Ep.4第二の戦士あらわる
――あの事件よりさらに数日後
――交通量の多いの交差点
足を怪我したお兄さん「……」足にギプスをし松葉杖をつくお兄さんは、横断歩道を渡るのに
なかなか踏ん切りがつかなかった。
金髪少女「ちょいと、失礼するデスヨー」通りすががりの金髪少女が足を怪我したお兄さんを御姫様抱っこしそのまま道路を横断する。
足を怪我したお兄さん「え……(ええー……きゅん)」いきなり現れた金髪女子にいきなりそんなイケメン対応(ちょっと間違っているけど)をされ、すこし赤面するお兄さん。
足を怪我したお兄さん「あの……ありがとうございました!」そして、照れながらも、全力のお礼を言う。
金髪少女「お礼を言われるほどのことではないデース。ソレデワこの先もお気を付けて」そういうとさっそうとさっていく。
足を怪我したお兄さん「(惚れたかもしれない……)」
――きつめの坂道
荷物の多いおばさん「あぁっ!」急に袋が破れ、いくつかの果物が転がっていく。
金髪少女「私にお任せくだサーイ」通りすがりの金髪少女が、素早く軽い身のこなしで転がる果物を拾い集める。
荷物の多いおばさん「あら、ありがとうね。助かったわ」
金髪少女「困ったときはお互い様デース。一つ持ちマスネー」そういうと女性の荷物を一つ受け取る金髪少女。
――
荷物の多いおばさん「ここまでで大丈夫よ。本当にありがとうね。これお礼にお一つどうぞ」そういって、リンゴを一つ差し出すおばさん。
金髪少女「OH!かたじけないデース。ありがたく頂くデース」そういってありがたそうにりんごを受け取る金髪少女。
金髪少女「ソレデハ」
荷物の多いおばさん「ええ(いい子ねー)」
――有名な空手道場
道場破り「ここの看板はもらっていくぞ」
師範「くっ。先代より受け継いだ道場を守れなかった……」
金髪少女「おっと、看板を持っていくのは、この私を倒してからにしてくだサーイ」
道場破り「なんだお前?」
金髪少女「今日から体験入門させてもらうものデース」
道場破り「ふっ、ド初心者か。あまり舐めないでもらいたい」
師範「気持ちはうれしいが初心者に怪我をさせるわけにはいかない……看板くらいならどうとでもなる……無理をしてはいけない」
金髪少女「そんな悔しそうな顔見て、放っておけないデース。まあ私に任せてくだサーイ」
道場破り「この嬢ちゃんもこう言ってるんだ。その代わり俺が勝ったら今度こそ看板はもらっていくからな(怪我しない、泣かない程度にあしらってやるか)」
――
しばらく睨みあった二人だったが、先に動いた道場破りの正拳突きを華麗に避けつつその顎にクロスカウンターを叩き込む金髪少女。そして崩れ落ちる道場破り。
――
金髪少女「私の勝ちデスネー」
師範「今のは空手では……」
道場破り「いや俺の負けだ。確かにあいつは”空手で勝負する”とは一言も言っていなかったし、俺も確認を取らなかった。それ自体は暗黙の了解のはずだが、それよりも奴は俺の一撃を避け、奴の一撃は確かにこの俺を跪かせた。それは俺がまだまだ武闘家として未熟だった証拠であり、何より重要なこと。そしてあの隙の無さ(思わず本気を出してしまった)……お前がここに入門希望っていうのが嘘なのはわかる。でもまた勝負してくれないか?空手じゃなくていい。お前を俺の目標にさせてくれ」
金髪少女「OH,バレていマシタか。でもOK,いつでも勝負受けるデース。その代わり、看板は持って行かないで上げてくだサーイ」
道場破り「わかってるさ(まったく、こんなお人好しに負けるとはな)それじゃあな」軽く手を振り道場破りは去っていった。強さだけを求めるそんな男も時に爽やかな表情を見せる。
