ラーメン食えるか
木村咲と佐藤灯は仲良しだ。
小さい頃からの幼馴染で小学校から現在の高校まで同じ学校である。
二人はよもや、くだらない話をしている。
「朝起きたらみんな消えてた」
休日の木村家、咲以外に誰もいない。
「それはミステリー的な意味で?」
「違う。言い方が悪かった。単純にみんな出掛けてて、私一人だったの」
「お前だけハブられてみんな出掛けてたの?」
「そんな悲しいことあるか! みんな違う用事だよ! 」
咲以外はそれぞれ別々の外出。
「姉と妹は友だちと遊びに。で母さんは買い物、父さんはその荷物持ち」
「じゃあハブられてたわけではないと」
「当たり前だわ。ハブられるとしたら父さん☆」
「地味にヒドイこと言うなよ」
灯は憐れむ声で続ける。
「お前ん家の父さんって絶対大変だろ」
「大変ってか…まず発言力がないよね」
「そりゃそうだろ。5人家族で4人が女なんだから」
木村家のカースト最下位、お父さん。
「可哀想だわ〜」
「それは一旦置いといて」
話を戻す咲。
「とりあえず、朝誰もいなかったのね。したらまず腹が減って、てかなんなら腹が減って起きたぐらい」
「うん」
「でカップ麺を食おうと」
「寝起きですごいな」
「私そういうの大丈夫だから。お湯入れて3分待って」
「うん」
「3分経った」
「うん」
「最高のタイミングで食べよう思った瞬間、電話が鳴ったの」
「誰?」
「姉ちゃん。だから出ないわけにもいかず、出たの」
姉からの急な電話。
「その用件が『クマの可愛いTシャツがあって買いたいんだけど、前に買った記憶がある。だから私の部屋確認してきて』っていう確実にラーメンが伸びる用件」
「辛いなそれ」
「私もカーストで言うと低い位置にいるから断れない、だから姉の部屋行ったら、まあ汚いの。服が散乱しててクマのTシャツ探すどころじゃない」
姉に逆らえない灯、カースト4位。
「で結局伸びたラーメンを食った」
こんな感じのくだらない話を二人をいつも話している。
「クマのTシャツはどうした?」
「クマじゃなくて犬だった」