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『世界システム』とは4



 どうも最終話です。


 『世界システム』を使った現代社会の捉え方的な事を書き連ねていきたいと思います。


 さて、ここまであえて全てを表記しませんでしたが、歴代の覇権国家を皆さんはご存知でしょうか。

 

 一応私が前話までで話したのは16世紀のポルトガル、スペイン、17世紀のオランダ、18、19世紀のイギリスまでです。


 ちなみにポルトガルは途中、スペインに併合されたため覇権が移っています(スペインのフェリペ2世がポルトガル王位も継承したため)。

 

 ここにもう一つ、20世紀の覇権国家を明記しましょう。これが現代に至るまで、特に重要なものとなってきます。


 20世紀の覇権国家は、アメリカです。


 ここで「おや?」と少しでも違和感を感じた方は『世界システム』をよく理解していると思います。(僕が勉強した時はなんの違和感も感じませんでした。)

 

 思い出していきましょう。

 16世紀、スペイン人がアメリカ大陸に到達しました。この時点で分かるのが、アメリカはその時『周辺』だった、という事です。

 この国は地主はヨーロッパ、作物はアジア、労働者はアフリカから集められた、何一つとして一致しないちぐはぐな国家のはずでした。

 

 それが覇権国家として立ったというのは歴史学上かなり興味深い事だとか。(私はそこまで理解できません)


 教えを受けた予備校の先生の言葉を借りれば、

 『AIが人間を支配したのと同じくらい』の異常事態らしいですね。

 これの補足はほんの少しだけあとにします。


 

 さて、こうして20世紀まで覇権国家が出揃いました。

 

 が、ここで少し不思議に思いませんか?

 そもそもなんで覇権国家が移り変わるのか、と。


 たった百年で移り変わるのなら覇権って言うほど強くないんじゃないのか?

 エジプト王朝なんて数千年続いたんだぞ?


 文系、特に歴史選択の方にはここに辿り着く方もいらっしゃるかと思います。

 確かに、少し短いですよね。長く続いたイギリスでさえ二百年なわけですから。


 しかし実はこれ、全て自然交代ではないのです。

 ちゃんとそれなりの理由があって、覇権国家は替わったのです。

 

 イギリスとアメリカの覇権交代は分かりやすいんじゃないんでしょうか。


 替わったのは20世紀初頭。

 この時期は色々ありましたが、特に大きな出来事はアレですよ、アレ。

 

 そう、第一次世界大戦。


 これが原因でした。

 そう、覇権国家の移り変わりは、戦争によって行われるのです。


 ん?イギリスはその戦争勝ったよな?と思った方。これは歴史の勉強が甘いと言わざるを得ませんね(なに様だよ)。

 中学、あるいは高校の世界史Aでやりませんでしたか?


 『戦死者を多大に出し、戦地ともなったヨーロッパは疲弊し、代わって軍需産業で財を成したアメリカが台頭した』


 まさにこれですね。イギリスも戦地にこそなりませんでしたが、戦争参加国として多大な兵力を投入、失っています。

 そしてなにより、戦争は金がかかるのです。武器作っても金、兵士送るのにも金、プロパガンダするにも金………。

 これで疲弊しない国があったら聞きたいものです。


 そんな訳でイギリスはアメリカに取って代わられました。

  それでは他の覇権国家の移り変わりを表でどうぞ。


 挿絵(By みてみん)


 オランダ独立戦争、英蘭戦争、第一次世界大戦。

 これらが覇権国家の移り変わりを担っていたんですね。



 さて、ここからは本当に現代の話。


 第二次世界大戦後です。

 皆さんはこの時代、覇権国家はどこだと思いますか?


 一気に力を増したソ連?

 あそこは社会主義国なのでそもそも経済面で外に出れませんから、話に入れることができません。


 アメリカがやっきになってソ連と経済を繋げたかったのは『世界システム』的には自然なことですね。

 うまく『周辺』に組み込めたらアメリカの地位は盤石ですから。


 それでは皆さん、ちゃんと考えておいて下さいね?

