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第二十八回 マンティーデ(4)

 気を取り直して、マンティーデのあだ名をきちんと考えよう。


「イワヤマテーっ! まだかぁーっ!?」


 マンティーデは急かしてくる。

 しかし、ここで焦ってはならないのだ。


 焦ると良いものは出てこない。それに、今度は何も出てこないことに対して苛立ってきてしまう。そうなってしまうのが、最悪のパターンだ。取り敢えず、それだけは避けなくてはならない。


「少々お待ち下さい」

「あぁー!? おっせーなー!!」

「申し訳ありません」


 何を言われようが関係ない。僕は、僕がやるべきことをやるだけだ。


 そう考えれば、少しは心が楽になる。


 決まった相談時間があるわけだから、もちろん、いつまでも考え続けるというわけにはいかない。それは分かっているが。しかし、まだ時間はある。時間はあるのだから、今はただ、考えることに集中しよう。


「んー? やっぱ真面目だなー」

「はい。僕は昔から、このような性格です」

「ひょっはーっ! 面白くねーな!」

「はい。なので、友人もそんなに多くはありませんでした」


 もちろん、ずっと一人で過ごしていたわけではないが。


 今はそんなことより、マンティーデのあだ名。それが最優先事項。



 ——二十分後。


「お待たせしました」

「おお! ついに!」


 マンティーデのあだ名をひたすら考え、まずは紙に書き出した。幸い紙は棚に入っていたため、その調達には苦労しなかった。そうして紙に書き出したあだ名は、数十個。恐らく、五十個ほどではないだろうか。


 そして、そこからさらに熟考し、最終的に三つの候補まで絞り込んだ。


「ひゃっふぅーっ! 楽しみだぜぇーっ!!」


 確かに僕はネーミングセンスがない。そもそも思いつくものがそう多くないうえ、思いつけたものはセンスのないものばかり。つまり、ダサいのである。


 だが、熱意はある!

 やる気なら、僕の胸にはたくさんある!


 それだけを頼りに、選びに選び、最後に残った三つの候補。


 ——大丈夫。


 本気で考えたのだから、その想いはきっと、マンティーデに届くはずだ。


「候補を三つにまで絞りました。ですので、その三つをご提案させていただきます」

「おぅ! 楽しみだぜぇーっ!」


 マンティーデのうろつきが止まる。

 彼の目は、確かに僕を捉えていた。


「では一つ目。『カマガンバ』です」


 僕が静かな声で言うと、マンティーデは珍しく黙った。これまでのパターン通りなら、即座に却下してくるはずなのだが、今回はそうではなくて。だが、黙っているということは、採用というわけでもないのかもしれない。


「……いかがでしょうか」

「おー……次のを聞かせてくれ」


 はっきり言われなかったため、採用なのか不採用なのかが明確でなく、こちらも反応に困ってしまう。


 しかし、即座に却下されるよりかはいい。


 せっかく考えたものを一瞬にして却下されるというのは、少々堪えるものがあるから。


「二つ目は、『マンティフゥー』です」

「……は? 何だそれ」

「マンティーデさんは時々『ひゃっふぅー!』と仰いますよね。印象的だったので、そこから取らせていただきました」


 一応説明しておく。

 すると彼は、苦々しい顔をした。


「ダサい! 却下ァ!」


 まさか、これが『カマガンバ』より悪い評価だとは。


 正直意外である。


 個人的には、『カマガンバ』は少々ダサいかもしれないと思っていたが、『マンティフゥー』はそれなりに評価されるだろうと考えていた。名前の一部を使っているし、彼の好きな発言も組み込んであるからだ。だが、それでもダサいと言われてしまった。


 ……となると、次の案も厳しいかもしれない。


 だが、ここまで来てしまった以上、もはや引けはしない。


 だから言おう。

 勇気を持って、三つめの案を。

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