Ep.1普通の女子高生、光の執行者と闇の解放者にスカウトされる。
女子高生「私、黒木真白!普通の女子高生!うーん、とくに言うことないわね……」
ナレーション「とりあえずやらせときました」
――私立知床高校保健室。
黒木真白「(そろそろ、四時限目終わるわね。ちょっと早いけれど、購買行こうかしら。いつもメロンパン売り切れちゃうし。どうせ端からサボりだし、ズルにズルを重ねても構わないわよね……だいたい一時限目の体育と四時限目の体育はなしよね。朝は眠いし、昼はおなか減って何もできないわ。なんにせよ持久走だけはあり得ないわ……だから私が悪いわけじゃないのよ……とりあえず起きましょう)」ベッドに横たわるちょっとけだるそうな真白。
???「お主。授業をサボるだけでなく、それを利用してメロンパンを独占しようとまでする。 そしてすかさず自己正当化の流れ。なかなか見上げた精神じゃ。そんなお主を見込んで力を授けたい。我と契約して、闇の戦士になってはくれぬか?」黒衣をまとったミステリアスなお姉さんがどこからともなく表れ、そんな彼女に話しかける。
黒木真白「(なにこれ……夢かしら?変な夢……早く起きなきゃ)」
???「夢ではないわ。我はダークネスブラック。闇の解放者である。人々の心を窮屈かつ独善的な束縛から解放し、心から幸せにすることを目的としておる。そなたにぜひ力を貸してほしいのじゃ」
黒木真白「(もったいないわ。変なこと言わなきゃ美人なのに)あーはいはい。人々を幸せにするんですね。それはとても素晴らしいことだと思います。でも今は急いでいるので、サクッと済ませてもらえますか?それもと後でお願いできますか?(まあただの冗談というか妄想でしょう?)」
ダークネスブラック「了承してくれるということじゃな。ならば、この黒熊さんジュエルを受け取るがよい。あとはその時が来れば勝手に力が解放されるゆえ、その力を好きに使えばよい。では後はよろしく頼む、期待しておるぞ」
黒木真白「あー、はい、わかりま……もういいんですか?(意外と早く引いてくれたわね。こういう人ってしつこそうなイメージあるけれど、まあよかったわ)」
ダークネスブラック「ああ、もうよいぞ。お主が手短にといったのであろうが……ではな」
黒木真白「はい。では……メッロンパン~メッロンパン~」鼻歌交じりで保健室を後にする真白。
ダークネスブラック「(ふっ、この星はぬるいな。大抵怪しがったりめんどくさがったりして受けてくれないんだよな。ミニジュエルのほうはともかく)」
――放課後
少女「うぅー。見つからないです……私のはちみつボトル……ぐすん」道端で何かを探している少女。
黒木真白「あなた中等部の生徒よね。どうかしたの?」そんな少女に心配そうに話しかける真白。
少女「(高等部の先輩?)あの……落とし物をしてしまって……」急に声を掛けられ、戸惑いながらも応答する少女。
黒木真白「どんなもの?大きさや形、色とか。大切なものみたいだし、探すの手伝うわ」
少女「本当ですか……?ありがとうございます。手のひらサイズのくまさんの小瓶なんです。はちみつが入っているので、黄金色?です」
黒木真白「(はちみつ美味しいわよね)このあたりでなくしたのね?」
少女「……すみません。どこで落としたか、よくわからなくて。最後に確認した時から失くしたのに気付いた時までに行った場所を探しているんですが……ごめんなさい」
黒木真白「あやまらなくて大丈夫よ……(いじめとかでもなさそうだし、ひとまずは安心ね……)順番に探すのもいいけれど、どこで何をしたかとか教えてもらえるかしら?」
少女「……?えっと、六時限目の体育の時に、鞄から体操服を取り出したときは鞄に入っていたんです。そのあと掃除のときも持ち出してないのでたぶん教室にあったはずです。そのあとHRがあって、下校しました。おうちではちみつ食べようと思って鞄の中探したら、見当たらなくて……それで帰り道から探しています」少し不思議そうにしながらも、その間の出来事を説明する少女。
