第九十三回 クリスマス(2)
双葉駅から出て歩くこと数分のところに、怪人グッズショップはあった。
ウッド調の一階建てで、その外観は「おしゃれなカフェ」といった雰囲気だ。怪人グッズを販売しているようには見えない。しかし、入り口のすぐ上辺りに『怪人グッズのお店 クァイズィーン』という看板が掲げてあったので、ここで間違いないようだ。
由紀が先に店内へ入っていく。僕はそれに続いた。
「こ、これは……!」
一歩踏み込んだ瞬間、店内の光景に驚いた。
というのも、壁に添って、大量のグッズが並べられていたのである。
木材を積み重ねたようなデザインの壁には、ポスターや掛けるタイプのカレンダーがびっしり。壁が少しも見えないくらい、大量に貼り付けてある。折れ目一つないポスターやカレンダーが壁を埋め尽くしている光景は、もはや、壮観としか言い様がなかった。
そしてもちろん、展示されているグッズはそれらだけではない。
アクリルケースの中に飾られている様々な怪人の人形。木のテーブルに並べられている、独創的なデザインのアクセサリー。
「どう? 岩山手くん。凄いところでしょ?」
「はい! 凄いです!」
欲しいかはともかく、これだけの怪人グッズを並べているのは凄いと思う。
ただ……売れるのだろうか?
「由紀さんはよくここへ?」
「うん! 暇な時とかは来るよ」
「何か買われるんですか?」
「そうだねー……うーん、筆記用具とかが多いかな」
筆記用具まで置いているとは驚きだ。
「あと、カレンダーとかもよく買うよ!」
「なるほど……」
店内にいるのは、僕と由紀だけ。やはり、怪人グッズなど、需要はあまりないのだろう。
「岩山手くんはどんな物がいい? スマホケースとか?」
「あ、いえ。僕スマホでないので」
「そっか。じゃあ、えっとー……」
その時。
「ではこちらはいかがでしょう」
突然背後から声がして、驚いて振り向くと、緑のドレスを着た女性——否、女性怪人が立っていた。
「うわわ!」
慌てて飛び退く。
「なぜ離れるのでしょう」
「……あ、いえ! すみません! びっくりしてしまって……!」
「そうでしたか。失礼しました」
よく見ると、彼女は腕時計を二本持っていた。
「そ、それは……?」
「腕時計になります」
二本とも、金のベルトが美しい腕時計だ。
「た、確かに……綺麗な腕時計ですね」
「そうでしょう。いかがですか」
突如出現したドレスの女性怪人と話していると、急に由紀が割り込んでくる。
「わぁ! 綺麗ですね!」
由紀まで乱入してくるとは。
「そう言っていただけますと、とても嬉しく思います」
「この時計、特別なデザインなんですか?」
由紀は時計に興味があるらしく、自発的に質問していく。
「はい。こちらは五百三十八年以上前に発掘された、小型怪人が入った琥珀を文字盤に使用しております」
小型怪人。
怪人が入った琥珀。
……怪人は虫か何かか。
「へぇ、面白いですね! ね! 岩山手くん!」
「あ、はい」
「珍しそうだしね!」
「ですね」
僕たちの買い物は続く。




