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価格革命から世界の拡大


 価格革命。

 銀の大量流入により物価が跳ね上がったことをさします。

 これはヨーロッパ中に衝撃を与えました。


 みんな大好き中世の領主様は、農民から入る固定された地代で生活しています。

 地代はいわゆるショバ代です。

 この土地貸してやってるんだから金払えよ?的なやつです。


 この地代、『固定金額』というのが曲者で、インフレだろうがデフレだろうが領主に入ってくる金額は変わらないんです。


 年に千円の地代を回収してる領主は、どの年でも千円の収入です。

 しかし百円で買えていたものが価格革命で三百円になりました。

 これは苦しい。

 

 バブル景気ではサラリーもそれなりに上がりましたが、彼ら領主は給料据え置きです。

 一気に生活できなくなります。



 さあ、あなたが領主様ならどうしますか?



 簡単なのが、地代を上げること。

 もう一つ取れるのが、農民を農奴に落とすこと。



 残念ながらこの二つをとった西ヨーロッパの領主は、だいたいが失敗しました。


 西()ヨーロッパは農民がそこそこの地位を持っていたため、反乱を起こされます。


 しかもこれ、鎮圧したら勝ちでもないのです。

 負けたら殺されますが、勝っても反乱軍=農民なので、農民を殺したせいで人手不足。荘園は崩壊してしまいます。

 

 それならどうするか。


 ここで思い切って商業、工業に転換するのです。

 地代で稼げないなら作物より売れるもの作ればいいじゃない〜ってことですね。


 そうそう、東ヨーロッパは商、工業化が進みません。


 これは未だに領主達の発言力が強く、農民が弱いためです。

 東欧の農民達はあわれ、家計の苦しくなった領主達の作った制度、『再版農奴制』により農奴になってしまったのです………。




 それではここで世界システムの考えをぶっ込みましょう。


 今現在、西欧は商工業が発達しています。

 この商工業主体の国々を『中核』と呼びましょう。

 イギリス、オランダ、スペイン、ポルトガル、フランス……この辺りでしょうか。


 次に農業中心の東欧、こちらを『周辺』と呼びましょう。

 これには東欧だけでなく、農業主体国に()()()新大陸や植民地も含まれます。


 発展しているのが『中核』、農業主体なのが『周辺』です。

 世界をこの二つに分けて考えるのが『世界システム』の大きな特徴になります。

 

 さらにこの『中核』の中の一番強い国家、これを覇権国家(ヘゲモニー国家)と言います。

 小説(ラノベ)中毒の方には幼◯戦記なんかでお馴染みではないでしょうか。僕はあの本、大好きです。お好きな方はぜひ一緒に語りましょう。

 



 ……閑話休題。




 さて皆さん、『中核』と『周辺』が出てきたわけですが、この二つはどちらの方が多いでしょうか。

 これは『周辺』ですね。『中核』より圧倒的に母数が大きいんです。

 



 それでは考えてください。


 『中核』が工業製品を作りました、売りましょう。

 『周辺』が農作物を作りました、売りましょう。


 この二つ、どちらが高く売れるか分かりますか?


 当然『中核』の工業製品ですよね。

 周りの『周辺」は『中核』よりたくさんあって、いくらでも買ってくれる訳ですから。作れば売れます。


 逆に『周辺』の農作物は買い叩かれます。

 だって周辺自体たくさんありますから。一カ所高いんなら他の安いところを探せば良し。それで解決です。


 『中核』に美味しい貿易ですね。


 こうして『中核』と『周辺』の格差が少しずつ広がります。

 

 貿易をすればするほど儲かるのは『中核』だと思っていてくれればいいです。


 が、これに待ったをかける手段が一つ。


 関税です。


 貿易時の関税は、二つの格差をなんとか広げないための(くさび)なのです。


 覇権国家や『中核』からしたら、これは目の上のたんこぶです。

 これがなければ自国は貿易上、圧倒的な力を持って発展することができますから。


 結果、自国を強くしたい覇権国家は関税の無い自由貿易を唱えます。

 そんな提唱者のうち、二人程ご紹介しましょう。


 まずは17世紀の覇権国家、オランダのグロティウス。

 『国際法の父』や『自然法の父』と呼ばれ、著書『戦争と平和の法』は大学受験でも必要な、重要な書籍です。

 そんな彼の書いた本の一冊が『海洋自由論(自由海論)』。


 簡単に言えば、「海は誰のものでもねえ!」です。誰でも通っていいし、誰が商売に使ってもいい。海は自由なんです。


 一見万国の平等をうたっているように見えますが、少し知識を持った状態だと微妙に見えませんか?