黒木真白「そう……(は!)体操服を取り出したときに、一緒に鞄から取り出さなかった?」少し考えた後、何かを思いついた表情で少女に質問をする真白。
少女「うーん……あ、はい。体操服の上にあったので」
黒木真白「そのあと、あるいは授業の後、鞄にしまった覚えはあるかしら?」
少女「……覚えてないです。もしかしたら、体操服だけ片づけたかもしれません……でも掃除の後机の上には何もなかったです」
黒木真白「じゃあ、その時になくなったのかもしれないわね。もしかしたら、掃除のときに机の上にあったのが、何かの拍子で転がって、それを誰かが拾って、どこかに置いたとか、先生に届けたとかかもしれないわね」
少女「!掃除に行くとき急いでいたので、机の上に置いたままだったかもしれません。机の移動もあるのでその時に落ちてしまってもおかしくないです」
黒木真白「だったら、まだ教室のどこか、教壇とか、ロッカーの上とかにあるかもしれないわ。なかったら、担任の先生に話を聞いてみてもいいかもしれないわね。私はしばらく中等部までの道を探しているから、いっていらっしゃい」
少女「はい。ありがとうございます」
――
少女「せんぱーい。ありましたー」道端で探し物をする黒木真白のもとへ笑顔で手を振りながら駆け寄る少女。
黒木真白「それはよかったわね」ほっとした表情で返事をする真白。
少女「はい。先輩のおかげです。本当にありがとうございました」うれしそうな声でお礼を言う少女。
黒木真白「いいのよ。それに、さっきといまのあなたの表情を見比べれば、それがとても大切なものなのはわかるわ。見つかって安心している、うれしそうなあなたを見たら、お手伝いが出来たこと、解決できたことを私もうれしく思うもの」
少女「はい。安心です。うれしいです。……これ、おばあちゃんがくれたんです。小さいころいつも一人でいた私が寂しくないようにって。それからずっと一緒にあったのもあって、ないとちょっと寂しくなっちゃいます。おばあちゃんとの絆でもあるので。あと、はちみつも安心する味なんです、それはちょっと恥ずかしいですけど」
黒木真白「可愛いじゃない。それに私も甘いものは好きよ。……でもいい話ね。きっとおばあさんも、あなたがそれを大事にしてくれてるのうれしく思っているわ。そして、いつもお空で見守ってくれているわ」
少女「……ごめんなさい。おばあちゃん、まだ生きてます(隣町に住んでいるのでたまにしか会えませんが)」
黒木真白「え?あぁそう?ならそれはそれで、というか、普通にいいことよ。うん。まだいっぱい思い出作れるのね。よかったわ」
少女「はい……あの、本当にありがとうございました」
黒木真白「いいのよ。困っている人がいたら助けたいし、誰かが悲しむのは避けたいわ」
少女「すてきな先輩です」
黒木真白「黒木真白よ。高等部一年A組。何かあったらまた頼って頂戴」
少女「蜂谷糖子です。中等部二年B組です。ありがとうございます。よろしくお願いします」
黒木真白「蜂谷さんね。ええ、いつでもいらっしゃい。それじゃあまたね」
少女もとい蜂谷糖子「はい。それでは(すてきなお姉さんです)」
――少し歩いた場所
黒木真白「(かわいらしい女の子だったわ。何度も丁寧にお礼言ってくれたし。あと可愛いリボンで髪を結ってたのが高得点ね。……可愛いリボンで髪結ってる美少女!?今何時……『ふたまほ』始まっちゃってるわ……まぁ、録画してあるしいいけれど)」
※『ふたまほ』とは火曜日四時半から放送しているアニメ番組『ふたりは魔法探偵』の略称である。現在、二年目。ちょっとドジだけど健気で頑張り屋の赤坂陽奈(通称ひなちゃん)と身体能力抜群なクールキャラだけどよく絆されている蒼井幸子(通称ここちゃん)の新人魔法探偵コンビが魔法がらみの事件を解決する物語を軸とした一応変身ヒロインもの作品。メタ発言となるがあくまでも劇中劇である。
