表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪の怪人☆お悩み相談室  作者: 四季


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/105

第一回 僕の第一歩

 僕の名前は、岩山手(いわやまて) 手間弥(てまや)


 今日から『悪の怪人お悩み相談室』で働き始める、二十三歳の若者だ。


 墨汁のような黒の髪は、見事にパサついてしまっている。染めると髪が痛む、などということを聞いたことがあるが、僕の場合は、染めたこともないのに髪の質が良くない。もしかしたら、生まれつきのものなのかもしれない。あるいは、だらしない生活がそこに現れているという可能性もあるが……そうは考えたくない。


 また、顔立ちは並。

 極めて不細工ということはないが、女性から人気になるような整った顔面ではない。


 ーーそして。


 実は、僕はこれまで一度も、仕事というものをしたことがない。

 取り敢えず高校を卒業するところまではいったが、その後は仕事もせず、親の給料だけに頼って生きてきた。父親が一流企業である程度出世しているため、幸い、働かずともお金に困ったことはない。


 しかし先日、このままでは駄目だと思い立ち、突然何か職に就こうと決意したのだ。


 とはいえ、毎日働かなくてはならない仕事は無理だ。家の中だけで怠惰に暮らすという日々を数年続けていたため、体がたるんでいて、毎日どこかへ行って熱心に働くなんてできっこない。


 そんな時だった。


 僕は出会ってしまったのだ——この仕事に。


 家のポストに入っていた『悪の怪人お悩み相談室』の求人広告。そこには、週二日から歓迎と書いてあって。これなら僕にでもできるかもしれないと思い、記載されていた電話番号に早速電話をかけた。すると、一瞬で採用になった。



 そして今、僕はここにいる。


 僕が暮らしている根源(こんげん)市。

 その市内にある、地味な見た目の数階建てのビルの、一階。


 これから働くこととなるであろう、『悪の怪人お悩み相談室』の事務所に。


「やぁ、こんにちは! 君が噂の、岩山手 手間弥くんだね?」


 初めて事務所へ入った僕を最初に迎えてくれたのは、一人の女性だった。

 ほんの少し茶色がかったショートヘアが印象的な人である。


「あ、はい。岩山手です」

「よろしく!」

「あ、はい。よろしくお願いします」


 少し男性的な顔立ちだが、にこっと笑うと案外可愛らしい。そんなギャップが素敵な女性だ。個人的には、比較的好みである。


「あたしは、安寧(あんねい) 由紀(ゆき)。由紀って呼んでいいよ」


 女性にいきなり呼び捨て許可を貰えるなんて、なんて素晴らしい職場なんだ! ……と、そんなことを言っている場合ではない。


「ありがとうございます、由紀さん。それで、僕は何をすれば良いのでしょうか?」

「そうだねー……ま、いっか。岩山手くんには早速働いてもらうよ!」


 早速の働いてもらう宣言。

 これはもしかして、男子がこき使われるというパターンではないだろうか。


 そうだったとしたら、少しまずい。僕は用事を押し付けられるのが苦手で、一方的に言われると逃げ出してしまうタイプなのだ。


「早速ですか?」

「そ! あと少ししたらお客さんが来るから、取り敢えず一緒に来てくれる?」


 まずは仕事を見学、ということだろうか。

 少し安心した。


 由紀がしている仕事を見るということだけなら、極めて怠惰な僕にでも不可能ではなさそうだから。


「そこで仕事内容を覚えてね!」

「は、はい……!」


 働くなんて向いていない。僕はそう思い込んでいた。しかし、今は若干わくわくしている自分がいる。その理由は分からないが、今はとにかく前へ進んでみようと思う。


 これが僕の第一歩だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここまで読んで下さり、ありがとうございます。 ポイント・ブクマなど、いただければ嬉しく思います。
― 新着の感想 ―
[良い点]  『悪の怪人お悩み相談室』!? ってなにをするところ?    ゆっくりとですが読ませていただきますね!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