02
「うっ……、ここは……」
目が覚めると、俺は布団で横になっていた。
俺が起き上がり、目を凝らすと
「あ、起きましたか?」
部屋の奥から、エプロン姿の少女が、俺に声をかけた
「……ここは、どこだ?」
「私の家です。あなたは、草原で倒れてたんですよ、覚えてませんか?」
倒れてた……そうだ! 思い出した!
あのルシファー達に裏切られて……それでその後……なんかの石版に魔力をこめたんだっけ……
周りを見渡してみると、そこは全面レンガで出来た中々オシャレな家で、窓の外を見てみると
商売などで、にぎわっていた
ベッドから立ち上がろうとした時……
「いてっ!」
自分の体は包帯をグルグル巻きにされていた
全身に痛みが走って、思うように動けない
「ダメですよ! あなた重傷なんですから、ちゃんと休んでください。」
「……あぁ、そうだな」
「今ご飯の準備してますから、待っててくださいね。」
その少女は、こちらに笑みを浮かべながら、キッチンへと向かった。
俺としては、早くあの裏切った野郎どもに復讐をしたいのだが……
ベッドに腰を掛けると、横になんやら文字が書かれた紙が置いてあった
「これは……『新聞』か?」
ちょうどいい、人間界が今どのような状況なのかを知っておく必要があるな
新聞を広げて、そこに一面アップで書かれたものは……
【魔王軍の攻撃が苛烈化!】
ちっ……ルシファーの奴め、もう軍を進行させやがってんのか……
そして、新聞の端っこの日付を見てみると……
「ん? エイジX250年? ……あれ? 今確か
X150年じゃなかったっけ?」
なんだこの新聞日付間違えてんのか? 間違ってんのか?
新聞の日付を100年も間違えるとは、風上にも置けないぞ
新聞を閉じて、次に目に入ったのは
「ええと……これは確か……『ラジオ』という物だっけ?」
俺は人間界には、子供の頃から興味があって、
本などを使って、一生懸命調べてたっけ
このラジオは、生放送で情報を伝えてくれる
機械だった気がする
「スイッチは……どこを押すんだ?」
使い方までは分からないので、ポチポチボタンを適当に押していたら……
『おはようございます』
「うおっ!?」
驚いて声を出してしまった
『エイジX250年、3月2日、朝のニュースを始めます』
……おいこのキャスターエイジX250って言わなかったか?
まさか本当に……?
「ご飯できましたよー」
あの少女がおたまを持ちながら俺に声を掛けてくる
俺は痛みをこらえて、リビングらしき部屋に行く
「じゃあ座ってくださいね、今すくいますから」
これは……シチューか? 魔界のシチューみたいに紫色でもないし臭くもない、いやむしろいい匂いだ
俺は椅子に腰を掛けて、少女が持ってきたスプーンを持つ
「じゃあ……いただきます……」
「どうぞ、召し上がれ〜」
シチューをすくって、口の中へ運ぶ
……クソうまい
こんな料理食ったことないぞ
なんだこれは? この娘の料理の腕がピカイチ
なのか、城で作らせるスケルトン達の料理が激マズなのかは、定かではないがこれは、美味しい。
だって、あのスケルトン自分の骨をダシに使うからな……やめろとは言わんが気味が悪い
「ねぇ、お兄さん名前は?」
名前……か、ここで本名を教えると俺が魔王だってことがバレかねないが……まぁ魔王の名前を知ってるやつなんて早々いないだろ
「ガルディア・グレイだ」
「へぇ〜、じゃあガルさんって呼んでいい!?」
なっ!? ガルさん……だと? この魔王の名を短縮して呼ぼうとしてるのかこの娘は……
「……まあいいだろ」
「ありがとー、私の名前はオリビア・クックって言うの! よろしくね!」
やけに元気なオリビアは、立ち上がり何やら剣を磨き始めた。
「なんで剣なんか磨いているのだ?」
「え? ああ、私これでも勇者なんですよ」
「ぶふっ!」
俺は飲んでいた水を吹き出した
ゆゆゆゆゆ勇者だと!? あの人間のくせにめちゃくちゃ強い勇者! 俺はこんな奴に助けられたのか……
「だ、大丈夫ですか? 私もよく言われるんですよ、『女なのに勇者なんだー』って」
……確かに言われてみれば、この娘にそんなにパワーは感じられない
「貴様が何故勇者なのだ?」
「なんかこのパルタの街の有名な占い師さんがいて、その人に勇者の資格があると言われて、王様からこの剣を授かったんですよ」
パルタの街……聞いたことがある
確か『駆け出しの街』とも呼ばれているな
そんな街の占い師が宛になるのかは疑問だな……
よし
「ちょっと失礼する」
「え?」
俺は右目に魔法陣を宿して、オリビアのステータスを見る
……うん、案の定貧弱だな、これでは魔王討伐だなんて、到底無理……いや待て、
オリビアの『素質』というステータスが異様に高かった
素質はレベルアップで貰えるスキルポイントの量やステータスの伸び具合が変わるというある意味一番大切なパラメータと言っても過言ではない
こいつは、この世界が上手く育てられれば人間界の立派な戦力になる
……なのだが、あくまで高いのは素質であって
現在のステータスでは、旅に出ても犬死にする
だけだろう
そんなことを考えてると
『緊急事態! 緊急事態! この街に魔王軍の接近反応あり! この街の冒険者は直ちに正門に来てください!』