――おうち
黒木真白「ふぅー。ただいま、今日も一日疲れたわ(誰もいないのだけれど……)」玄関の鍵を開け、靴を脱ぎながら独り言を言う真白。
???「おかえりなさい」
黒木真白「あ、いたのね。ただいまー……ってだれ!!?って、あ、おうち間違えました?騒がせてごめんなs(どう見てもうちの玄関よね?)」予想に反して返ってきた声に振り向きながら応えようとする真白。しかしそこにいたのは白衣(白い衣という意味で)をまとった不思議な雰囲気の女性だった。
???「ここはあなたのおうちであっていますよ」
黒木真白「やっぱりそうよね?よかったわ……じゃなくて、あなたはいったい……警察呼んでもいいのかしら?」家を間違えていないことに安堵し、同時に不審者が家にいることに戸惑う真白。
???「え、あ、ごめんなさい(まさか、私が、この私が、犯罪行為?をはたらいてしまうだな
んて……最近気が抜けてきているのかも……)」慌てるというよりは、自分の失態に落ち込むような不審者?。
黒木真白「どうやって家に侵入したかはわからないけれど(鍵はかかってたし)……とりあえず事情を聴きます。通報するかはその後決めます」
???「あなたやっぱりいい子ですね、ぐすん。……こほん、先ほどの行いは見ていました」
黒木真白「先ほど……ですか?私なにか悪いことを?(いや、思い当たる節は結構あるけれど……)」
???「その反対、よい行いですよ。具体的に言えば、道端で少女の探し物を手伝ってあげたことです」
黒木真白「あぁ、それのことですか。当たり前のことをしたまでですよ」
???「いえ、決して当たり前ではありません。人を助けるのはなかなか難しいことです。面倒に思ってしまったり、声をかけるのを躊躇してしまったり。特に探し物は、いつ見つかるか、そもそもちゃんと見つかるのかさえもわからないですし。それに、好きなテレビ番組を見れなくなる可能性もあったのに」
黒木真白「そういうことはあるかもしれないわね……でもテレビ番組に関しては録画していたし気にしてなかったわ」
???「いえ、私が前いた星での話ですが、たとえ録画したものや円盤化されたものを後程見ることができたとしても、リアタイでみれないことへのショックは大きく、心や楽しみの損失も大きいと聞いたことがあります」
黒木真白「(星……?地域とか国とかの言い間違い?)そういう人もいるみたいですが、私は実況とかには参加しませんし、CMがもどかしくなってしまうので、録画派ですね。録画なら聞き逃しとかすぐ見直せますし。まあ、前回の続きが気になるので、見れるならリアタイで見ますけどね(そういえば、この人すごい格好してるけど、お仲間かしら……いや私は、子供向けの変身ヒロインものしか見ないのだけれど……)」
???「そうですか……そういう人もいるんですね……って、ごめんなさい話がそれてしまいました」
黒木真白「私も、なんかそんな気がしていたわ(半分程度は、お仲間探ししているアグレッシブな人が最初からその話にもっていこうとしていた可能性も疑っていたけれど)」
???「とにかく、あなたは自分の事情そっちのけで人助けができる素晴らしい人です。それに、
あなたの起点のおかげで、素早く解決していました。まるで魔法探偵のようです」
黒木真白「……私を待っている間、テレビ見てました?」
???「うっ。この星の基礎知識はある程度学んであります。だから知っているだけです。それより、そんな素晴らしいあなたにぜひ、私の力を授けたいと思います。私と契約して、ぜひ光の戦士になってください」
黒木真白「(……なんか、似たようなこと昼にもあったような……あー、なんかおぼろげに……寝ぼけてたし、メロンパンのことばかり考えてたから思い出せないわ)仮に光の戦士になったとしたら、どのようなことをすればいいんですか?」
???「そうですね。悪に脅かされている人を助けてあげてほしいです」
