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第二十二回 ズガイクォツゥ(2)

 十五人もいる煩わしいヒーロー集団の名乗り時間をどうするか。それは、案外難しいところなのかもしれない。悪の組織の怪人になったことのない僕には彼らの苦労は分かりっこないけれど。でも、全員の名乗りを待つ時間が暇だということは、想像がつく。


「何か良い案はぬぁいだるぉうか?」

「そうですね……では、そのヒーローさんたちが活動なさっていないところへ行くというのはどうでしょうか?」


 ひとまず提案してみる。

 すると、ズガイクォツゥは黒くて太い眉をひそめる。


「ぬぁに? 吾輩に退けと?」


 ズガイクォツゥは少々不快そうな顔。

 彼の中には、自分たちが譲るという選択肢はなかったのかもしれない。


 ただ、ヒーローの行いをどうこうするのは無理なわけで。もちろん、倒すなんてもっと不可能で。それなら、自分たちが活動場所を変える方が早い。


 個人的には、そう思うのだが。


「吾輩を馬鹿にしているぬぉか!?」

「まさか。そんなわけがありません」

「退けと言うというくぉとは、馬鹿にしているも同然だるぉう!!」


 急に怒り出すズガイクォツゥ。


 僕は一瞬「どうしよう」と焦る。だが、焦ったところで何かが変わるわけではない。なので僕は、落ち着きを失わないように努めた。


「ズガイクォツゥさんのお仕事がスムーズに運ぶように。そう考え、意見を言わせていただきました。馬鹿にしているなんてことは、絶対にありません」


 平静を保ちつつ、はっきり述べる。

 すると、ズガイクォツゥの怒りは少し収まった。


「……そうくぁ」


 怒るあまり立ち上がりかけていたズガイクォツゥは、はぁ、と溜め息を漏らしながら、椅子に落ち着く。


「いくぃなり怒り、すまなかった」

「いえ」


 ギリギリセーフ、か。


「それで……提案は活動場所の変更だっとぅぁな」

「はい。いかがでしょうか」


 するとズガイクォツゥは少し考えて。


「一つの案としては悪くはぬぁいと思うのだが、それはぬぁかぬぁか難しい」


 そんな風に答えた。


「というぬぉも、それは上への相談が必要にぬぁってくる」


 確かにそれも一理ある、と僕は思った。

 ズガイクォツゥが個人的に活動しているのなら、活動場所を変えるのは簡単なことだろう。しかし、彼が勤めている組織が、となれば、活動場所を変えるのもそう楽なことではない。


「なら、囮作戦はどうですか?」


 次の案へ速やかに移る。


「囮作戦?」

「はい。例えば、Aという囮を用意しておいてですね」

「ふむふむ」


 ズガイクォツゥは僕をじっと見つめてくれていた。


 彼の放つ視線は、少々鋭い。それゆえ、凝視されると若干不安になってしまう部分もある。だが、見つめてくれているということは、真剣に聞いてくれているということ。ありがたいことである。


「先にAを登場させるんです。するとヒーローはそこへ来ますよね? 彼らはそこで名乗りを済ませるはずです」


 小さい頃見た特撮番組。その中のヒーローたちは、大概、毎回名乗っていた。一回の放送に一回、必ずと言っても過言ではないくらいに。


 だが、戦いの途中で二回三回と同じ名乗りをするということは、あまりなかったように記憶している。


「名乗りが済んだ後に、ズガイクォツゥさんが入っていくんです。そうすれば、多分、名乗りを待つ必要はありません」

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