 これを『世界システム』的に解釈したらこうです。


 「海が自由になったらオランダの天下だぜ、ヒャッハー!は、け、ん!は、け、ん!オ、ラ、ン、ダ、は、け、ん!ヒャッハー!!」


 この頃に覇権国家なんて考えは勿論ないですし、あくまで私の想像です。ほんとうにグロティウスがこう思っていたかは知りません。

 ですがこういう考え方もできるんだな、程度に思っていて下さい。

 

 それではもう一人行きましょう。


 こちらはアダム・スミス。

 有名なイギリスの経済学者ですね。

 イギリスは彼の生きた18世紀、英蘭戦争に勝って覇権を握りました。


 アダム・スミスは生涯に二冊本を出しており、その一冊が『国富論』です。『神の見えざる手』なんてのは理系の方々でも一度は聞いたことあるような言葉じゃないでしょうか。


 ちなみに僕は中学の頃、『神の見えざる手』とディエゴ・マラドーナの『神の手』をごっちゃにしてました。

 ………どうでもいいですね、はい。

 


 えー、どこまで話したかな。(←アホ)


 そうそう、『国富論』です。

 こちらはグロティウスより明確で、『神の見えざる手』でも分かるように、『自由放任主義』を唱えています(細かく言えば『自由競争主義』ですが)。

 必要最低限の監視下(法整備下)では、自由に貿易が行われるのが結果として国を富むことに繋がる。というものですね。


 『必要最低限の監視』は一つの社(領主?)による市場の支配、いわゆる『独占』を防ぐということを意味します。


 しかしこれにはあまり意味がないのが分かるでしょうか。

 そもそも『中核』の国が少ないため、初めから商品は『中核』の独占状態なのです。


 例えばですが、現在も人口急増中のインドに携帯会社が一社しかないとしましょう。もしそれが二社になったら、はじめにあった一社の売り上げはどうなりますか?


 おそらく二社になったから単純に半減、とはいかないでしょう。

 ほとんど売り上げは落ちないはずです。


 なぜなら、需要があるから。

 売り捌いても売り捌いてもまだ欲しい人がいるから、生産したのが全部売れる。

 品薄にはなれど、売り上げは一向に落ちない。

 昔の『中核』と『周辺』の経済はまさにこんな感じだったわけです。


 少しずれましたがアダム・スミスの考えを『世界システム』的にまとめましょう。

 

 「おいお前ら、好きなだけ貿易していいぞ!俺が自由貿易訴えといてやるから!一応本には独占禁止、なんて書いたけどもともと俺らの独占状態だしな!あんま関係ねぇ!ははは、笑いが止まんねぇよ!『周辺』から搾れるだけ搾り取って、ずっと覇権に居座ってやるぜ!は、け、ん!は、け、ん!」


 こんな感じ。

 例によって私の失礼極まりない想像です。

 アダム・スミスさんが世界のこのシステムに気付いて自由貿易について書いたのかは知る由もありません。




 まあここまで語りまして、どれだけ覇権国家にとって自由貿易が重要だったかお分かり頂けたでしょうか。


 恐らくですが『世界システム』という理論の完成は全世界の関税撤廃、自由貿易によって成されるもので、20世紀の覇権国家はこれを実現しようと少し前まで奮闘していましたね。

 これは四章で話します。


 こう考えてみると日本が江戸時代に結ばされた不平等条約なんてまだマシだったのかもしれませんね。

 その頃の欧米人が『世界システム』に気づいてなくて助かりました。







 ここで二話終了〜〜。




 さて三話では少し短めに、【超簡単!『周辺』国家の作り方!】をご紹介したいと思います。

 一応四話で完結予定です。



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