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Ep.2真白、変身する。そして事件を解決する。

 ――あの日の翌日。


黒木真白「今日はすっきり起きられたわ。何か大切なことを忘れている気もするけれど、きっと夢の内容よね。準備して学校へ行きましょう」やはり絶賛現実逃避中の真白であった。


 ――放課後、とある公園


おとなしそうな少年「返してよう。それは僕の大切な……」今にも泣きだしそうな少年が二人の少年に対し、何かを懇願している。


やんちゃそうな少年「あ?聞こえねーぞ。もっかいいってみ?」


とりまきっぽい少年「大体、小学生にもなって、こんなもんいつも持ってるとかありえないっつーの」すこしほつれた布切れを振り回す少年。


やんちゃそうな少年「だよなー。破いて捨てちまうか、そのほうがこいつのためにもなるだろ」


とりまきっぽい少年「いーねー」布に力を入れる。


――公園前の道路


黒木真白「!いじめ?それにあの子あんなに……とにかくとめないt――」下校途中、たまたまその現場を目撃する真白。


 ――公園内


おとなしそうな少年「やめてぇええええ!!!!!……あれ?……だれ?」そのときだった。少年を取り残し周囲の時間が止まる。そのことといきなり目の前に現れたお姉さんの存在に気づき戸惑う少年。


ダークネスブラック「我はダークネスブラック。お主の心の悲鳴を聞きつけやってきた。何があったのか申してみよ」


おとなしそうな少年「……いつも二人は、僕の毛布をからかうんです。常識的にいつも持ち歩くのはおかしいとか、みすぼらしいボロ布もってるんじゃないとか、でもこれはとても大切なもので……破かれそうになって……すごく嫌で……やっぱりおかしいですよね……」初めは戸惑いつつも、辛い状況で話を聞いてくれる誰かの存在、もしかしたら助けてくれるかもしれないという期待に、ぽつりぽつりと状況を伝える少年。


ダークネスブラック「うむ、大体のことはわかった。おかしいかどうかは我にはわからぬ。だが、我は常識などというもののほうが嫌いでの。それを誰かを傷つけてよい理由、何かを奪ってよい理由にするのならなおのこと許せぬ。よし我がお主に力を与えようぞ。その力をもってすれば奴らからその布を取り戻すのも容易になろう」


おとなしそうな少年「ほんとう?僕でもできる?」


ダークネスブラック「本当じゃ。お主は願いを叶える力を得られる」


おとなしそうな少年「お願いします……力をください。僕、大切な毛布を取り返したい!」


ダークネスブラック「よかろう、ならばこのブラックミニジュエルを握りしめ、お主の欲望を叫ぶのじゃ」


おとなしそうな少年「はい……欲望開放!大切なものを取り返す!」その時、少年の体は黒い靄で覆われ、数倍に肥大していった。


 ――公園の上空


ライトニングホワイト「(先を越された……でもなんで……いや、今はそれどころじゃ。どうにかしないと……誰かにジュエルを託す?でもあの二人じゃ……はっ、あれは真白さん?)」ダークネスブラックと同じく少年の心の悲鳴を聞きつけ駆け付けたライトニングホワイトだったが、わずかに遅かった。そしてその状況を打破すべく、力を託せる人を探す。そして、たまたま居合わせた真白を発見する。


 ――公園内


ダークネストリカエース「返セ。僕ノ毛布。ソレハオ父サンニモラッタ……返セエ!」黒い靄に


覆われた(二人から見れば十分に)巨大な怪人が二人の少年にじりじりと近寄る。


やんちゃそうな少年「う、うわあーーーー」突然目の前に現れた怪人に叫び声をあげる。


とりまきっぽい少年「助けてくれーーー」こちらの少年もパニックになっていて、目の前にいる怪人が先ほどまで自分たちがいじめていた相手であることに気づけていない。そして、その言葉(目的)も耳に届いてはいなかった。