師範「助かったよ、ありがとう。本当にうちに入門してみないかい?そうしてくれるとうれしいのだが」
金髪少女「Sorry。私も忙しいのデスヨ。でもその気持ちはうれしいデース」
師範「そうか。それなら仕方ないね。でもありがとう。看板を守ってくれたこともだが、君たちの戦いを見て(彼に負けたこともそうだが)、私も教えるだけでなくもう一度自らを鍛えてみたくなった。そうしたら私の相手もしてくれるかい。もちろん空手でなくて大丈夫だ」
金髪少女「もちろんデース。楽しみにしてマース」そういうと手を振り、金髪少女は去っていった。
――そんな感じでこの後も人助けをする金髪少女の登校シーンの一部であった(あのおばさん朝早くから(しかも徒歩で!)買い物してたのか(大変だな)って思うかもだけど、そういうこともあるよね)
――真白のクラス。朝のHR
担任「今日から、このクラスに新しい仲間が入ってくる。アメリカからの留学生なんだが……まだ学校に来ていない(不良って感じではなかったんだがな……なにかあったのだろうか?)まあ、仲良くしてやってk――」
バーン。その時勢いよくドアが開く。
金髪少女「Sorry!ちょっと野暮用がありマシテ」そして金髪少女が教室に入ってくる。
担任「遅刻だぞ、あとドアは静かに開けること。手続きはしてきたか?ならいい。じゃあ、自己紹介してくれ」
金髪少女「ごめんなさいデス」
金髪少女「私はハンナ・グレートと申しマース。アメリカのオクラホマ州から来マシタ。不束者デスがどうぞよろしくお願いしますデース」クラスメイトのほうに向きなおり、元気に挨拶をするハンナ。
クラスメイト女子「日本語上手だねー」
クラスメイト男子「金髪美少女……だと」
クラスメイト男子「信念を曲げる時が来たようだな……俺、今日から青春する」などとざわつく教室。
担任「静かにしろー、まったく。グレート、席は窓側から二番目の一番後ろに用意しておいたから。隣の席は……あいつかよ(でも今日はサボってないんだな)、黒木なんかあったらよろしくな」
黒木真白「はーい」
ハンナ・グレート「よろしくお願いシマース」席に座りながら、隣の真白に挨拶する。
黒木真白「よろしくね」真白もそれに気さくに答える。
黒木真白「あと先生、サボりじゃないですよ。寝坊と体調不良です。でも一限目に間に合えば単位取れるんだからいいじゃないですか?」
担任「遅刻はな……というか心を読むな。あとわざとHRサボってるみたいなこと言うと反省文書かせるぞ。……吉田、お前も前の席だし、グレートのことよろしくな」けだるそうに相手をする担任。
吉田「はーい。よろしくね」
ハンナ・グレート「よろしくデース」
――
そんな感じで人助け金髪少女は、真白のクラスにやってきた留学生だった。
そして、彼女に目を付けた存在がここに一人。
ライトニングホワイト「遅刻をするような時間でも、人を助けることを厭わない彼女。たしかハンナさんといいましたか。そして何より、道場でのあの一件。優しくて強い、ぜひ私の代理人になってほしいです」
――放課後、ハンナの家の前
ハンナ「ふぅ、今日もいい一日デシタ。クラスのみんないい人たちでしたし、親切にした人みんな喜んでくれマシタ。――おっとあれは?」放課後、すぐに学校を出た彼女だったが、家に着いたのはそこそこ遅い時間だった。もちろん、家が遠いとかそういう理由ではない。そして家の前にたたずむ一風変わった身なりの女性に気づく。
ライトニングホワイト「こんばんわ」
ハンナ「コンバンワー。私の家に何か用事デスカ?」
ライトニングホワイト「今日一日あなたの行動を観察させてもらいました」
ハンナ「OH!ジャパニーズストーカー?だめデスヨー、お友達になりたいなら、面と向かって伝えてくだサーイ」
