腹の音
木村咲と佐藤灯は仲良しだ。
小さい頃からの幼馴染で小学校から現在の高校まで同じ学校である。
二人はなにかと、くだらない話をしている。
「実はさ、朝ちょい寝坊をしたのよ」
灯のちょい寝坊話。
「あのちょい寝坊を?」
ちょい寝坊=ちょっとした寝坊。
「どうしようもない時間に起きたんだったら諦めがつくんだけど、逆にどうにかなる時間に起きちゃったから頑張って遅刻しないで行こうって決めたの」
「あ〜。なるほどね」
「そのせいで朝食を食べて来れなくて、授業中とかずーっと腹減ってたの」
「ちょっと待って。じゃあ授業中、時々『グルルルル』って鳴ってたのって…」
「私の腹の音」
「あれお前かーい!」
ツッコむ咲。
「授業の要所要所で鳴らしやがって」
「私も別に鳴らそう思ってたわけじゃないから」
授業中に定期的に鳴る灯の腹の音。
「私だって恥ずかしいよ。でもどうしようもないからね」
「顔真っ赤じゃん」
笑いながら言う咲。
「話戻すけど、それでまず朝食が食べられず。で、コンビニにも行けず。結果朝から何も食べれず」
「それで授業中に『グルルルル』って」
「言うな言うな」
弄る咲。
「授業中に(私の前の席の)寝てた吉田が私の腹が鳴った時『ビクッ!』てなってた」
「そりゃ寝てる時にあの音鳴ったらビビるよ」
「吉田にも言われた。『寝てる時のアレは心臓に悪い』」
「だろうね」
「吉田にも朝何も食べてないって話をしたの」
休み時間の吉田との会話。
「そしたら吉田が『パン咥えて来なかったの?』ってボケの顔で言ってきたの」
「うん」
「だから『それはちょっと食いづらそうじゃない?』って真顔で返した」
「『少女マンガか!』ってツッコミはしなかったんだ」
「しなかった。そのツッコミを欲しがってたんだろうけど、ボケ顔にイラッとしたから、あえて真面目で返した」
「必殺のボケ殺しだ」
「そう。必殺のボケ殺しを食らわしてやったよ」
「その時の吉田の顔どうだった?」
「なんとも言えない顔だよね。若干の気恥ずかしさがあった」
こんな感じのくだらない話を二人をいつも話している。
「吉田が地味にかわいそう」
「でも吉田ってそういうキャラじゃん」