Ep.3戦士のあれこれ
――時は少しさかのぼり、あの事件の直後、少年たちと別れたあと
黒木真白「お二人とあとパンダちゃん。いくつか聞きたいことがあるんですけど」
ライトニングホワイト「私たちも気になることがあります。今お時間大丈夫ですか?ブラックにも後で話がありますけど……」
ダークネスブラック「ホワイトの話はあまり聞きたくないが……まあ、よかろう」
妖精「……パンダちゃんっていうのは僕のことなのかな?」
黒木真白「ほらこれがパンダ。そっくりでしょ?だからパンダちゃん」スマホでパンダの写真を表示し妖精に見せる真白。
パンダちゃん「……そのまんまなんだね……」
黒木真白「パンダは可愛いから、名前なんて気にしなくていいのよ?それはさておき」
パンダちゃん「(さておかれちゃったよ……)」
黒木真白「この前は冗談とか(妄想とか)だと思ってましたし、それでなんとなく流されてしまっていたんですけれど、大事なこととか何一つわかっていないんですよね。とりあえず、さっきのあれが何なのかとか、私はどうしたらいいのかとか、詳しく教えてもらえますか?」
パンダちゃん「それは僕が説明したほうがいいね。妖精の役割だし、二人には二人の立場があるからね(本当は、僕もどちらかに寄っていたはずなんだけどね……)」
ライトニングホワイト「そうですね……」
ダークネスブラック「(こっちに都合のいいことだけってわけにもいかないか……)」
黒木真白「うん、お願いね」
パンダちゃん「(うん、やっぱり僕だけため口……しょうがないか)まずさっきの怪人について。あれはダークネス怪人だね。”悪に落ちても”……これを自覚しているかはともかく、”何かを叶えたいという強い欲望、願望”を持つ人に、ダークネスブラックが力を与えるとさっきみたいな怪人になるんだ。それはその力を以って願いをk――」
黒木真白「ちょっとまって。じゃあ、さっきのはダークネスブラック!さん、あなたが引き起こしたことなんですか?」予想していなかった事実に困惑する真白
ダークネスブラック「何が問題だというのか?お主もさっき言っていたであろう、あの少年がひどく傷つくところであったと。我はそれを止めるべく、あやつに力を貸した、それだけのことじゃ。我が与える”黒熊さんミニジュエル”は”理性を黙らせ自らを守る力を与える”もの。それは咎められるものではなかろう」対して、悪びれることなく毅然とした態度でそれに応えるブラック。
黒木真白「でも、他の二人が大変なことになるところだったじゃないですか。それにもしあのままあの子があの二人を傷つけてしまっていたとしたら、それはそれで傷つくことになったと思います」
ダークネスブラック「結果が変わらぬのなら、大切なものを守れたほうがよかろう。どんな理由があれ”他者を平気で傷つけようとした輩が死ぬこと”を悪いこととも思わぬしな。それにそんな戯言が言えるほどぬるい世界で生きてきた小娘に説教されるつもりなぞないわ。パンダよ、話の続きをせい。もちろんホワイトのやろうとしていることも包み隠さずにな」
黒木真白「……(ホワイトのやろうとしていること……?ホワイトはブラックを止めようとしているだけなんじゃないの?)」
パンダちゃん「分かっているよ。ブラックがあの少年を怪人化させたのと同じように、ホワイトも誰かを超人にする力を持っているんだ。”手段を選ぶことを放棄したとしても””必ず為しとげたい正義”を抱いた人に、ライトニングホワイトが力を与えると見た目は違うんだけど、ダークネス怪人のように強い力を持った存在になる。そしてその力を持って正義を遂行するんだよ。それを僕らはライトニング超人って呼んでる。ちなみにライトニングホワイトの”白熊さんミニジュエル”は”感情を黙らせて、正義を成し遂げるための力を与える”んだ」
黒木真白「ブラックだけじゃなくて、ホワイトも誰かを怪人化させるっていうの……」
ライトニングホワイト「”超人化”です。それに私が超人化させるのは、正しい心を持った人だけです。正しい事を願う人だけです。だから大丈夫なんですよ?」
黒木真白「でもさっきの怪人みたいに力尽くで叶えようとするんですよね?どんなに正しいことでもそれは違うと思うし、結局誰かが不用意に傷つくのは変わらないですよ……それが必要になることもあるとも思うけれど……その前にできることもあるんじゃないですか?」