 少し先の話をしてみましょう。


 前述した通り、覇権国家は戦争によって移り変わります。


 それなら第二次世界大戦後に起きた戦争ではどうだったんでしょうか………?


 注目したいのが、冷戦、特にその煽りを受けて勃発した代理戦争である、ベトナム戦争です。

 上の表には???で書いています。


 このベトナム戦争、アメリカかま対外戦争で初の敗北を喫したものであります。


 覇権国家が戦争に負ける。


 覇権から転がり落ちそうな気配はありますよね?

 ですがそこはアメリカ、覇権国家になんとか縋り付いて離そうとしませんでした。

 もちろん覇権国家のままだからといって弱体化しないわけでもありません。

 戦争で泡食っている間に他の国がその地位を狙って迫ってきていました。

 あな、恐ろしや。

 

 そして、そのうちの一つが日本だったりします。

 例にもよって諸説ありますが。

 

 朝鮮特需の影に隠れがちですが、ベトナム戦争中の日本はちゃんと好景気でした。


 戦争している国以外は儲かるようになっているのが近代戦争ですから。

(ちなみに、このベトナム特需でお隣さんの韓国は世界十位の国内総生産まで昇り詰めています。)



 じわじわ、じわじわとアメリカににじり寄っていたのです。

 まあ結局ひっくり返すまでには至りませんでしたけどね。


 こうして一応今に至るまで、アメリカが覇権国家です。


 ここで私が初めに言った事へと戻ります。

 

 トランプさんは馬鹿だ。

 

 例によって世界システム的に見た場合なので、一概には言えません。(トランプさんが感情的な人であるのは間違いないですが)


 これも案外簡単に分かることで、オランダのグロティウスとイギリスのアダム・スミスを覚えているでしょうか。

 覇権国家は自由貿易を主張する、というやつです。


 関税ゼロの自由貿易は、明らかに『中核』、しいては覇権国家の優位を確固たるものにする存在です。


 未だかつて成功してきませんでしたが、つい一代前までのアメリカ大統領が推し進めていたことがまさにこれです。


 TPP。


 環太平洋パートナーシップ。関税の削減、撤廃を求めた協定ですね。


 日本でも賛成、反対の議論がかなりなされました。


 トランプさんは大統領になってこれを脱退しました。2017年のことです。


 皆様はこれが、どれだけの愚行かお分かりになると思います。


 覇権国家の目標は、自由貿易の実現です。

 関税のない自由貿易が実現すれば、覇権国家は勝手に財産が増えていく(三話参照)。

 『世界システム』の考え方からすれば分かりきったことですね。


 ああ、それなのに。


 トランプさんは自分で自分の首を締めましたね。

 自由貿易の実現が衰退した覇権国家を延命する唯一の方法だったのに。

 アメリカファーストどころか自分の国を見捨てる形になってしまいました。


 こうして歯止めが効かなくなったアメリカは、このあと落ちてゆく一方でしょう。

 経済成長もいつまで続くかどうか。

 


 次の覇権国家は中国かインドか、はたまた……。

 どうなることやら。毎度の覇権交代のように戦争が起きなければいいんですけどね。


 


 さてさて、こうなると今度は日本の食料自給率と発展途上国というものまで説明がつくようになります。


 SNSで無礼極まりない人がたま〜〜〜〜に、


 『発展途上国が貧しいのはそこの人間の頑張りが足りないからだ』


 みたいな目玉の飛び出ることを言っていたりします。

 日本の明治維新期の成長と比べた言っているのだか知りませんが、的を外しすぎて笑えてきますね。

 これは当たり前ですが、違います。


 発展途上国、つまり『周辺』が貧しいのは、私達『中核』がそうなるようにさせたんです。


 小学校の頃、社会か何かで日本の食料自給率問題をやりませんでしたか?


