表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/14

おすそ分け

ピンポーン!


家のチャイムが鳴る。


「どちらさまですか?」


「すいません、隣の者なんですけど」


ドアを開けると両手で鍋をしっかり持っている。なんやねん。


「すいません、引っ越して来たのに挨拶にも伺えず」

「隣の田口です。口を二個書いてから、左の口に十字架をねじ込む方の田口です」

「初めて聞いたわ、その伝え方。あと、ほうですって、他の田口さん浮かばへんけど。

今日はどういった要件で」

「あ!すいません、某田口はですね

「某って!明確!実態目の前!」

「見ての通りおすそ分けです。某田口は夕ご飯に鍋食べたいなぁって思いまして、んーでも1人で鍋もなぁーって思って、

「あ、一緒に鍋でもってことでええんかな?」

「それで悩んだんですよ、1人鍋するくらいなら誰か誘おうかと、

「話聞いてる?ねぇ?」

「鍋だったら、調理は割と簡単だけどコンロ用意したり鍋洗うのも大変だし、やっぱ余っちゃいそうだしなぁ、

「こわいんやけど、ずぅーと悩んどるやん!聞いて!」

「余らせても次の日も鍋、また余ったら次の日も鍋、その次の日も、その次の日も鍋、鍋!なべぇー!!」

「どんなでかい鍋で作るつもりやったん!?」

「某田口はいつまで鍋を食べ続ければいいんでしょうかぁぁぁぁ!?」

「知るかぁぁぁぁ!!無くなるまでや!!」

「と、言うわけでお隣さん」

「なに?」

「鍋つくりすぎちゃってませんか?」

「すぎちゃってません?なに?鍋つくりすぎちゃったんでよろしかったらどうぞ。って話しちゃうん?」

「違います」

「いや、待てぇや、ほならさっきの悩みなんやったん?」

「あぁ悩んでるうちにすっきり遅い時間になってしまったんで」

「めっちゃ悩んどるやん!それでよぉあんないつまで食べ続ければいいんでしょうかぁぁぁ!?ってあのテンションで言えたな」

「某田口は思い込みの激しいタイプの子なので」

「いつまでもじぶんのこと、○○な子!言うな。いい歳やんけ」

「はい!寅年です!」

「今干支褒めへんし!へぇー君寅年!いい年やな。なんて言うやつおるか!ってか、おすそ分けって言ってたやろ?できひんやん」

「ですから、されに」

「新しいパターン!されに!?おすそ分けされに!?確かにする方も、さ!おすそ分け!とか言うけどもやな」

「たぶん同じ1人暮らしの男性なら鍋地獄にはまってるんじゃないかと思って」

「考え方は理にかなってるけどもなぁ、残念ながら鍋地獄には落ちてません」

「じゃあ、鍋じゃなくてもいいんで!何かおすそ分け!」

「鍋のこだわりなくなってもうたやんけ」

「めぐんでください、靴とか舐めますんで!なにかめぐんでください!」

「こわいこわいこわい!そんなんさせる気ないわ!今日は外で食べて来たからなんもないんや、すまんの」

「某田口練り歩いてもぉ腹ペコなんです」

「隣の人って言っとったやん?」

「はい、隣町の者です」

「その労力あったら鍋くらいめんどくさがんな!もぉ帰って」

「ちっ。やめさせてもらうわ!あほ!」

「お前が言うな!こっちのせりふや!ボケが!」


ドアを乱暴に閉める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