――公園前の道路


黒木真白「え?いったいどうなって……」


ライトニングホワイト「真白さん!」


黒木真白「あ、ライトニングホワイトさん!あれは一体?」


ライトニングホワイト「あれが、昨日言った悪の心にのまれた人の姿です。どうか彼を止めて、あの二人の少年を助けてください。お願いします!」


黒木真白「悪……?でも怪人……いいえ、あの子は……」ライトニングホワイトの言葉に引っ掛かりを感じ躊躇する真白。


ライトニングホワイト「早くしないと、取り返しのつかないことになります!」


黒木真白「……はい。でもどうすれば?」ライトニングホワイトの真剣さにいったんはひっかかりや躊躇をしまう。


ライトニングホワイト「あなたが心からあの状況を解決したいと思えば、ジュエルはそれに応えてくれます。あとは流れに身を任せてくれれば大丈夫のはずです」


黒木真白「解決は……うん、したい。わかりました……(でも)」やはり心は決まり切らない。


――


ダークネストリカエース「返セ!僕ノ毛布!」


とりまきっぽい少年「くるな!くるなぁ!!!」もつれる足で一生懸命にげる少年。


やんちゃそうな少年「(ほっ。あいつのところに行ってくれたぜ)」怪人がもう一人の少年のほうに向かい安心する少年。だが、二人ともいまだ怪人の目的に気づけていなかった。


黒木真白「待ちなさい。あなたは私が止めて見せるわ。マジカルチェーンジ」そこに駆け付け利き手に携えた白熊さんジュエルを胸の前に突き出し、某アニメの変身セリフを叫ぶ。


ダークネストリカエース「ン?ウルサイ。……返セ!返セ!」一瞬、真白のほうを確認するが、すぐさまとりまきっぽい少年に向き直る。


黒木真白「って、何も起こらないじゃないの!さすがに生身じゃ……(それに、本当に止める必要あるの?)」思っていたようなことは何一つ起こらず、止めようとした怪人にさえ無視される始末に戸惑う真白。そして先ほどの引っ掛かりをもう一度認識する。


――少し離れた場所


ライトニングホワイト「(え、なんで?もしかして、彼女は心からあれを止めたいと思えていない?でも、真白さんがそんな人だとは思えないです……いや……でも……そもそも今回の怪人化はちょっとおかしい……だって、被害者はどう見てもあの怪人化した少年だった……もし真白さんがそのことを知っていたら……)」状況を整理し、ジュエルが活性化しない、真白が変身できない原因を探るホワイト。


――少し離れた場所


ダークネスブラック「(なんであいつが白熊さんジュエルを!?それにこの状況でダークネス怪人の邪魔をするなんて。やっぱり見込み違いだったのか?)」


――


ダークネストリカエース「返セ!返セ!」相も変わらず、目的のために行動する怪人。


黒木真白「あの怪人、ずっと『返せ』って。やっぱり……」変身できない状況で、せめてもと怪人の様子を観察していた真白は何かを確信し、行動に出る。


黒木真白「待ちなさい――」その言葉は怪人ではなく、とりまきっぽい少年に向けたもので、そのまま少年の腕をつかむ。


とりまきっぽい少年「な、なんだお前!離せ、このままじゃあいつに捕まる!!」知らない年上の女性に死角から急に腕をつかまれて困惑し、同時に怪人のことを気にして焦る少年。


黒木真白「いいから、その布よこして!」怪人がすぐそこまで迫っていることもあり、動転して話を聞こうとしない少年の指をやや強引に引きはがし、毛布を奪う真白。


黒木真白「これを取り返したかったのよね。もう大丈夫。これはあなたに返す。だからもうこんなことはやめて(これできっと元のあの子に戻れるわよね)」すかさず怪人のほうに向きなおり、毛布を差し出し、説得をする真白。


ダークネストリカエース「……毛……布。オ父サンノ毛布……アリガとう」真白から毛布を受け取ると、大切な毛布が帰ってきた喜びと、自分を助けてくれた人の優しさに、心が穏やかになった怪人の周囲の靄は徐々に晴れ、元の少年の姿に戻る。


