雲を見よう
木村咲と佐藤灯は仲良しだ。
小さい頃からの幼馴染で小学校から現在の高校まで同じ学校である。
二人は結局、くだらない話をしている。
灯「雲を見るのが地味に好きなんだよね」
灯の好きなこと、雲を見ること。
咲「だから時々、空見てんの?」
灯「そうだよ。雲を見てんだよ」
灯は時々、空を見ている。
それを今まで不思議に思っていた咲。
咲「(雲を見るの)楽しい?」
イマイチ共感できない咲。
灯「楽しいとかそういうんじゃないんだよ。雲をただただジーッと見る、良いよね」
咲「……何が良いのかちょっとよく分からないんだけど」
やっぱり共感できない咲。
咲「それの目的は何なの?」
灯「だから目的とかそういうんじゃないんだよ。ただ見るだけ」
咲「……どーいうこと?」
ついていけない咲。
灯「ちょっととりあえず見てこい」
咲「やだよ。面倒だわ」
灯「1回ちょっとやってみ。やれば分かる」
咲「いや絶対分かんないって。マジでつまんなそう」
灯「だから、つまんないとか、そういうんじゃないって。ほんとにオススメ」
結局、見に行った咲。
灯「(雲を見ての感想)どうだった?」
灯が咲に訊く。
咲「いや、『雲だ』以外の感想ないよ」
咲、困惑。
灯「まじかー。分かってもらえないか」
咲「あ、でもイルカの形した雲を見て——」
灯「そういうんじゃないんだよ」
食い気味に言う灯。
灯「別に面白い形の雲を探してるんじゃないんだよ」
咲「ええー」
こんな感じのくだらない話を二人をいつも話している。
灯「でもイルカの形の雲はちょっと見たいかも」
咲「写真撮ったよ。見せてあげる」