ライトニングホワイト「ゴーメンナサーイ。ソーイウつもりじゃなかったんです」一瞬テンパってカタコトが伝染する。
ハンナ「それなら安心デース。でもお友達になれないのは残念デスネー」
ライトニングホワイト「ごめんなさい。えっと、あなたが今日一日、何人もの人を手助けしていたのを見ました。そして道場での華麗な技も。ぜひ私のために力を貸してください!」
ハンナ「あなたも困っているデース?OK、私になんでも言ってくだサーイ」いきなりのことにも快活に返事をするハンナ。
ライトニングホワイト「ありがとございます。実はこれから悪い人によって多くの人が悪の心に飲み込まされ怪人にされてしまいます。このままでは多くの人が不幸な目にあってしまうんです。それに対抗できる力をあなたに与えるのでどうかそれを止めてください。人々を悪意から守ってください」
ハンナ「オーノー。それは大変デスネー。みんな幸せな世界がうれしいデース。だれかが傷つくのは悲しいデース。ぜひ私に協力させてくだサーイ」二つ返事でOKするハンナ。
ライトニングホワイト「こんなにも簡単に快諾してくれるなんて。……あ、冗談とかではないですよ?私は本気です」
ハンナ「Noproblem.目を見れば分かりマース。任せてくだサーイ」
ライトニングホワイト「ありがとうございます。では、この白熊さんジュエルを託します。その時が来たら、これが活性化して力が解放されます。その力を使って悪の怪人を止めてください」
ハンナ「OH!可愛い熊さんデース。頑張りマース」
ライトニングホワイト「それでは」
ハンナ「さよならデース」
――夕食時
ハンナ「今日は大好きハンバーグデース。グレイビーソースたっぷりかけマース――OH、ジュエルにソースついてしまいました……でもハンバーグの誘惑に勝てないデース。ホワイトさんソーリー、後できれいにしマース。とにかくいただきますデース」単身で日本にやってきた彼女の一人での食卓は一見寂しそうだが、大好きなハンバーグを前にした彼女の笑顔はともて素敵なものだった。人助けの後の満足げな彼女のそれと同じくらい。
しかし、そのハンバーグ(というより肉全般)を好き(これが過剰であるということも後々わかる)という特性とジュエルにグレイビーソースをつけてしまったことが、今後大変な事態を引き起こす、のだがそれを知るものはまだ誰もいない。
???「(美味しいガオ)」
まあそれはまた別のお話として、
――ある日の朝、誰かの寝室。外には大量のてるてる坊主がつるされている。逆さで
憂鬱そうな少年「はぁ、やっぱり効くわけないよなぁ」てるてる坊主と空模様を交互に見て、ため息をつく高校生くらいの少年。
憂鬱そうな少年「やだなぁ、マラソン大会。そんなの好きな奴だけがやればいいじゃん、そのために運動部はあるんだろ?大体、いつも運動してる得意な奴と同じ距離とか、おかしいじゃんか。しかも、サボったら体育赤点とか、横暴すぎるだろ、これだから筆記試験のない科目は――」どうやら、本日学校で開催されるマラソン大会が嫌らしい。その憂鬱な気持ちは愚痴となり次々と口からあふれる。その時、
ダークネスブラック「どうしたのじゃ、そんな陰鬱な気配をまき散らして」突然室内に現れたダークネスブラックが声をかける。
憂鬱そうな少年「陰鬱で悪かったね。でもしょうがないだr……ってうわ!だだだ、誰?なんで僕の部屋に」変質者、もとい変わった格好の女性が急に部屋に現れたことに気づき、あたふたする少年。
ダークネスブラック「我はダークネスブラック。闇の解放者である。お主何か願いがあるのではないか?我なら、それを叶える力を与えてやれるやもしれぬぞ?」