――少し離れた場所


ライトニングホワイト「(さすが真白さんです。変身もせずに解決してしまうなんて。私では決


して思いつきもしない解決方法で。でも、そっか、あの子は毛布を取り返したかっただけだったんですね……それをダークネス怪人だからって決めつけて……)」


――少し離れた場所


ダークネスブラック「(黒木真白。やはり、あたしが見込んだだけのことはある。白熊さんジュエルを持っていたことだけが気がかりだけど……)」


――


おとなしそうな少年「お姉さん、ありがとう」毛布を取り返してくれた真白にお礼を言う少年。


黒木真白「いいのよ。大切なものなのでしょう?それにあなたは彼らを傷つけようとはしなk――」真白がそれに応えるが、それは急に遮られる。


とりまきっぽい少年「お、おまえだったのか!よくもあんなことを」怪人化の解けた少年に対し今だ怯えはなくなっていないが、いつもいじめている少年に脅かされたことを許せず、つっかかるとりまきっぽい少年。


やんちゃそうな少年「そ、そうだぞ。あんな卑怯なやり方で。でももうそれも終わりみたいだな!」やんちゃそうな少年もそれに乗っかる。


黒木真白「やめなさい。あなたたちが悪いn――」それを止めようとした真白だったが、今度は後ろにいるおとなしそうな少年のほうから急に流れてきたまがまがしい気配に言葉が飲み込まれる。


おとなしそうな少年「う、るさい。いつも、いつも、いつも。お前たちに何が分かる。やっぱり、お前たちは許せない。もう二度と――欲望開放!もう二度と奪わせない……こんなやつら消してやる!!」少年がそう叫ぶと、少年の体は再び靄につつまれ、先ほど以上に肥大化していく。それはもう人の形から外れていた。


とりまきっぽい少年「うわぁあーーーー。また変身するなんて聞いてないよー!」


やんちゃっぽい少年「じょ、冗談だったんだ。もうやらない。もう何もしないから許してくれーーー」再び焦り、許しを請う二人の少年。


ダークネスケシテヤール「ウルサイ。ソンナノ信ジラレルワケガナイダロ」それを決して聞き入れず二人の少年に殴り掛かる怪人。


二人の少年「うわぁーーーー」必死に逃げる。


黒木真白「そんな。せっかく……とめないと。でも、あれじゃあさすがに……」


ライトニングホワイト「(ダークネス因子が残っていたの?それにあんなに大きな……)真白さん、あなただけが頼りです。彼を止めてください!いまそれができるのはあなただけなんです!」真白に近寄りながら、声をかけるライトニングホワイト。


ダークネスブラック「(まさかあいつの闇がここまでだったなんて……でも)やらせはせぬぞ。大切なものを奪われかけた奴には復習する権利がある!それにやつらは自らの行いを自覚せねばならぬ。それを止めることが本当に正しいことなのか、よく考えよ!」同じく真白に駆け寄り、声をかけるダークネスブラック。


ライトニングホワイト「耳を貸してはいけません。悪意によって、人が傷つけられることは、命が奪われることは許されません(でもそれって、さっきまであの二人がしていたこと……ううん、今は目の前の危機に)お願いします。真白さん」


黒木真白「……私には、どちらが正しいかなんてわからないわ。確かにあの二人は反省しなければならない。でも傷つけばいいなんて思えないし、あの子が誰かを傷つけるのも嫌。……だから私はあれを止めるわ。どちらが正しいかじゃなくて、私が嫌だと思うから。それを善と称賛されるつもりはない。そして悪といわれることを気にするつもりもないわ。私は私がしたいと思うことをする。善悪じゃなくて私の意志で!」自分なりの答えと決意に、自然と口調がいつもの感じに戻る真白。そしてそのとき先ほど白熊さんジュエルをしまった制服の右ポケットから白い光が、鞄の中から黒い光が現れて、一つになりさらに強い光を放つ。


???「僕は善……?悪?とにかく妖精。(今は急ぎだよね……よし)君が僕を活性化させた戦士候補だね?じゃあ、君に力を流し込むから、君の願いを叫んで」光の中から現れたパンダのような何かが真白に話しかける。


