第七十回 ミニマムーン(3)
「保証はできませんが……願いは諦めなければ叶うものだと思いますよ」
僕は曖昧な言い方をした。なぜなら、「絶対叶う」と断言できるほどの自信はなかったからだ。
どうしても叶わない願い。
世にはそういうものもある。
「そうかな……? ちゃんと背たかくなれるかな……?」
「努力次第では伸びるかもしれませんよ」
「うん。じゃあ……頑張る」
おはぎのような可愛らしい顔を縦に振るミニマムーン。
「背がたかくなるほうほう……おしえてくれる?」
ミニマムーンは控えめに言ってきた。
僕はすぐに頷く。
「はい。では早速、少し調べてみますね」
背を伸ばす方法。
既に持っている知識もないことはない。
だが、百パーセント信頼できるかと聞かれれば「できる!」と答えることは難しいくらいの、曖昧な知識だ。
だから、調べてみることにした。
「……しらべるの?」
「はい。信頼できる情報をお伝えしたいので」
もちろん、インターネット上の情報がすべて真実だと思っているわけではない。だが、僕が持っている知識だけで話すよりかはましだろうと、考えたのだ。
「うん……ありがとう。よろしくお願いします」
やや高めでまろやかな声。
本当に愛らしい。
それから僕は、携帯電話を取り出した。そして、インターネットに繋ぐ。
今の時代、二つ折れ携帯電話でインターネットを使うとなると、かなり不便だ。開けないサイトがやたらとあったり、読み込みが妙に遅かったりするから。
だが、使えないことはない。
「しばらくお待ち下さい」
「……うん!」
それから五分ほど経過して。
背を伸ばす方法について、段々分かってきた。
「お待たせしました」
情報収集をある程度進めたところで、僕はそう言った。
すると、ミニマムーンの表情が一気に明るくなる。
「ぼく、きちんと待ってたよ。楽しみ」
ミニマムーンのおはぎのような顔は、今だけは太陽のようだ。日頃は可愛いおはぎでも、明るい笑みを浮かべていれば太陽になるのだ。
「カルシウムはたんぱく質と一緒に摂取すると良いみたいですね」
「……ぼく、ぎゅうにゅうは嫌いだよ」
ミニマムーンは急に、顔をしわしわにした。
牛乳はかなり嫌いなようだ。
「カルシウムなら、他の物で摂取しても良いのでは?」
「そっか……それもそうだね」
素直にそう言ってくれるミニマムーンだが、その顔は、まだしわしわなままだ。
牛乳はそんなに嫌だろうか……。
「あとは、よく噛むことも大切みたいですね」
「ぼく……いつも、まるのみだよ」
丸呑みはさすがにまずいだろう。それはもはや、身長がどうこう以前の問題だ。体の構造によって多少違うのかもしれないが——丸呑みばかりだと、背を伸ばすどころか、体に負担がかかりそうである。
「食べ物以外には……なにかある?」
「質の良い眠りも大切みたいですね」
するとミニマムーンは、さらに顔にしわをよせた。
太陽のようだった顔は、おはぎを一気に通り越し、しわだらけのジャガイモのようになってしまっている。
可愛らしさ半減だ。