憂鬱そうな少年「……(なんなんだ、この人。変質者?だとして、どうやって部屋に?……それに願いを叶える力を与えるって……」
ダークネスブラック「どうした?はよ申してみよ。我には、お主に悩みがあることなぞ簡単に分かるのじゃぞ?(内容まではわからない、中途半端な能力だけどな)」考えこむ少年をせかすブラック。
憂鬱そうな少年「え?あっ、はい……(よし!相談してみよう。冗談なら警察に通報すればいい。でももし本当なら!)実は、今日学校でマラソン大会があるんです。それがいやで……」
ダークネスブラック「マラソン大会じゃと(確か、ただただ長い距離を走らせられる、時に強制参加の大会だったか?しかも学校行事の場合、賞品とかはないんだろ?)……それは嫌じゃな。無駄に走っても、腹が減るだけじゃ」
憂鬱そうな少年「そう!無駄なんですよ。足も脇腹も痛くなるし、苦しいし。それに足が遅いとクラスメイトに馬鹿にされる。最後の数人なんてほんと悲惨なんですよ。みんな表面は応援してるけど、どうせ心の中では嘲笑ってるんだ」共感してくれた存在に、心の内を話す少年。
ダークネスブラック「無駄に腹が減り、無駄に痛くて苦しい、そして誰かが馬鹿にされる行事。それは放ってはおけぬな。開催者は何を考えておるのか。……よし力を貸そうぞ」
憂鬱そうな少年「それって、具体的にはどういう力なんですか?」
ダークネスブラック「そうじゃのう。大抵の場合単純に肉体強化じゃから、走るのは楽になるぞ。足も速くなるし、疲れにくい。だが……」一つだけ気がかりなことがあり、言葉を濁すブラック。
憂鬱そうな少年「だが?何か、副作用でも?」
ダークネスブラック「副作用?そうじゃな、それは見た目が変わるくらいじゃが(あとちょっと理性がなくなる)」
憂鬱そうな少年「そうですか……見た目が変わるのは、(ドーピングが)バレてしまうので困りますね……」少し残念そうな少年。
ダークネスブラック「そうか……うむ。お主が楽になる方法が難しいのであれば、いっそのこと大会自体を中止させるというのはどうじゃ?開催者を力で脅すのもありじゃし、もっと言えばグラウンドでひと暴れふた暴れすればきっと中止になるぞ?」別の方法を提案するブラック。
憂鬱そうな少年「なるほど……でもさすがにそれは……」暴力的な方法に躊躇する少年。
ダークネスブラック「ふむ……お主以外にもこの大会を嫌がるものは多かろう。我としてはお主一人が楽になるよりも、他の皆も救われたほうが嬉しいのじゃ。故に、先ほどは言葉を濁したのであるが、もしそれが叶うのなら、お主はヒーローじゃぞ?なに、誰かを傷つけろといっているわけではない、少し力を見せつけて、中止を訴えればいいのじゃ。それなら問題なかろう?」少年の戸惑いを察して、正当化と後押しをする。
もう憂鬱じゃない少年「みんなも救われる……それなら……うん、俺やります!」みんなも救われるの一言に心を動かされ、決心する少年。
ダークネスブラック「よくぞ言った。では、この黒熊さんミニジュエルを託す。時が来たら、これを握りしめお主の欲望を叫ぶのじゃ(……一度は渋ったことを皆も救われるの一言で決心するか……こいつもなかなか見込みのあるやつだ)」少年に黒熊さんミニジュエルを託す。
――学校、職員室前
もう憂鬱じゃない少年「欲望開放!マラソン大会を中止させる!」少年の体が黒い靄で覆われ、数倍に肥大していく。ただしそれは職員室のドアを通れる程度のサイズ(もっと大きくてもドアを破壊して入れたけど)
――職員室
ガラッ
ダークネスマラソンギライ「失礼シマス……ハァッ」どーんっ。挨拶をして職員室に入ったかと思うと、体育担当教師の机に飛んでいき、それをこぶしで真っ二つにする。本当は少し凹んだだけ。