黒木真白「……さすがに、それは私には荷が重いかと。ただの……むしろ体力などは平均以下の女子高生ですし」
???「そこは問題ありません。光の戦士になれば、体力や筋力は大幅に強化されますし、会得していないはずの体術なんかも自然と扱えるようになります。魔法的な力もいくらかは使えるようになるはずです」
黒木真白「いやでも、私もそれなりに忙しいですし……(合法的に学校サボれるならいいのだけれど……)」
???「そこはたぶんなんとかなります。あなた以外にも何人か光の戦士が生まれるはずなので協力することもできますし、どうしても忙しいときはほかの人に任せることもできます。……詳しくは言えませんがこれから悪の心にのまれる人が増えると思います。それに巻き込まれて不幸になる人も多数出て来ると思います。もちろん本人も不幸になるでしょうし。もしかしたら、あなたやあなたの家族、友達も巻き込まれてしまうかもしれません。彼らは、ただの悪人と違い、闇の力を得ているので一般人では解決するのは難しいです。それを解決できるのは光の戦士だけなんです。私は先ほどの一件を見て、ぜひあなたに光の戦士になってほしいと思ったんです」
黒木真白「(闇の力……どこかで聞いたような……思い出せない)……でも、そうですね。家族や友達、関係ない人でも誰かが不幸になることは、避けられるのなら避けたいことですね。もし、だれかが抑えられたはずの悪の心にのまれてしまうのなら、それも避けたいです(私も、軽いものだけど抑えられずによく後悔しているし……しているときはしているんです。うん)私の力がどれほど役に立つかはわかりませんが、わかりました、協力させてください」
???「本当ですか?助かります。やはりあなたは私が見込んだ方です。真白さまと呼ばせてください」
黒木真白「それはちょっと……(あれ、私名乗ったかしら?)」
???「はい、ごめんなさい……こほん。ではこの白熊さんジュエルを持っていてください。必要になれば力が解放されるはずです。その力で多くの人を救ってあげてください。最後に、名乗るのが遅くなってしまいましたが(忘れてました……)私の名前はライトニングホワイト。光の執行者です。では、よろしくおねがいします。さようなら」
黒木真白「はい。さようなら。……このジュエルどこかで……」鞄の中をあさる真白。
黒木真白「色は違うけど……これだわ。たしか、お昼に、変なお姉さんに……思い出した!ダークネスブラック!さん。私彼女と契約して闇の戦士になったんだったわ……で、今、ライトニングホワイトさん(名前が真逆!)と契約して光の戦士にもなっちゃんだ……私どうすればいいの?二人の連絡先とかも知らないし……きっとこれってまずいわよね………………まあいいか。今日は疲れたし。『ふたまほ』みて、それから落ち着いて考えましょう」実際疲れていたのもあるが、先延ばしにしがちなのは普段からの真白の悪い癖である。
――数十分後
黒木真白「『謎は全て解けました!悪い子にはお仕置きです。マジカルチェーンジ』……はぁ、ひなちゃん今日も最高だったわ……私もお仕置きされたい……(ひなちゃんみたいな妹がいれば毎日頑張れるのに……)」
黒木真白「……でもやっぱりここちゃんもいいのよね……なんか黒幕っぽいのが気になるけれど……二人は仲良しのままで終わってほしいわ……」
黒木真白「……さて、宿題しましょっと……いつもは後回しにするんだけど……」
――さらに数十分後
黒木真白「宿題も終わってしまったわ。こんな時に限って量が少ないのよね……」
――さらにご飯とお風呂も済ませ
黒木真白「本格的にやることがなくなってしまったわ……今日は早めに寝ましょうか……きっと朝起きたらすべてが夢だったってなっているわ……きっとそうよ……おやすみなさい。ぐぅ」現実逃避も真白の悪い癖だが、今回ばかりは仕方がない気もする。だって現実味がないから!
次回予告「事件が起こります。そして真白が解決します。もちろん変身もあり」