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あやかし氷室探偵所。  作者: 友坂 悠
エピソードワン。
2/10

氷室探偵所の美咲と申します。

 ここはあやかし専門の探偵事務所のはず。そんな、猫探しなんて。

 そんなふうに僕が思っていると耕助さん、

「美咲君、この依頼、君が担当してみないかい?」

 って。


 うーそれなら。

 耕助さんにさせるよりまし。

 もしかして、断りきれない系の依頼だったのかなぁ?


「はい。わかりました。依頼内容を教えて貰ってもいいですか?」

 なるべく平静を装ってそう答えた。

 ほんとうはこんな猫探し、うちの仕事じゃないのに、ってちょっと怒ってるけど耕助さんにはそんなこと微塵も感じさせたく無い。


「依頼人は東新町の小村さんっていうお宅でね……」




 うーん。到着したけどこれってすごいお家だよね。

 門がでかい。

 こんな街中にこんなおうちまだあるんだ、って。感心して。


「こんにちわ」


 反応ないか。


 木でできた大きな門。羅生門を連想しちゃうけど、実際そこまで大きくはないだろうけど。

 ほんと、門って漢字がそのまま顕現したかのような立派な門だ。


 インターフォンも付いてない。どうやったら中に通じるんだろう? そう思いながらひたすら「こんにちわー!」って叫ぶ。


 ギギギ、って音とともに空いたのは大きな扉の横の小さな扉だった。


 ああ、ここも開くんだ、と、思っちゃったのはないしょ。

 模様の一部だと思ってたし。


 出てきたのはおばあちゃん、この人が依頼主?


「どちら様かな」

 しわがれた声。少し怖い。


「氷室探偵所の美咲と申します。本日は依頼の件でお伺い致しました」

 名刺を出しながらそう挨拶すると、


「ああ、奥様がお待ちです。こちらへ」


 そう、腰をかがめた女性は手招きをし、僕が入ると同時に扉を閉める。

 がちゃん、と、錠前をかけると先導して歩き出した。


 なんだか閉じ込められたみたい。

 気のせいだとわかってるけど、この門にはそう感じさせる何かがある、そう、僕の中のあいつが警告する。




 奥にある応接室に通された僕は大きなソファーに腰掛けてしばらく待った。


 調度品は古いけど元は高級なものだったんだろうな、って、物の価値なんてわからない僕にもそう見えるくらいの品物ばかりで。

 このお屋敷に住む奥様?の、お金持ち加減がわかる。

 猫を探してくれって話だったけど、それならもっと大手の普通の探偵事務所なら人海戦術でなんとかしただろうに。


「およびだてしてすみません」

 そう奥様がやってきたのは、この部屋に入って30分は経った頃だった。


「いえ。御依頼有り難うございます。氷室探偵所の美咲と申します。早速ですが依頼内容を確認させて頂きたいのですが」


 僕は名刺を出しながらそこまで一気にまくしたてた。

 もう、とっとと話を聞いて帰りたい。そう思って。


「探してほしいのはこちらの猫なんです」


 手元の写真をテーブルの上に出しながら、奥様は語り出した。


「ミケコ、というんです。かわいいでしょう? もう二年になるんですが、この子、いなくなってしまって……。ずいぶん探したんですが見つからなかったのが、先日庭で見かけたとミドリさんが言うものですから、ああ、それならちゃんと探してあげないと、と」


 写真にはかわいらしい三毛猫が写っていた。ただ、もう随分と老猫に差し掛かっているような……。


「おいくつだったんですか? ミケコちゃん」


「いなくなった時で18歳だったので……」


 えーー?

 って、それってもう虹の橋渡っちゃってない?

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