ライトニングホワイト「そんな流暢なこと言っていたr――」
ダークネスブラック「下らん言い合いは後にしてくれぬか?」
ライトニングホワイト「自分だって、さっき……もういいです。パンダちゃん続きお願いします」
パンダちゃん「(今気づいたけど、二人までパンダ呼ばわりなんだね……いいけど)つまり……簡潔に言えば、これからもあんな怪人や超人が現れることになるってこと。これがさっき起こったこととこれから起こることの説明だよ」
黒木真白「そう……(これからも……)わかったわ」
パンダちゃん「次に君のことなんだけど……これがちょっとイレギュラーなんだよね。まあ、まず一般的な話をすると、ライトニングホワイトとダークネスブラックは、超人化や怪人化だけでなく、自らの代理をたてるんだよ。超人化や怪人化の対象にはミニジュエルを渡すんだけど、それより一回り大きくて、強い力をもったジュエルがある、君はすでにもらっているよね。”白熊さんジュエル”は”あらゆる悪意から人々を守る力”を”黒熊さんジュエル”は”理不尽な正義から人々を守る力”を持つんだけど、その力を以って変身しその役目、つまりダークネス怪人の悪意やライトニング超人による理不尽から人々を守るのが、光の戦士あるいは闇の戦士なんだ」パンダちゃんは淡々と説明するが、その説明に対する同意としかし一部の言葉に対する引っかかりを感じるホワイトとブラック。それでも黙った話を促すのはいたちごっこにしかならないからだろう。
黒木真白「その代理に選ばれたのが私?」
パンダ「そう……でも、君の場合は普通とちょっと違うんだ。君は二人ともから代理として選ばれジュエルを託された。そしてその二つのジュエルがともに活性化して、光でも闇でもない、あるいはそのどちらの面も持った戦士になってしまった。こんなことは今まで一度もなかった。そうだよね?」ライトニングホワイトとダークネスブラックに尋ねる。
ライトニングホワイト「ええ。そうです。だから私たちも、どうすればいいのか……」
ダークネスブラック「おそらく窓際(※)のやつも困惑しているであろうな」
※エピソード0で登場した、謎の声のことです。
パンダ「うん……。光の戦士はライトニングホワイトに、闇の戦士はダークネスブラックにそれぞれ見込まれたほどの人間。なら普通は勇んで相容れない側の怪人や超人を止める、躊躇することなんて何一つないって感じでね。でも、その二人ともに見込まれた君は、あのとき初めは怪人を力で倒すことに躊躇し、初めは別の方法で解決して見せた。そして、今も、ライトニングホワイトとダークネスブラックがやろうとしていること両方ともに反対している。けど同時にあの少年が二度目の怪人化を果たしたときは、それを止めるべく変身し、それを力でいなして見せた(最終的にはやっぱり言葉で説得したみたいだけど)君は非常にどっちつかずな位置にいる」
黒木真白「私が光の戦士にも、闇の戦士にも向いていないってことよね。でも私は、二人や二人によって怪人化させられた人を止めたい。無理やり力で止めることには躊躇もするし、いつでも止めればいいのかもわからないけれど……」
パンダちゃん「そういう君は確かに光の戦士にも、闇の戦士にも向いていない。でも僕は思うんだ。そのどっちつかずの君だから、力で解決することを戸惑ってしまう君だから、出せる答えがあるんじゃないかって。今まで多くの星を巡りそれでも何も変わらず、決して見いだせなかった答えが」
ライトニングホワイト&ダークネスブラック「……」
黒木真白「(私だから出せる答え……?)」
パンダちゃん「君はあの時言ったよね。どちらが正しいかじゃなくて、自分が嫌だから止めるって。僕はそれでいいと思う。君は光の戦士でもなく、闇の戦士でもなく、正しいか間違っているかでもなく、君として君が思うように動けばいい。それでも君は止めるべきことを止めてくれるって僕は思うから」
黒木真白「相手がダークネス怪人でもライトニング超人でも、私が止めたいと思ったら止めればいいってこと?」
パンダちゃん「うん。逆にその必要がない、そのほうがいいと思うなら止めなくてもいい。君が選択すればいいんだ」
黒木真白「それなら……できるかもしれないわ」
