横入り男
木村咲と佐藤灯は仲良しだ。
小さい頃からの幼馴染で小学校から現在の高校まで同じ学校である。
二人はやっぱり、くだらない話をしている。
咲「今日の朝のことなんだけど。学校行く時、電車乗っていくじゃん」
咲が話し始める。
咲「電車の通学時間、通勤時間は、誰もがみな座りたいじゃない」
灯「まあそれに尽きるわ」
咲「でもだからといって電車が来た瞬間に一気に乗り込んだりしないじゃん」
灯「そうだね。動物じゃないんだから」
灯の飛躍した理論。
咲「そこまでは言わないけど、まあでも人間にはモラルやマナーの概念があるしね」
話を戻す咲。
咲「ホームでは基本、電車が来るまで縦の列になるでしょ」
灯「そういう暗黙の了解みたいなのあるよね」
咲「そうそう」
電車は縦に並んで待つ。実際は暗黙どころかホームのアナウンスで言ってはいる。
咲「電車が来たら前の人から順々に乗っていく、ルール。今朝、それを破る奴がいたんだよ」
灯「あ〜時々いるね」
咲「私は前から2番目で待っていたの。なのにだよ、1番目の人の真横に若い男の人が急に並び始めたの。明らかにルール違反じゃん」
灯「確実に横入りを狙ってるね」
咲が今朝出会った、横入り男。
咲「ちなみに2番目でも(電車の席に)座れるか座れないかギリのラインだから、そいつの存在がすごい邪魔だったの」
咲は続ける。
咲「他の人はみんな列に並んでルールを守ってんのに許せない」
灯「確かに許せないな」
咲「だから私は絶対に横入りさせないって決めたの」
咲VS横入り男。
咲「ちょっと前の人との間隔を狭めたり、電車が来たらブロックしてやろう、って」
灯「いいじゃん」
咲「で、いざ電車が来た」
咲VS横入り男の決着。
咲「あっさり横入りされたの」
灯「マジか」
咲、あっさり横入りを決められる。
咲「『ヤバい! 席取られる!』って思ったの。でもそいつ、席座らないで吊り革に掴まって立ってんの」
灯「ええー」
横入り男、まさかの座らない。
咲「意味が分からない! 横入りする意味!」
灯「なんでだろうね」
こんな感じのくだらない話を二人をいつも話している。
咲「結果、私は座れた」
灯「おお。なら良かったじゃん」