僕のありふれた?日常〜黒猫と鈴の音〜
「さむっ……」
僕はボソッと呟き、ポケットに携帯を突っ込み走り出す。
冬の早朝身にしみる寒さの中、僕は日課のジョギングを始めた。
まぁ…たまにさぼったりするけどね…。寝坊とか、寝坊とか、寝坊とか、寝坊とか…endless…。
まぁ、それはどうでもよくて…。歩道を走るもんだから、たまに遭遇するのが車に引かれて、道路に投げ出された猫や狸の死骸。
つまりこういうことを一々話しているということは……。
今日もあったわけだ……。
しかも黒猫だ…。
黒猫は不吉だと言われている。
一体何が不吉なのかはよく分からないが、僕は車がいないのを見計らって黒猫に近付いた。「…うわぁ…」
僕は思わず呻いてしまった。
口には出したくないけど……○臓がちょっと見えている。
当たり前だけど、血が黒猫の周りに広がっていた。
「ハァ……」
僕はため息をつき、予め用意していた手袋をはめた。
「よしっ…!」
僕は気合いを入れて、黒猫を抱えた。
ねちょっという音がしたけど気にしない。
「わっ…あぶね」
車が2〜3台遠くの方に見えた。
僕は急いで、道路脇の草がいくらか生えているところに黒猫を寝かせた。
僕はもう一度確認するように、道路の方を見た。「あっ……」
黒猫が横たわっていた場所に何かが落ちているのに気付いた。
僕はまた車がきていないかを確認して、黒猫が横たわっていた場所に走った。
「首輪……か…」
そこに落ちていたのは、青い首輪だった。
「飼い猫か…。可哀想に」
僕はボソッと呟いて、道路脇の方に走り戻った。
僕は黒猫の頭もとに首輪を置き、手を合わせた。
「あそこにいるよりは、マシだろ」
僕はそう言って、手袋をはずし、また予め用意していた袋に入れポケットに突っ込んだ。
「はぁ〜さみ…」
僕はまたジョギングを再開した。それから30分程走り、僕は家に帰った。
僕はポケットに手を突っ込み、携帯を取り出した……。
「って…あれ?ない?」
ポケットに入れておいたはずの携帯がなかった。
「どっかで落としたのか……?…それにしても…普通気付こうぜ僕……」
僕は自分で自分にダメ出しして、仕方なく部屋に戻った。
まだ両親は起きていないようだった。
部屋に戻り、僕は手袋をゴミ箱に放り投げた。
見事に手袋はゴミ箱の中に吸い込まれていった。
「ナイッシュー」
と1人ガッツポーズをして、ベッドに横たわった。−−コツンッ
「ん……?」
窓の方からそんな音がして僕はベッドから起き上がり、窓に近寄った。
「………マジで?」
僕は驚いてしまった。
「僕の携帯だよ…」
窓のところに、僕が落としたはずの携帯が置いてあった。
なんで………?
僕は窓から顔を出して、辺りを見渡した。
「誰もいない……」
僕がそう呟き、顔を引っ込めようとした時だった。
−−チリンッ
鈴の音……?僕はその鈴の音に、もう一度窓から顔を出した。
けれど何もいない。
「鈴の音かぁ……。そういえば…あの黒猫の首輪に鈴ついてたっけ……」
僕はそう呟いて、慌てて顔をブンブンと横に振った。
「ないない!?そんなことあるわけないって…!」
たかが道路脇にどけてあげただけだ…!
黒猫の恩返し!?
って…それ以前にそんなことあるわけないってない…!!
僕は携帯を手に取り、顔を引っ込めた。
「…マジで……?」
それからというもの、僕はやたらと猫に好かれるようになった。
しかも…黒猫ばっか……。