ダークネスブラック「パンダよ。勝手に話を進めるでないわ。こやつには闇の戦士として我の代理を務めてもらわねばならぬ」
ライトニングホワイト「……私だって、真白さんには光の戦士として私の代理を務めてもらいたいです。そうじゃないと困ります!」
パンダちゃん「……君たちは自分の目的にために行動しているかもしれないけど、彼が君たちに二度目の生を与えた理由を忘れたとは言わせないよ。これはきっとその答えを見つけるチャンスなんだ。それに彼女に自分の代理を強制できるかい?そのすべまでは与えられていないはずだよ」
ライトニングホワイト「確かに……そうですけど」
ダークネスブラック「どちらにせよ、こやつに託すほかないというわけか……」
パンダちゃん「そういうことだね。ということでよろしくね……真白って呼んでもいいかな?(君は勝手に僕をパンダちゃんって呼んだわけだし)」
黒木真白「ええ、よろしくね。パンダちゃん(そして二人も。本当は私がここで二人を説得することができたらよかったのだけれど、きっといつかはわかってくれるって信じているわ)」
パンダちゃん「うん。あと一つ、いわゆる変身名乗りを考えておいたほうがいいよ。あれじゃあね……君もそういうの好きだろうし、戦士としての名前やその名乗りはマジカルな力で君たちの正体を隠す役割もある。光と闇の戦士は敵対関係にあるから、素性がばれるのはあまり好ましくないんだ。特に君はそのどちらからも敵視されかねないしね」
黒木真白「かっこいい変身名乗り考えていいの?(わくわく)」
パンダちゃん「う、うん(一周回って恥ずかしいのは嫌だけど……真白のセンスを信じよう)。あともう一度念を押すけど、素性がばれないようにね」
――
そんなこんなで、真白とライトニングホワイト、ダークネスブラック、妖精……パンダちゃんの話し合いは終わった。あと一つ補足だけれど、パンダちゃんが(活性化前のことも含め)色々なことに詳しいのは、ジュエルには基本的な情報があらかじめ埋め込まれていて、活性化と同時にそれを学習するからである。妖精にはパンダちゃんがしたような戦士への役割などの説明や補佐などの役割があるからである。
――
ライトニングホワイト「真白さん、それではまた(私は、それでも真白さんを信じています)」
ダークネスブラック「ご苦労であったな」
黒木真白「はい。それでは……」話とあいさつを終え、真白がその場を後にする。
――
ライトニングホワイト「ブラック。二つだけいいですか?」
ダークネスブラック「一つは分かる。怪人化が早すぎるということじゃろう(説教は勘弁してほしい)」
ライトニングホワイト「そうです。ミニジュエルで怪人化・超人化するのは代理人をすべてたて終わってからって約束でしょ?私もそうですけどあなただってまだ一つしか大きいほうのジュエル託していないのに」
ダークネスブラック「確かに一人にしかジュエルを託していない状況で、約束を反故にすることが我にとってもリスクであったことは理解しておる。お主が報いとして同じことをするかもしれぬからな。それでも、我はあれを放ってはおけなかったのじゃ」
ライトニングホワイト「(……やっぱりそうなんですよね)もう一つは、それです。なんであなたがあの少年を助けたんですか?あの少年は悪ではなく、被害者なのでは……」
ダークネスブラック「(あいつは少し人と違うというだけで、常識を振りかざし自己を正当化する奴らに攻撃をされていた。そして大切なものを失うところだったんだ。あたしがそれを止めないわけがない。……が)ふむ、そう言われると、何故じゃろうな?気の迷いというものかもしれぬ。それにお主こそ、”初めからあの二人があやつの為に毛布を奪おうとしていること”に”気づいて”居れば、そちらに味方したのではないのか?怪人化したあやつを止めることもできて一石二鳥だったはずじゃ。つまりそういう間違いもたまにはあるということであろう」
ライトニングホワイト「そう……なんでしょうか」
ダークネスブラック「きっとそうじゃ。互いに気を引き締めねばな。もう話はよいな?我ももう行くぞ」
ライトニングホワイト「……はい」
ダークネスブラック「うむ、ではな。……せいぜい、できるだけ早く代理をたてきることじゃ」
そうして、二人もその場を後にした。
次回予告「二人目の戦士が活躍します」