 私はその時、「日本の食料自給率は、とっても低くて、良くないです!」みたいなことを言ってたと思います。

 けど、その理由までは深く考えませんでした。

 年代別グラフとか見て「あー、この頃からずっと低いんだなぁ」程度です。


 まあ食料自給率の低い理由は分かりきっていて、日本が『中核』だからです。


 『中核』は工業国です。

 結果農業が疎かになって他国から輸入するのは当たり前なんです。(もちろん交渉材料に使われてぎゃふんということもあったりします。)


 イギリスの帝国期でも調べてみてください。今の日本より食料自給率が低いですから。


 まあそんな訳で。

 少し飛びましたが、発展途上国が未だに発展できないのは私達『中核』向けの食糧を作っているというのが一端にあります。


 彼らが『中核』の仲間入りをしたら飢えるのは私達ですよ。

 ですが今は、『中核の仲間入り』。これがひどく難しい。


 アメリカの話ですが、あそこは元々『周辺』でした。

 が、早い段階で大きな土地を活用して工業化を推し進め、『中核』の仲間入りをしました。

 これは日本も然りです。


 昔は『独占』に似た悪習こそあれど『周辺』が多く、需要がまだまだ高かったのでそれほど『中核の仲間入り』が難しくありませんでした。


 しかし!

 今は!?


 例えば発展途上国を一つあげてください!

 例えば……南米のガボン!


 ここで工業を興したい!

 なにを作ろう!?


 「それじゃあ売れるもの、4Kテレビを作ろう!」


 ………作れますか?


 技術も材料も、技師すらもない。

 そんな国がいきなりものを作ったって無理なんです。


 別に時計でもなんでも、もっと作りやすいものでもいいでしょう。


 さあ市場に出しました!

 売りたい!売れるといいな!


 いきなりS◯NYの最新型と対決!


 ………勝てますか?


 今の発展途上国はまさにこの状態。

 勝てっこないんです。


 ボランティアとして貧しい国に行って、井戸を掘った。家を建てた。すごい。半端ねぇ。


 これで人は救えます。

 けど、国は救えません。いつまでたっても途上国のままです。


 救いたいんなら『世界システム』から外して、『地域経済』を復活させましょう。すくなくとも国内の格差は小さくなります。


 けど日本の、『中核』の食料は途絶えますけどいいですか?

 代わりに自国の民衆が死ぬけど良いんですか?





 ここまで、『世界システム』で現代の社会問題が二つも説明できてしまいました。

 形だけですが、解決策も。



 一話で述べた通り賛否あるようですが、この学説はかなりの有用、有効性を持っていると思われます。


 私は口ばかりで、実際にはなにもできないクズです。本当に海外で活躍されている方はこの文章を鼻で笑って頂いて結構です。

 こんなものはただの極論、詭弁の集約ですから。

 

 ただ、なにも考えずに社会問題どうこうを語る方には『世界システム』の片鱗だけでもここから感じていただければ幸いです。

 無知は寂しいですよ、世界についていけなくて。





 浅学ながら、ここまで『世界システム』の説明でした。

 繰り返しになりますが、ここに述べたものはあくまで『世界システム』を基盤とし、さらに僕の主観の混じった考えとなります。(予備校と学校で学びましたが、殆ど予備校の先生の知識です。学校ももうちょっと深く教えて欲しかったなぁ……)


 お前の偏った知識じゃ怖いんだよ、信用できないんだよという方、あるいは興味が出たよ、って方は

 川北稔先生の『世界システム論講義』をお読みください。ウォーラーステインさんの言いたいことを元の論文に比べてだいぶ軽くし、分かりやすくしたものです。


 それではここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。




 本業のハイファンはまだ先の投稿になりそうです。 

 新作を二十話くらい書いたのですが、表現が下手くそ推敲、書き直しが四週目に突入したからです。あしからず。

 



さいならー。

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