体育教師「うわっ。なんだっ?って、うわーーーーーー」いきなりのことに一瞬自体を飲み込めないが、すぐに悲鳴を上げる体育教師。
教師1「なんだなんだ」
教師2「あれやべーだろ」
教師3「それより避難だ。逃げろ!」
教師4「○○先生(※)を助けなないと……でも……」慌ただしくなる職員室
※体育教師のこと
ダークネスマラソンギライ「今日ノマラソン大会ヲ中止シロ。ソウスレバ、見逃シテヤル」
体育教師「ひっ……」
肝の据わった教師「マラソン大会?お前、生徒か?マラソン大会が嫌だからってこんなことしたらダメだろ?」相手が生徒であることが予想できたことで(黒い靄とか肥大した体とかには目もくれず)説得に入る勇敢な教師。
ダークネスマラソンギライ「ウルサイッ」どんっ。再び机を叩く怪人。今度は穴が開き、中身が床に落ちる。
ダークネスマラソンギライ「皆モ嫌ガッテイルンダ!皆ヲ苦シメルマラソン大会ナンテ許サナイ!」
肝の据わった先生「いっ、一部の運動が苦手な生徒が、嫌がるのは確かに、そう、かもしれない。で、でも体力をつける目標、になるし、忍耐力を養うためにも――」勇敢にも説得を続けるが、その目で怪人の腕力を確認したためか、声は途切れ途切れで震えている。
ダークネスマラソンギライ「ダッタラ皆ガ同ジ距離ヲ走ル意味ガ分カラナイダロ!ソレニ――」教師の言い訳に対して疑問をぶつける怪人。
――少し前、職員室前
ハンナ「(あれが昨日の彼女の言ってた怪人デス?なんにせよ、あれは止めないといけマセンね。怪我人が出る前に、彼がこれ以上罪を重ねる前に)ジュエルさん、さあ、私に力を貸してくだサイ」たまたま用事で寄るところだった職員室内での事件に、迷わずそれを止めようとするハンナ。そしてジュエルが白……あ、いや灰色?茶色っぽい?光を放つ。
???「僕は光の妖精ガオ。力をあげるから、願いを叫んでほしいガオ」光の中から現れた茶色い熊(手にはなぜかナイフとフォークを握っている)がハンナに語りかける。
ハンナ「(OH可愛い熊さんデース)OK,あの怪人を止めたいデース」まばゆい光がハンナを包み、制服が形を変えていく。
ハンナ「OH!VeryCute!それに力があふれてキマース。さあやりマスよー」そこには茶色と灰色ベースのデフォルメされた西部劇の保安官のあるいはカウガールのような衣装に身を包んだハンナがいた。真白同様に茶色のもこもこの手甲とブーツを着用し、熊耳のついたテンガロンハットもかぶっている。
――少し戻って、職員室内
ダークネスマラソンギライ「トニカク、中止ニシナイト、次ハオ前ラヤ生徒ガ怪我スルコトニナルゾ!」声を荒げて脅しにかかる。
肝の据わった先生「それは……くっ、どうしてもと――」その時、
ガラっ。ドアを開けて教室に飛び込むハンナ。
ハンナ「Wait!怪人さん、そんなことはもうやめてくだサーイ。マラソンは確かに辛いかもしれませんが、こんなやり方よくないデース。それにマラソン大会を楽しみにしてる人もきっといマス」怪人に声をかけ、近寄るハンナ。
ダークネスマラソンギライ「ナ、ナンダ前!邪魔ヲスルナラオ前モ!」急に現れたよくわからない格好で自分を止めようと近づく女性に戸惑うも、すぐに臨戦態勢に入る怪人。怪人化の影響で、一度は誰かが傷つくことを躊躇した彼の理性は既に機能を停止している。
ハンナ「私は光の戦士”ミクスドグリズリー”デース。正義のヒーローデース。あなたを必ず止めてみせマース」ハンナも構える。
――
ライトニングホワイト「(ハンナさん!どうかその怪人を止めてください。頑張ってください。……でもあのジュエルと妖精なんで茶色……それにミクスドって)」怪人の気配を察知し駆け付けたホワイトは、既にハンナが変身してそれを止めようとしているのを知り、安心するとともに、疑問を抱く。
