表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/105

第十四回 モグリトエハ(2)

 モグリトエハは、細長い腕の先端で、巾着袋をじわじわと開けていく。その作業が始まって数十秒ほどが経過して、巾着袋の口はようやく開いた。


 彼が取り出したのは、ゲーム機。

 二つ折れになっているもので、真上から見ると横長の長方形をしている。よく見かける、僕も持っていたゲーム機だ。


「これなんですー」


 彼はそう言って、ゲーム機を開き、手の先で電源ボタンを押す。すると、微かにプツッと音がして、ゲーム機の画面が光を放ち始めた。


「ゲーム……ですか?」

「はいー」

「そのゲーム機、僕も昔よく遊びました」


 すると、モグリトエハは苦笑する。


「変ですよねー。この年でゲームなんて」


 確かに、彼は大人だ。だが、大人だからといってゲームをしてはならないという決まりはないだろう。実際、僕だって、家ではよくゲームをしている。


「そんなことないと思いますよ!」


 はっきりと言い放つ。

 本当は、こんな大きな声で言うべきところではなかったのかもしれないが。


「……そうですかー?」

「はい。モグリトエハさんがゲームをお好きなのは、悪いことではないと思います」

「嬉しいですー。そう言っていただけると、ほっとしますー」


 そんな風に言葉を交わしている間、彼はずっと、ゲーム機を操作していた。


「ところでモグリトエハさん」

「はいー?」

「今日のご相談は、ゲームに関することなのですか」


 いきなり踏み込んでいくのは失礼かもしれない、と思いつつも、気になってつい尋ねてしまう。


 個人的には若干後悔したのだが、彼が少しも嫌な顔をせず「はいー」と答えてくれたから、僕の心は少し救われた。もしここで彼に嫌な顔をされたりなんかしていたら、僕の心はダメージを受けていたことだろう。


「実は……ここのステージがクリアできなくてですねー」


 小学生のような相談。

 まさかの展開に動揺してしまう。


「えっ、あ、はい」


 モグリトエハはゲーム機の画面を見せてくる。


 どうやら、シューティングゲームのようだ。


 個人的にあまり経験のないジャンルのゲームである。それだけに、きちんと力になれるか不安でいっぱいだ。不安要素が多すぎる。


「この前のステージまでは、それなりにすんなり進めていけたんですー。けど、このステージはどうやってもゲームオーバーになってしまってですねー」


 急に積極的に話し出すモグリトエハ。


「なるほど。よくありますよね、そういうこと」


 僕もゲームはわりとよくやっていた。しかし、得意ということはなくて。興味はあってもセンスが不足していて、大概途中で詰まってしまっていた。何十本ものゲームを遊んできたが、完全にクリアできたものといったら、半分あるかないか程度。


 ……ほろ苦い思い出である。


「分かっていただけますー?」

「はい。とてもよく分かります」


 できれば分かりたくなかったが。


「そこでですねー、このステージをクリアするお手伝いをしていただきたいんですー」


 これは困った内容だ。


 彼がそこまで詰まってしまっているということは、そこそこ難しいステージなのだろう。

 それをセンスのない僕がクリアするなんて、ほぼ不可能。


 奇跡でも起こらない限り、クリアは無理だと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここまで読んで下さり、ありがとうございます。 ポイント・ブクマなど、いただければ嬉しく思います。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