶滅したはずだったのだが――
「魔王だって? 嘘だろ?」
「なんで魔王が蘇ってるんだよ!
「逃げろ! ここにいると殺されるぞ!」
観客席がパニックになる。
『観客の皆様。王国騎士団の案内にしたがい、落ち着いて避難してください』
訓練された騎士団員が、早速避難誘導を始めていた。
「魔王パラナッシュ。僕の弟をどうした」
『弟? ああ、我の復活の核になったあの人間か。それならば、ここにいるぞ』
魔王パラナッシュは、自分の胸を指さす。そこには、丁度人間1人が丸まった程度の大きさの球が輝いていた。
『我を復活させたあの者どもも、無能なことだ。こんな貧弱人間が核では、この魔王パラナッシュの力が弱まるというものよ』
そう言って魔王パラナッシュは嗤う。笑い声が地響きにも感じられるほどの迫力だ。
僕は、今にでも飛び掛かって魔王パラナッシュの頭を叩ききりたい気持ちだったが、こらえる。
「僕の弟はまだ生きているのか? お前を倒せば、弟は助かるのか?」
『なんだ? このゴミのような人間を気遣っているのか? 我が死ねば、核となった人間を助けることはできるだろう。ただし、我は10の命を持つ魔王。倒したければ10度、我の息の根を止めねばならぬ』
魔王パラナッシュの胸に、輝く石のようなものが出現する。その数は10。
「”アイスニードル”5重発動!」
「ヨーデリン流剣術7式、“閃光剣”!」
エンピナ様の魔法とジャッホちゃんの剣技が、魔王パラナッシュを襲う。
氷の杭が魔王パラナッシュの巨腕を貫き、斬撃が足を抉る。
『その程度か、人間共』
しかし魔王パラナッシュの肉体は、すぐに再生していく。
「これは分が悪いか」
「2人とも、下がっていてください。避難誘導の手伝いをお願いします。それに、巻き込んでしまいそうです」
うなづいて、2人は観客席の方へ去っていく。
「貴様1人で我と戦うというのか? 笑止。人間1人で、何ができる!」
馬鹿にしたような声と共に、魔王パラナッシュが僕に拳を振り下ろす。だが、その動きが途中で止まる。
魔王パラナッシュの首に銀の光が走る。光に沿って、首が落ちていく
『我が、首を落とされ……? 馬鹿な、何も見えなかったぞ……!?』
信じられないといった表情の首が、地面に落ちる。魔王パラナッシュの胸の10の輝きが1つ消えた。
僕は、魔王パラナッシュの首にロードベルグ流剣術11式“流星斬“を放っていた。魔王パラナッシュの目では、どうやら捕らえられなかったらしいが。
「これで一回。……さっきから僕の弟を”貧弱””ゴミ”と侮辱してくれたな。お前だけは絶対に許さない」
僕は剣を構えなおす。
「あと9回。殺してやるぞ魔王パラナッシュ」
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