ダークネスブラック「(光の戦士か?でもあの色……いやそんなことはいい)ダークネスマラソンギライよ、皆のためだ、そ奴もやってしまえ!そ奴は、ちょっとやそっとじゃ傷つかん!遠慮なぞいらぬからな!」怪人そして自分自身を邪魔する光の戦士の登場に、怪人を応援するブラック。
ダークネスマラソンギライ「皆ノタメ。傷ツカナイ、遠慮イラナイ!」理性を失っただけでない、優しさの類までがブレーキとしての役割を放棄し、逆にアクセルを踏み込む。そしてハンナに殴り掛かる。
ハンナ「遅いです。ふんっ」怪人の拳を搔い潜るように接近し、そのまま反撃のボディブロー(右ジャブ)を叩き込む。
ダークネスマラソンギライ「ぐはっ」その衝撃に膝をつく怪人。しかし、
ダークネスマラソンギライ「俺ガ皆ヲ助ケルンダー。マラソン大会ナンテ許サナイ!!!」怪人の姿が、さらに肥大し人としての姿を失う。
ハンナ「OH,NO!でも、負けないデス」ギリギリリーチ内の怪人のあごに向け、周囲の机を踏み台にしてジャンプ、渾身のアッパーを打ち込む。
ダークネスマラソンギライ「グゥゥ」怪人は天井へと頭からたたきつけられ、よろける。そして動きが鈍る。
ハンナの妖精「いまガオ。浄化技を使うガオ」弱り隙を見せた怪人に対して妖精が浄化技を使うことを要請する。”妖精”が”要請”する。
ハンナ「OK!どんな理由があっても、力で脅すようなことや傷つけたり壊したりするのはだめデース。ライトニングーストレーーートっ!!!」どーーーん!右半身を前にする構えで、体重を移動させつつ、腰をひねりながら左肩を前にそのまま拳を勢いよく突き出す渾身のコークスクリュー(左利き)。光輝く拳は怪人に直撃し、光は炸裂。怪人の体に染みこんでいき、ダークネス因子を中和させていく。そして少年の体は徐々に元に戻っていく。
――
ライトニングホワイト「やりました!」事件の解決を喜ぶホワイト。
ダークネスブラック「くっ。やるではないか……(くそっ。マラソン大会中止できなかった。あいつも他の生徒もあまりに哀れだ)」反対に悔しがるブラック。
――
憂鬱そうな少年「……それでも、俺はマラソン大会は嫌いだ……俺以外にだって、嫌っているやつ、憂鬱な奴はいるはずだ……」負けてマラソン大会を中止できなかった事実にショックを感じ、つぶやく少年。
教師1「あいつ、川田じゃないか……」
教師3「川田があんなことするやつだったとは……」
教師4「停学……あるいは退学の可能性も……」教師たちが怪人の正体を知り、ざわざわと話をする。
憂鬱そうな少年「はっ!……退学……」自分がしたことの大きさと、罰則に目の前が暗くなる少年。
――少し戻って、職員室前
黒木真白「(今日は休みたかったのに、パンダちゃんが学校で怪人が暴れてるっていうから仕方なく来たけれど……あの怪人、マラソン大会を中止にしようとしてくれてる?それにみんなを助けるって、そうよね、みんなマラソン大会なんて嫌いなはずだもの。疲れるし、痛いし、苦しいし、いいことないし……うん、頑張ってダークネス怪人)」
パンダちゃん「止めなくていいのかい?」
黒木真白「あの怪人がやろうとしていることは正しいことだわ……本当に問題になりそうになったら止めるわよ。でも、とりあえずあの子が戦っている間はそうはならないでしょう?」既に一人の戦士が怪人を止めようとしているのを指してパンダちゃんにこたえる。
――
