guardian 1-1
年初めの初投稿ですね。
今年もよろしくお願いします。
神依学園の部活動勧誘期間は約1ヶ月。
様々な部活や同好会が新入生を巡って激しく切磋琢磨する時期だ。生徒会は推薦された生徒や主席•次席入学した生徒がいるが、推薦を断ったりする生徒は少なからずいる。
これがどういう事かと言うと。
「そっち行ったわよー!!」
「突破されました!!A-3ブロックまで移動します!!」
「束縛系魔法班、A-4で待機!」
サンダーは、生徒会の役員とそれに協力する生徒達に追われていた。
(何なんだ、これは……!!)
一体どこの軍事演習かと言うような巧みな連携と、次々手迄考え尽くされているような行動に、サンダーは驚きを隠せなかった。
(ここまで追跡されているという事は……知覚系技能持ちも居るのか?)
廊下のトラップを魔力眼で視認して回避し、時折魔力波を放出して飛んで来る魔法を破壊しながら、対策を練る。
しかし、生徒玄関前のホールに差し掛かった瞬間、突然体が重くなった。
(っ…レベル制限エリア!!)
レベル制限エリアとは、その名の通りその空間に入った対象のレベルをある数値以下にまで落とすという物だ。
今回サンダーはレベル800程度の身体能力を使っていた為、動きに支障が出てしまった訳だ。
当然その隙を逃さず、20人程度の生徒達がサンダーを取り囲む。隙間は無く、完全に包囲されている状況だ。
「…全く…君は…本当に、規格外、だな…」
全速力で追いかけて来ていたのか、息を落ち着かせながらレティナは彼をそう評価した。
そして一度大きく深呼吸し、何時もの不敵な笑みを浮かべる。
「さて……サンダー君、そろそろ観念したまえ。皆君が来るのを待っているぞ?」
「何度も言いますが、お断りさせて頂きます」
予想通りの、ドライな返答。
だが、彼女はそこに何か妙な影を見てとった。
「……ふむ、君はもしかして、こう言う権力者然とした役職は苦手かい?」
これでサンダーがほんの少しの瞬間驚いた表情を見せたのを、レティナは見逃さなかった。
「やはり、な。最初に何か別の理由があるかと思ったのだが、本当にそうだとは」
余り驚いた様子が無い彼女は、やはり予想していたようだ。
「まあ、そんな理由で引き下がる訳にもいかないのだが、ね」
「……そうですか」
その彼女のセリフに対し、サンダーはそう短く答えていつの間にか手に持っていたビー玉程の大きさの物体を潰した。
割れた瞬間、大量の煙が周りを覆い、何も見えなくなる。
「……え!?何これ……何も『視え』ない!!」
「何っ!?」
しかもただの煙では無かったようで、知覚系技能を持つ全ての生徒が技能を使えなくなっていた。
急いで魔法で煙を飛ばすが、既にサンダーの姿は消えていた。
(……やはり、面白い奴だな。サンダー君)
絶対に捕まえて、生徒会の監視下に置こうと、彼女は決意を固めた。
瞬間移動で屋上に出ると、そこには既に先客が居た。
「……久しいな、サンダー」
「ヴェード、お前……こんな場所で教師なんかやってたのか」
若干呆れたような台詞に、さも可笑しそうに笑うと、ヴェードは言葉を返した。
「まあな。これでも評価は高いぞ?最近はあの『彩破無色』にも気に入られたようだしな」
そう言って、サンダーの後ろをチラリと見る。
振り向くと、何も無い場所から突然1人の竜人が現れた。
灰色の長い髪と眼、体毛を持った無属性の羽毛竜人である彼は、「バレたか」とでも言うような楽しそうな笑みを浮かべた。
「竜胆、結界は?」
「完璧ですよ、セーンセ。暫くは誰もここに近付けませんよっ」
……完全に悪戯っ子の笑みなのだが、やる事は悪戯の域を大幅に超えていた。
「クロウ、またお前は……」
「だーかーら、俺の事はカムイって呼んでくれって何回言えば分かるんだよ」
少し怒った顔で、サンダーの頭に軽い指弾を当てる。
「そうだな、サンダー。我の前ならともかく、人前で真名をばらす危険を犯すのは止めて置いた方が良い」
「……分かっている」
指弾を受けた場所をさすりながら、少しすまなそうな表情でサンダーが頷く。
指弾をサンダーに当てた彼_____竜胆カムイは、もう1つ名前を持っているのだ。
本当はその名前を使わなければならないのだが、彼の場合は余りに特殊過ぎた。
「確かに、誰もS級冒険者で元王族の『クロウワッハ•竜胆•イクシオン』がこの学校に居るなんて思わないからな」
「我も最初はあの外道の血縁だからと警戒していたが……」
「まあ、本当に伝説の邪龍に育てられたし、あれの血はもう消えてるから問題は無いんじゃないですかねぇ」
そう言ってくっくっと笑うカムイ。_____あの外道、とは当然アルバス•イクシオンの事である。
彼は生粋の無属性竜人で、生まれてすぐ棄てられ、運良く『心優しき邪龍』クロウクルーワッハに拾われて育てられたのだそうだ。
なので彼には、彼の母とその邪龍の血が半分ずつ流れている事となる。
「丈夫に生んでくれて、大事に育ててくれた母親組には感謝してますよ、ホント」
「まあそれなら、その恐ろしく高いレベルも理解は出来るだろうな」
