謎のパーティ
木村咲と佐藤灯は仲良しだ。
小さい頃からの幼馴染で小学校から現在の高校まで同じ学校である。
二人はまたもや、くだらない話をしている。
「ちょっと恥ずかしい話なんだけど聞いてくれる?」
咲が浮かばない表情で話し始めた。
「聞きたい。聞きたい。咲の恥ずかしい話、私好きだよ」
少し楽しそうに言う灯。
「恥ずかしい…というか、とりあえず『RPGか!』ってツッコみたくなる話」
「なんだそれ。聞かせて」
咲の体験した『RPGか!』話。
「昨日、私帰るのがいつもより遅かったの」
「へ〜。何時?」
「(最寄り)駅に着いたのが7時」
「全然遅くないじゃん」
ツッコむ灯。
「普段の私基準では遅いの」
ちなみに咲は普段、5時には家に着いている。
「駅から家に帰る道でおじさん2人が前を歩いてたの。このおじさん同士は別に友だち同士でもなんでもないのね」
咲とおじさん×2
「なんとなく後ろを振り返ると、私の後ろにもおじさん2人が歩いてんの。この2人もおそらく友だち同士ではないのよ」
咲とおじさん×4。
「簡単に言うと私も含めて全員が他人同士」
「うん」
「私は普通に家へ帰る道を歩いてたの。それが偶然、おじさん達の目的地への道のりと一緒なのか、ずっと同じ道を歩いてんの」
「5人全員?」
「そう。5人全員で同じ道を歩いてたの。側から見たら『この5人は同じところに向かってるんだな』て思うぐらい」
「すごいなそれ」
偶然にも他人同士の5人が全員同じ道を歩く。
「もうね、ちょっとしたパーティ」
咲、おじさん達とパーティを組む?
「しかも道も狭いし5人縦一列で歩いてんの。それもあってますますパーティぽいのよ」
「確かにパーティぽいわ。全くワクワクしないパーティ」
モンスターに襲われたら全滅待った無しのパーティ。
「『おじさん、おじさん、私、おじさん、おじさん』ていうパーティ。はっきり言って異様じゃん」
「異様だね。異様のパーティだわ」
女子高生とおじさん4人のパーティ。
客観的に見ると不思議な光景。
「だからこの状況がなんかすごく恥ずかしかったの」
咲が苦い顔で言う。
「誰かが見てるってわけじゃないんでしょ?」
「誰も見てないし、おじさん達も多分何とも思ってないわけよ。私だけが恥ずかしがってんのよ」
またも苦い顔で言う咲。
「でも分かるわ。私もその状況ならなんか恥ずかしいかも」
共感する灯。
「別におじさんという存在が嫌いってわけじゃないでしょ?」
「そう。誤解しないで欲しいのは『おじさんが嫌い』ってことではないの。ただ『おじさん、おじさん、私、おじさん、おじさん』のパーティにはなんかキツイものがあった」
こんな感じのくだらない話を二人をいつも話している。
「だから『RPGか!』ってツッコみたくなるってことか」
「そうそう」