ライトニングホワイト「(二つのジュエルが合わさって――)」


ダークネスブラック「(――力を解放だと……そんなことあるわけ……)」


黒木真白「(これが二人の言っていた力の解放?ていうかパンダじゃない!可愛い)ええ、よろしくお願いするわ(願いを叫ぶのよね……)すぅーはぁー。私も可愛い変身ヒロインになりたーーーーーーーーい!」


???&ライトニングホワイト&ダークネスブラック「え?」


 そのとき、黒木真白の周囲をまばゆい光と靄のような闇(まだらな感じで混ざっている)が包み、制服が形を変えていく。


黒木真白「光……闇……?あーえっと、とにかく戦士!”モノクロームパンダ”」そこには中国風の道着をモチーフにアレンジされたそれなりにかわいらしい白い服と、パンダっぽい黒耳、そして黒いもこもこの手甲とブーツを着用した銀髪(普段は黒髪)の黒木真白がいた。ついでに背景にうっすら竹林の風景と”中国四千年”というフレーズが投影される。


ライトニングホワイト「光でも闇でもない戦士?」


ダークネスブラック「いや、そのどちらでもある戦士……」


妖精「これで君は戦う力を手に入れたはずだよ。さあ、それが願いなら、彼を止めてきて」


モノクロームパンダ「ええ、必ず」


――


とりまきっぽい少年「や、やや、やめてくr」その声は恐怖で震えているだけでなく、聞き取るのも難しいほど弱弱しいものだった。


やんちゃそうな少年「本当に、反省してる。今度こそ本当だ。おれが悪かった。認める。だから」こちらはちゃんと声こそ出ているものの、その態度は先ほどまでと明らかに異なっていた。


ダークネスケシテヤール「信ナイゾ……フフフ、追イ詰メタ。クラエ!」ついに少年二人を追い詰め、高く掲げた剛腕を振り下ろす怪人。そのとき、


モノクロームパンダ「だめよ!!!」変身した黒木真白がその間に割り込み、真上から振り下ろされたその剛腕を中国拳法っぽい回し蹴りで、側方にはじきそらす。


ダークネスケシテヤール「邪魔ヲスr――」


モノクロームパンダ「はぁっ!」怪人が反応しきるより早く、追撃の正面突きを腹部に叩き込み、怪人を押し飛ばす。そして


とりまきっぽい少年「ほっ」


やんちゃそうな少年「助かった……のか」安堵する二人。


モノクロームパンダ「そこで待ってなさい」安堵の表情を浮かべる少年二人に向きなおり、真剣な表情ときつめかつやや低めの声でそう言い放つ。既に腰を抜かしていて逃げるどころではなかったが、それ以上に先ほどの一件の後の年上の誰かのその真剣な表情が二人の心に刺さる。そして再び怪人のほうへ向かうモノクロームパンダ。


ダークネスケシテヤール「ウグゥ……ナンデ……邪魔ヲスルノ……アイツラハ消サナイトイケナイノニ……邪魔ヲスルナラ……アイツラノ味方ヲスルナラ……オ前カラ消シテヤル」ターゲットを自分を邪魔する謎のコスプレ武闘家に移す怪人。それが先ほど自分を助けてくれたお姉さんであることに気づいていながら。


モノクロームパンダ「あの子たちの味方をするつもりはないわ」


ダークネスケシテヤール「ジャアナンデ」


モノクロームパンダ「あなたを放っておけないから」


ダークネスケシテヤール「ジャア邪魔シナイデ。アイツラヲ消セタラ、僕ノ毎日ハ平和ニナルンダ」


モノクロームパンダ「あなたが誰かを傷つけることに見て見ぬふりはできない」怪人の攻撃をいなしながら、声をかけ続けるモノクロームパンダ。


ダークネスケシテヤール「僕ノコト何モ知ラナイクセニ……僕ノコトナンテ本当ハドウデモイイクセニ」


モノクロームパンダ「確かに知っていることは何一つないわ。でもあなたが誰かを大切に思っていたこと、誰かに愛されていたことは分かる。今だって、たとえ届かなくても、きっと相手も」