彼のレベルは20312。サンダーの1.5倍強もあるのだ。だが、今はその力を気付かれないようにするため封印の腕輪をつけている。_____それでも、サンダーと同じ位の力は持っているのだが。
「ま、サンダーがちゃんと落ち着くまで、暫くはこのまま頑張りますかね」
そう言ってまた、彼は悪戯っぽく笑みを浮かべた。
「……そう言えば、ヴェードは何故ここに来たんだ?」
暫くの間3人で談笑していると、ふと思い出したようにサンダーがヴェードに尋ねた。
「ああ……水無月老に呼ばれてな。戦闘訓練の指導をして欲しいと頼まれたのだが」
「……裏があるんでしょ?」
カムイのその指摘に、図星だと言う風にヴェードは苦笑を浮かべた。
「お前の洞察力はやはり素晴らしいな、カムイ。
ああ、確かにそれは表向きの理由だ。本当の理由は……」
ここで、ヴェードはサンダーの方を向いた。
「お前だ、サンダー」
「……監視、か?」
肯定するように頷き、ヴェードは話を続ける。
「ああ、そういう事らしい。水無月老もお前の状態を案じていたからな、先ずは監視もとい観察を進めようとしているようだ」
「そう言えば、水無月先生って『観測者』の1人だったっけね」
観測者とは、ある一帯の地域や特定の人物•団体を監視•介入する役目を持つ者の事だ。その中でも水無月は、強大過ぎる力を持つ者の監視を任されているとの事らしい。
「あの先生の事だし、生徒会の事も監視の為なんじゃないの、センセイ?」
その問いに、ヴェードはまた首を上下に振った。
「我もそう聞いている。_____だが、な」
ここで、彼はニヤリと笑みを浮かべた。
「サンダー、どうせなら全力で抵抗してやれ」
「……それ、教師の言う事か?」
「当然だ。我は戦闘訓練の指導を任されているのだからな、生徒に抵抗を諦めさせるような真似はせん_____思い切りやって来い、サンダー」
「……当然だ」
サンダーも、人の悪い笑みをしてそう答える。
(ハハ……ご愁傷様、って所かねえ)
それを見たカムイは、生徒会の彼女達の事を案じつつも笑うしかなかった。
そうしていると、不意にカムイのレーダーに引っかかる者が居た。
(……あ)
生徒会長その人だ。彼女はカムイの結界の前で暫く何かをする素振りを見せた後、急に右手の拳を握り締め_____結界に叩きつけた。
「うおっ!!」
なんとその一発で結界が破壊され、軽く反動を受けて尻餅をついてしまう。
「カムイ、まさか結界が……」
「ああ、そのまさか。会長直々のお出ましって奴だ……っと」
反動をつけて立ち上がる間にも、彼の目には下の階段の前に増える生徒達が見えていた。
「さて、と……サンダー、どうする?」
何も無い空間から槍を取り出してカムイがサンダーに訊く。
「……勿論、殺さない程度に抵抗するさ」
「そうこなくっちゃなぁ」
双剣を出して答えるサンダーに、カムイは満足したような表情を見せた。
「……これは……」
屋上にレティナ達が来た時、そこは霧に包まれていた。
一寸先も見えないような、濃密な濃い魔法の霧。しかも、知覚系特技もほぼ全く使い物にならなくなっているという徹底っぷりだ。
「纏まって行動しろ、どこから襲撃されるか分からん」
「了解です。しかしこれだけの魔力を一体何処から……」
魔法使いの生徒が興味津々な様子で辺りを見回す。ここまで濃い魔法の霧も中々お目にかかれない物だからだ。
「……知りたいんですかぁ?」
「勿論!どんな魔法を使えばこんな風になるのかとか、製作者に会ったらそりゃあもう聞きたい事が一杯……」
ここでようやく、その生徒は横に居る人影に気付いた。
「ってうわぁ!?」
驚いた生徒が、後ろに跳んで距離を取る。_____対してその驚かせた人影は、全員の目の前に跳んでからいつの間にか出現させた槍で周りを勢い良く薙ぎ払った。
瞬時に暴風が発生し、霧が吹き飛んで青空が見えるようになる。
「どうも、先輩さん方。こんな大人数でどうしたんでしょうか?」
「……其処まで敵意が強いと、知ってて言っているのがバレバレだぞ」
「知ってて言ってますからねぇ」
飄々とした態度を全く崩さないカムイに、レティナは深々と溜め息をついた。
「それで、カムイ君。君もサンダー君と同じく此方に来る意思は無い、って事で良いのかい?」
「入りますよ?サンダーが入ったら、ですけどね」
そう言って、彼は後ろを指差す。
それにつられて振り返った瞬間、空中に停止する無数の投げナイフによって身動きを封じられた。
「……対象を、捕促」
(……!?)
大きな驚きと共に上を見上げると、焦点の無い目で此方を見るサンダーが居た。
白い竜の翼に装備や体の色も白、そして碧い目の彼は、翼を動かさずにそこに浮かんでいた。
「戦いは、嫌いだけど……倒す」
「……ふふ、良いだろう。私の実力、何処まで君に通用するか試してみようじゃあないか」
不敵な笑みを、レティナが浮かべる。
奇しくも、それが戦闘開始の合図となった。
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