第八十七回 スノゥ(2)
「実はぼく、冷え性なんだ!」
まぁそうだろうな。
モチーフが雪だるまだし。
「それで、冬は辛いんだよねー。寝る時はベストを着るとか、一応工夫はしてみてるんだけど、なかなか温かくならなくて」
相談内容を話している時でさえ、声は明るいスノゥ。
不思議な怪人だ。
「なるほど。冷え性で困っていらっしゃるということですね」
「そうなんだ! だから何かいい対策を考えてほしくて!」
独特の感性を持つ彼の悩み。それはきっと、奇妙なものなのだろう。
そう考えていたが。
予想とは真逆の、極めて平凡なものであった。
「寝る時にベストを着るようにする、以外で、よろしくね!」
いや、相手が既に行っていると言っていた対策を敢えて言う人は、かなりの確率でいないだろう。
そんな人がいるなら、会ってみたいくらいだ。
「はい。ではまず、服装ですかね」
「ベストは着るようにしてるよ!」
「はい、それは承知しています。ですから、他の部分も温めていくようにしましょうか」
怪人の悩みとは思えぬ、実に可愛らしい悩みだ。
改めて、そう思った。
「例えば……下腹部や腰、足元など。温かくしていますか?」
「うーん。どうだろう。多分、してないかな!」
スノゥはきっぱり言い切った。
「腹巻きを装着するだけでも、変わってくると思います」
「えー。でも、かっこ悪くならないかなー」
確かに、丸見えになると、少しかっこ悪いかもしれない。
「服の下に装着すれば、誰にも見えませんよ」
「あ、そっか! 賢い!」
そう言ってから、スノゥはまた「あはは」と笑う。楽しそうだ。
「じゃあ、もっと着込んでみるよ!」
「はい。それをおすすめします」
「そしたらまずは、服を買いに行かなくちゃね! 腹巻きも!」
スノゥは怪人。それは分かっている。姿だって、人間からは程遠い。にもかかわらず、僕には彼が、ただの無邪気な少年であるかのように思えた。おかしなことだが。
「他には何かある?」
「そうですね……お風呂でしょうか」
「お風呂かぁ」
微妙な反応。
もしかしたら、スノゥはお風呂があまり好きでないのかもしれない。
「もちろん、部分的に温めるというのも効果的ですよ」
僕はなぜこんな穏やかな会話をしているのだろう、と、少しばかり不思議な気分になる。
「部分的に? なるほどー。そっか。じゃあ、眼球とか舌とか腎臓とかをピンポイントで温める?」
どうしてそうなるのか。
「えぇと……少し違います」
「そうなの?」
「はい。足湯で足を温めたり、熱めのタオルで首や目元を温めたり、そんな感じです」
首を温めるのは首や肩の凝りに、目を温めるのは疲れ目に、効果があるだろう。気のせい程度の効果かもしれないが、それでも、何もしないよりかはましなはずだ。
「それいいね!」
意外にも、スノゥは食いついてきた。
「あ、本当ですか」
「お風呂は溶けるし、時間がかかるから、正直あまり好きじゃないんだ。でも、一部分を温めるだけなら、同時に別のこともできて効率的。それいいよ!」
スノゥは嬉しそう。
その様子を見ていたら、僕も嬉しくなった。