ダークネスケシテヤール「ソレヲイツモアイツラハ奪ウ。ダカラ」


モノクロームパンダ「そうね。でもそれは、あの毛布を奪うことじゃない。あなたをこんな風にしてしまうこと」


ダークネスケシテヤール「ナニヲ、言ッテ……イルノ!アレハ僕ノ大切ナ」戸惑いが一瞬腕を止めるがすぐに攻撃を再開する怪人。


モノクロームパンダ「(届いてる!)そうね。でももっと大切なものがある」怪人が一瞬でも動きを止めたことに手応えを覚え、さらに説得を続けるモノクロームパンダ。


ダークネスケシテヤール「ソンナノ知ラナイ!持ッテナイ」


モノクロームパンダ「確かにあるの。それは、さっき言ったあなたの思い。あなたへの愛」


ダークネスケシテヤール「!?」戸惑いが怪人の動きを緩めさせていく。


モノクロームパンダ「誰かを大切に思うことはとても素敵で尊いこと。だからそれが誰かを傷つける理由に変わってしまうのは嫌なの。そしてあなたを愛していた誰か……お父さんが一番それを望んでいない(あの二人に一番憤慨してるのもお父さんかもしれないけれど……)。私はそう思うから」


ダークネスケシテヤール「デモ……アノ毛布ハ、オ父サンノ思イ出デ……」反論するわけでなく、ただ答えが欲しくてそうつぶやく怪人はすでに攻撃の手を止め、膝をついていた。


モノクロームパンダ「そうね。でもたとえ物がいつかなくなっても、心に刻まれた愛はなくならない。その毛布は大切にすればいい。でもあなたの心をその愛を悪意で塗りつぶさないで。そしてこれからも素敵な愛をたくさん見つけてほしい……」


ダークネスケシテヤール「……僕ハ……オ父サんの愛を……大切にしたい。お母さんの愛も。おじいちゃんおばあちゃんの愛も……そして、お姉さんが気付かせてくれたこの気持ちも…………それにきっとあの二人のことをそんな風に愛して大切に思っている誰かもいるんだよね……だから止めてくれて、ありがとうございました」怪人は再び少年の姿に戻る。その表情は少し申し訳なさそうで、そしてとても暖かなものだった。


黒木真白「そしていつかきっとあなたたちもそんな風に誰かを愛する、その時に後悔してほしくないのもあって。だから、あなたが思いとどまってくれてよかったわ。あと今のあなたの表情とてもすてきだわ……ちょっとあそこのお姉さん二人と待っていてくれる?」真白の変身も事件を解決して(少なくとも真白にとって)その必要がなくなり自然に解除される。


おとなしそうな少年「ありがとうございます……はい」少し照れる少年


――少し離れた場所


ライトニングホワイト「先ほどもそうでしたが浄化技も使わずに怪人化を解くなんて……それに彼女がさっき言っていた言葉……」状況への驚きと戸惑い、そして少年を説得していたときの真白の言葉への引っ掛かりを覚えるライトニングホワイト。


ダークネスブラック「(あたしの愛も誰かを傷つける理由に”変わってしまって”いた?いや、でも、それでも、あたしは、あの時もこれからも……)」ライトニングホワイトと違い、その引っ掛かりの理由を自覚しながらも、まだそれを受け入れることはできないダークネスブラック。


黒木真白「二人とも、聞きたいこともありますが、とりあえずあの少年のこと見ていてあげてください。私はあっちの二人に用事があるので」


ライトニングホワイト「はい、わかりました」


ダークネスブラック「我々にも話したいことがあるでな。用事が済むまでの間、童の面倒ぐらいは見ようぞ」


 二人の了承を受け、先ほど待っているように言われた場所でおとなしく、そしてうずくまる様に待っている二人の少年のほうへ向かう真白。


――公園の隅


黒木真白「さて、お説教の時間よ」


少年二人「はい……」


黒木真白「あなたたちがしていたこと、しようとしたことは、決して許されることではないわ。あの子から大切なものを奪い、壊そうとして、あの子の心を傷つけようとしたのだから。でも頭ごなしに叱っても意味があるとは思えないし、とりあえず弁明はあるかしら?」