黒木真白「退学はきついわね。停学くらいならまだマラソン大会出なくて済んでラッキーって自分をごまかせるけれど。……冗談はさておき、先生方は見ましたよね。彼の姿が普通ではなかったのを。ブラック、いるんでしょ?出てきなさい」変身した黒木真白が職員室に入ってくる。
ダークネスブラック「我に用事か?モノクロームパンダよ」
黒木真白「彼は、この人によって、怪人にさせられてしまったんです。それで理性をなくして暴れてしまった。そうよね?ブラック」怪人になって暴れてしまった少年を弁明すべく、ブラックに説明を求める真白。
ダークネスブラック「そうじゃな。我の授けるミニジュエルには対象を強化させるだけでなく、理性を黙らせる効果もある。本来ならば強大な力があったとして決してすることはない、というようなことも躊躇なくするようになるのじゃ。つまり、そ奴は怪人になった時点で、自らを見失っておる」ダークネスブラックが応える。
黒木真白「それに、何か嫌なことがあるときにそれを避けたいと思うことも、それを叶える力を与えると言われたときに心が揺らいでしまうのもある程度仕方ないことだと思います。いわゆる事故に遭ったようなものと言えます。また確かに他にもマラソン大会を嫌がっている生徒は多いと思います(私もです!)彼はしきりにみんなの為と言っていました。彼がただの悪い子ではない証拠だと思います」
ダークネスブラック「確かに奴は物は壊しても、人を傷つけはしなかったしのう。我は多数の人がいるグラウンドでひと暴れすることも提案したがそ奴は理性を失ってなお先ほどのやり方を選択したわけじゃ」理由はわからないがダークネスブラックも彼を擁護する。
黒木真白「どうか、そんな彼に尊大な対処をお願いします」
教師3「……まあ善処はしよう」
教師4「私たちも、必ずしも生徒に厳罰を処したいわけではないですし。とりあえず面談か反省文、その内容を見てという形になるかと」
憂鬱そうな少年「……ありがとうございます。すみませんでした」少し安堵の表情を浮かべつつも、自分がしたことを受け止め反省する少年
教師3「反省しているようだし、まあな(俺もマラソンとか嫌いだったしな、ははは)」
憂鬱そうな少年「お姉さん達も庇ってくれてありがとうございます。そちらの金髪の人も……止めてくれてありがとうございました。マラソン大会は嫌だけど、もっとひどいことをしてしまうかもしれなかったので……それは嫌なので」
黒木真白「いいのよ。私は事実を言ったまでだもの(それに私……あなたのこと応援してしまっていたもの、あなたがマラソン大会を中止にしてくれればいいって……)」
ダークネスブラック「我とお主は協力関係じゃしな。面倒くらい最後まで見るわ」
ハンナ「反省できる子でよかったデス」そんな感じで先ほどの惨状や緊張感とは打って変わった暖かい結末となった。
――
ライトニングホワイト「二人ともちょっといいですか?まだ変身は解かずに」職員室を後にする真白とハンナに声をかけるライトニングホワイト
黒木真白「ええ、いいわよ」
ハンナ「OK,大丈夫デース」
ライトニングホワイト「まずはミクスドグリズリーさん。彼を止めてくれてありがとうございました。これからもダークネス怪人が現れたら止めてください。お願いします」
ハンナ「任せてくだサーイ」快諾する。
ライトニングホワイト「あと、詳しいことはジュエルの妖精が教えてくれると思います。ミクスドグリズリーさんはこれだけです。ありがとうございました」
ハンナ「OK,さよならデース」そういうと軽く手を振り去っていった。
ライトニングホワイト「次はモノクロームパンダさんさん。あの……事の顛末を見ていたのなら、なぜ彼を止めなかったんですか?まさか、モノクロームパンダさんはあれを止めなくていいって思ったんですか?」
