ゆかりと雫とアフガン航空相撲
ここは剣と魔法の世界、埼玉県川越市……の結月ゆかりのご邸宅。
家の主人であるゆかりが優雅にアフタヌーンティーを啜っていると、そこに彼女によく似た容貌の、しかしナンボか若い少女がとてとてとやってきた。
「大きい方の私、ちょっといい?」
「あんまりよくないですね小さい方の私」
彼女たち二人はどちらも結月ゆかりだった。勿論、結月ゆかりという人間は一人しかいない。しかし悪の秘密結社ボイロマケッツは結月ゆかりの遺伝情報を用いて、クローン体を生み出すことを画策。結果生まれたのが本来のゆかりよりも年若い結月ゆかり――通称【雫】である(もっともゆかりは雫と呼ばず小娘とか小さい私などと呼んでいる)。
「私は今優雅にお茶をしてるんですよ。小娘にかまってる暇はないのです」
「これなんだけどさ」
「聞けや」
ゆかりは嫌そうな顔をするも雫は構わず、
「アフガン航空相撲ってなんなの?」
「また急に懐かしいことを聞いてきますね、この小娘は」
ゆかりはため息を吐いて、犬でも追い払うようにシッシとするも、雫は平然とした調子で、
「教えてくれるまで動かない」と椅子にぽすっと座った。
「……仕方ありませんね」
紅茶を一口すすり、ゆかりはため息交じりに言う。
「アフガン航空相撲とは、我々がかつて作った玩具です」
「うんうん……うん?」
頷いてから雫は、ゆかりの吐いた言葉を飲み込んでから首を傾げた。
「相撲取りを飛ばしたら面白いだろうなぁって、ボイロマケッツと遺伝子操作でフライング・ヒューマノイドとかけ合わせたんですね。それで生み出した航空相撲取りをアフガニスタンの局地戦に投入した。だからアフガン航空相撲なんですね」
「いつも思うけどあなた達の倫理観はおかしい」
「そう褒められると」
「頭もおかしいし……」
雫は眉間に指を当てた。本当にこれは自分と同一存在なのだろうか。
「まあそれはそれとして、我々の玩具として生み出したアフガン航空相撲ですが結構好評でしてねぇ」
「そんな話聞きたくない」
「それがですね。意外にも人気が出て、今でも根強いファンがいるんですよこれが」
「意味わかんない」
「かくいう私もその愛好家の一人です」
ゆかりがリモコンを操作すると部屋の壁が開いて、そこには培養液に使った相撲取りがずらずらと並んでいる。
「ほらこれが戦闘機を三機も撃墜したバーミヤン錦、その横が爆撃機をうっちゃりしたシャクティ山、他にも小兵ながら大金星をあげた……」
「狂ってるの?」
「まあゆかりさんはマッドサイエンティストですので」
青ざめた顔で問いかける雫、対するゆかりは狂ったように哄笑を始めた。
もうこんな家は嫌だと後悔しても、既に雫はボイロマケッツの子なのだ。
こうして雫の川越生活は続いていくのだった。
※ボイロマケッツは2500年の川越を支配する架空の組織です。
AIによる著述支援(という名のリレー方式)を試したくて書きました。
AIを上手く使うのはむつかしいですね。