とりまきっぽい少年「……」


やんちゃそうな少年「だって、いつでもどこでもあんなボロ布持ってるから……」恐る恐る口を開く少年。


とりまきっぽい少年「そ、そうだよ。常識的におかしいって。だって普通持ち歩かないでしょ?」もう一人の少年もそれに続く。


やんちゃそうな少年「邪魔くさいし、夏とか暑苦しいし、それにあんなボロボロ……」


黒木真白「そう。理解できないから、矯正しようとしたってことね?」簡潔に聞き直す真白。


とりまきっぽい少年「まぁ、そうですね」


やんちゃそうな少年「俺たちだけじゃないぜ?みんなおかしいって思ってる。あいつ学校でも孤立してるんだぜ?」


黒木真白「……それは確かに問題だけど……でも、常識とか、多数派の理解とか、そんな簡単なことばかりじゃないのよ?あなたたちにも大切なものはあるんじゃない?」


とりまきっぽい少年「それは……まあ」


やんちゃそうな少年「なくはないけどよ……普通のものだぜ?それにいつも持ち歩いたりはしないし……」


黒木真白「大抵はそうね。でも、世界にはいろんな人がいて、そしてそれぞれが心を持っている。普通から外れてても何かを大切に思ってしまう、何かを大切に思ってしまうから普通から外れてしまうこともあるわ(もちろんそれで誰かを傷つけるのもよくないのだけれど、今回は事情が事情だし……)」


とりまきっぽい少年「う……」反省の気持ちが強くなるにつれて、声をなくす少年。


やんちゃそうな少年「でもわからないよ」もう一人の少年と違い、納得しきれない故かいまだやや反抗的な少年。


黒木真白「理解することが難しい場合があるのもわかるわ。必ずしもそうしろとは言えない。でも分からないなりに尊重することはできると思うの」


やんちゃそうな少年「じゃあ、いつまでもあのままでいいと思うの?俺たちだって最初から、あんなふうなやり方だったわけじゃないんだぜ?さっきも言った通りあいつ孤立してるし……」


黒木真白「それは私たち素人じゃどうしようもないことだわ。それで無理やり矯正しようとして、今日みたいになったら本末転倒じゃない。どちらにせよあの子かあなたたち……ううん、どちらもがひどく傷つくことになる。それこそ取り返しがつかないわ」


やんちゃそうな少年「俺たちは指をくわえてみてるしかないっていうのか?」


黒木真白「あの子のことがどうでもいいならそれでも……むしろそのほうがいいんじゃない?」わざといじわるな言い方をする。


とりまきっぽい少年「どうでもいいなら、こんなことするわけない!……でしょ」さすがにこれには我慢できなかったのか、さっきまで黙っていたもう一人の少年が声を上げる。


やんちゃそうな少年「ボロ布いつも持ち歩いてるのは気にくわないけど、あいつがいつも一人でいるのも気にくわないんだよ」


黒木真白「(はぁ……小学生男子ってそういうところあるわよね……フィクション以外だとあまり知らないけど)だったら、あなたたちがそばにいてあげればいいじゃない。理解はしなくてもいい。ただそういう部分もあるって割り切れればいい。その他の部分を見て、仲良くしたいって思うなら、仲良くしてあげればいい。いままでたくさん見てきたんでしょ?……まあ、今日はあんなことになってしまったけれど、それは私がちゃんと言い聞かせて、あの子も納得してくれた。間違いに気づいてくれた。あなたたちも、もうあんなことしないでしょ?」


とりまきっぽい少年「それは、まあ」


やんちゃそうな少年「うん……でも、俺たちだっていつまでも一緒には(来年には中学生になるし)」


黒木真白「そうね。でも今のままじゃ嫌なんでしょ?それにもしあなたたちが仲良くしてるのを見たら、今まで遠巻きに見てた他の子も、それ以外は普通の子ってわかると思うし、仲良くしたいって思う子も現れるかもしれない。あなたたちが仲良くしたいって思った子なんだもの(いい意味で)、なんとなくいい子なのはあったばかりの私にもわかるし。それにそうやって誰かと一緒に過ごすようになれば、あの毛布への依存度も下がっていくかもしれないし」