黒木真白「……それは……確かに冷静になって考えると、止めないといけなかったと思うのだけれど(でも、まだ机破壊して脅した程度だし……いやそれもいけないことではあるけれど)……でも、ほら私以外の戦士がすでに戦っていたでしょ?だから、大丈夫かなと……」
ライトニングホワイト「そうですか……でも他の戦士が戦っていても苦戦しているようなら手助けしてあげてくださいね」
黒木真白「そうね……」
ダークネスブラック「いや、こやつは確かにあの怪人に共感していたはずじゃ。お主が体育が嫌いでよくサボっているのは知っておる。そこで質問なのじゃが、なぜ怪人を手助けしなかったのじゃ?」
黒木真白「え……そういうのもありなの?今日の場合なら光の戦士と戦うってことよね?」意外な質問に少し驚く真白。
ダークネスブラック「怪人がしていることが正しいと思うのなら、それを邪魔しようとする光の戦士は敵であろう。戦って止めるほかあるまい」
ライトニングホワイト「!?モノクロームパンダさん、まさか本当にあれを止めなくていいと思っていたんですか!?」ブラックの言葉に軽くうなずきかけた真白に対して食い気味に問う。
黒木真白「えーあー、誰かが傷つくのはよくないわね。うん」
ライトニングホワイト「ですよね。よかったです。あともし、闇の戦士がライトニング超人を邪魔しようとしていたら、その時はライトニング超人に手を貸してくださいね?」
黒木真白「そういう場合もある、わよね……でも、この前も言ったように、それはその時々で状況によって選ぶわ。もちろんダークネスブラックが言った状況に関してもね」
ライトニングホワイト「……わかりました」
ダークネスブラック「わかっておるわ」
ライトニングホワイト「……ありがとうございました。モノクロームパンダさんもこれで大丈夫です」
黒木真白「そう。それじゃあね」黒木真白もその場を後にする。彼女もちょっと憂鬱そうだ。なぜなら
黒木真白「(今からおうち帰って、仮病で休もうかな……バレなきゃ大丈夫よね……はぁ)」マラソン大会が嫌だから。
――
ダークネスブラック「我ももう行くぞ。でわな」
ライトニングホワイト「いえ、あなたにも聞きたいことがあります!」
ダークネスブラック「……(めんどくさいなぁ。今回は別に何も……)」
ライトニングホワイト「あなた、ミクスドグリズリーさんにジュエル渡しましたか?」ハンナのジュエルと妖精に感じた違和感を、疑惑としてブラックにぶつける。
ダークネスブラック「ミクスドグリズリーの変身前が誰なのかがわからぬ限りはのう……まぁ、カタコトの少女にならジュエルを渡そうかとも思ったぞ。結局真白と同じことになりそうだった故やめたがな」ライトニングホワイトの質問に答えるダークネスブラック。なぜ彼女がハンナにジュエルを渡そうと思ったのかは後々判明する。
ライトニングホワイト「そうですか……では、いったいなぜ、彼女のジュエルと妖精はあんな色を……」
ダークネスブラック「確かに白くはなかったのう。妖精はまだしも、ジュエルが色を変えるとは……面白くなってきおったわい」
ライトニングホワイト「他人事だからって。まあ、あなたがジュエルと渡していたからじゃないなら、今はいいです。それだけです。では」少し不満げに別れを告げるホワイト。
ダークネスブラック「ではな」その場を後にするブラック。
次回予告「未定」
ストック自体はありますし、大筋自体は考えてあるのですが、
流れ次第では書き直しとかしないといけないので、少し時間が空くと思います。
あとなぜハンナがハンバーグにグレイビーソースをかけていたのか(そこまで不思議でもないかもですが、違和感を感じる人は感じると思います)は、以降の話で判明します。