とりまきっぽい少年「それなら……いいかも……」


やんちゃそうな少年「でも、あいつが俺たちのこと、受け入れてくれないかも……いままでひどいことしてきたし」二人とも、前向きと不安、両方の気持ちが入り混じる。


黒木真白「それは……でも、ちゃんと謝って、もうああいうことはしないって約束して、それで素直な気持ちを伝えれば……可能性はあると思うわ。少なくとも謝罪とその気持ちを伝えることは、互いのためになると思う。それにほら、やらないで後悔するよりっていうじゃない。私も一緒に行ってあげるから」


やんちゃそうな少年「そうだよな……」


とりまきっぽい少年「うん……お願い……します」


黒木真白「そうこなきゃ。うん、任せなさい。あ、でもちょっと待っててね」そういうと、一人で先におとなしそうな少年のところへ向かい、


――


黒木真白「あの二人が君に謝りたい。そして伝えたいことがあるって言ってるの。信じられないかもしれないけど、聞いてあげてくれる?嫌なこと言ってきたら私がちゃんと守ってあげるから」おとなしそうな少年に了承をとる真白。


おとなしそうな少年「お姉さんがそういうなら……」少し不安ながらも首を縦に振る少年。


ダークネスブラック「(まだなんかするつもりなら、あたしが黙らせてやるよ)」


ライトニングホワイト「(……あの二人が素直に謝るなんて思えませんが、それがあの真白さんの考えならきっとうまくいきますよね)」


――二人の謝罪の後少しばかり話し合う少年たち、そして


おとなしそうな少年「(誰かに想われるだけじゃない、あの二人も誰かのことを想える人だった。見ようとしなかっただけで僕のことを考えてくれていたんだって。やり方は嫌だったけど、それはうれしかったから……外ではずっと一人だと思っていたから)これから、よろしくね」


少年二人の心からの謝罪と素直な気持ちを知ることができたおとなしそうな少年は、快くとはいかないまでも、それを受け入れた。


――公園の向こう側の影


???「やっぱり真白先輩はすごいです……私はあの子の気持ちよく分かるのに、年下の男の子相手でも止めに行けなかった。それをあんな怖い怪人相手に立ち向かって、そしてあの三人を仲良くしちゃうなんて……私も誰かを助けられるようになれたらな……」


――数日後


下校途中、あの公園の前を通りかかった真白が見たのは、あの三人の少年と他に数名の男子が一緒に遊ぶ姿だった。おとなしそうな少年は、いまだ毛布を手放してはいなかったが、誰もそれを気にすることはなく、彼らの表情はただただ楽しそうだった。


ライトニングホワイト「やっぱり真白さんはすごいですね。まさかあんなふうに仲良くなれるなんて。最初はすごく険悪でしたのに」たまたま居合わせた(あるいは気になって見に来ていたのか)ライトニングホワイトが、真白に声をかける。


黒木真白「小学生男子だとよくあることなんじゃないでしょうか?素直じゃないだけなんですよ(『ふたまほ』二十三話もそんな話だった……あれが女子だったり、男子でも中学生、高校生だとそうはいかなかったかもしれないけれど)」


ライトニングホワイト「そういうものでしょうか……私は真白さんの処置がよかったからだと思います」


黒木真白「私はそんな大それたことはしてないですよ。もともとあの二人だって、やり方を間違えてしまっただけで、あの子のことを思ってやっていたわけですから」


ダークネスブラック「だからと言って許せることではないが、今のあ奴らの関係を見れば、あの二人があの童のことを考えてやっていたことは確かだったのであろうな」どこからか現れたダークネスブラックが会話に混ざる。


黒木真白「あなたたちも話し合えば分かり合えそうな気はしますけれどね」


ダークネスブラック「何を言うか。確かに今回は意外なことがあまりに多かったが、断じてそれだけはないといえるぞ」


ライトニングホワイト「ええ、この人のことなんてわかりたくもありませんし」


黒木真白「そう……(でもきっといつかは、そうなれるといいわね)」

次回予告「パンダちゃん(とホワイトとブラックとナレーション)がいろいろ説明してくれます」

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