howlig 3-3
サンダー一家の女子組は基本的に怒らせると怖いです。
「……スティリア。どうやら全員が妨害を受けているようだぞ」
アースの報告に、スティリアは溜め息をついた。
アクア、スティリア、アース、そして途中で合流したオフィリスとミカゲは、不良冒険者達に道を塞がれていた。
「あ、あの……よけて欲しいんです、けど……」
アクアが相手の様子を気にしながら控えめにお願いする。
「え~、こんな可愛い女の子がいるのに邪魔だって言うんですかあ~?」
わざとらしい口調でシーフの男が答える。
「あらあら。あなた達、『桜華』の団員でしょう?
普段ならこんな事出来ない筈ですよ」
「おお、お姉さん鋭いですな~。
そんなお姉さん、俺達と一緒に遊びません?」
「ふふ、残念だけれど今忙しいの。そっちの方向に行かないといけないのよ」
残念そうな表情を繕ってオフィリスが2回目の依頼をする。
「う~ん、残念ですけどここは対価が必要なんですよ~」
「ちゃんと体で支払う、っていう対価が……ね」
そのセリフで一斉に笑う不良冒険者。
(……不愉快ね)
そろそろスティリアも我慢の限界だった。
見れば、アクアも何時の間にか腰に2振りのロングダガーを吊っている。
「……本当に、そこを避けて貰えないんですか?」
「まあな~。ちゃんと必要な対価を払うのなら別だけどな」
アクアのセリフが最後通牒だと気が付かない冒険者は、おちゃらけたように答える。
スティリア達には、それで十分だった。
「うふふ、そうなの……。じゃあ、力ずくで避けて貰うしかないわね」
オフィリスが『カレンデュラ』という銘の長杖を構えながら微笑む。
「……もう頭に来た!スティリア、殺っちゃうよ!」
態度の豹変したアクアが両手で『アビスリヴァイア』を抜き放つ。
「貴方達が邪魔をしなければ、こんな事にはならなかったのに」
スティリアが細剣の『ソロウコキュートス』を相手に向けて、呟く。
「お前達は相手の格を見破れなかった。
……これは、その報いだ」
最後にアースが『グレイヴヤード』と呼ばれたクローを装備し、相手に宣告した。
「へっ!たかが4人が、俺達に叶う訳」
「それが全員S級冒険者でも?」
アクアの言葉に、その男は「は?」と言うかのような表情で固まる。
そしてその男は、次の瞬間頭を横に落として絶命した。
「あたしはギルド『竜騎士連合』団員、『水紋』のアクア•オルヴァリーシス!」
「同じく『竜騎士連合』団員、『氷獄』のスティリア•グレイシゼル」
「同ギルドマスター、『砕星撃』のアース•グラドアルガ」
「『竜騎士連合』のサブマスター、『深緑樹』のオフィリス•ドラセナシアよ」
全員が名乗り終え、オフィリスが前に出ると、全ての冒険者達が
後ずさった。
「言ったわよね?此処を通るなら対価が必要だ、って。
……それなら、私達は貴方達を生け贄にして此処を通りましょう」
その言葉を聞いた瞬間、冒険者達は自分の体が動かない事に気が付いた。
ある者は足が凍りつき、ある者は何処からともなく生えてきた蔦に足を縛られ、どんなに引っ張っても解放される気配は無い。
「さあ、『お仕置き』を始めましょう……ね?」
そう言って、オフィリスは冷たい笑みを浮かべた。
一方その頃、サンダーは住宅街の上を飛行していた。
背中の翼を羽ばたかせ、猛烈な速度で神樹に向けて疾駆する。
やがて神社の鳥居が見え始めた頃、サンダーはここに来る前に危惧していた物を見つけた。
(やはり……2人共此方に来ていたのか)
ローグと白虎が、鳥居の前で地面から飛び出した縄に縛られ、身動きを取れなくなっていた。
すぐに鳥居の前に辿り着き、2人の前に降り立つと、ローグがびっくりした顔でサンダーを見た。
「サンダーさん、駄目です!早く離れ……」
しかし、その言葉が言い終わる前に、サンダーの足下から縄が飛び出し、あっと言う間に身動きを封じた。
「何やってんだよ、サンダー……」
白虎が呆れたように言うが、サンダーは気にしなかった。
それを仕掛けた張本人が現れたからだ。
「……全く、何でこの頃こんなに侵入者が増えるのかしらね」
大幣を持った龍人の巫女が、数人の巫女と神職を連れて神社の方から歩いて来た。
「……咲耶か。久しぶりだな」
その顔に覚えのあるサンダーは、寂しそうな笑みを浮かべてその巫女に話し掛けた。
「……何よ。あなたなんか知らないわ」
「5歳の時に会った記憶があるのだが……まあ、覚えていないか」
剣呑な口調の咲耶に、サンダーは同じ調子で言葉を返す。
「そっちのお祖母さんは、もう……?」
「亡くなったわ、5年前に。最期まで『サンダー』って子の心配をしていたけど、あなたには関係無いわよ」
「そうか。悪いな……」
悲しそうな顔になるが、サンダーの口調は変わらない。
「……それよりも、まずは自分の心配をしたらどう?今此処で神聖な儀式を行っているんだから、用が無いなら」
「帰ってくれ、か?
……悪いが、それは出来ない。それのせいで困っている奴が居るからな」
その時、急に樹の上から誰かの声が聞こえて来た。
『我の仔等よ、此処から助けておくれ……』
『……!』
頭の中に直接響くその声は、悲しみに満ちていた。
『待っていろ、すぐに助ける』
『おお、竜の子よ……。我を我の半身に戻してくれるのか……?』
『半身、とは?』
その声に向けて、サンダーが問い返す。
それに対して返って来た答えには、流石のサンダーも驚いた。
『エルフの寵愛を受け、狼人に育てられた子だ……。急げ、もう残された時間は少ないぞ……』
その言葉を最後に、それっきり声は聞こえなくなった。
サンダーは時間停止を発動させると、驚いた2人の心境を無視して指示を出した。
「……ローグ、5秒後に束縛を解除するから、一気に樹の上まで登れ」
サンダーの指示に、ローグは少し混乱する。
「えっ?で、でも……」
「良いから行ってくれ。お前にしか出来ない事だ」
だがサンダーのその口調と台詞で理解したローグは、首を縦に振った。
「……分かりました」
それに対してニヤリと笑うと、白虎の方にも指示を飛ばす。
「白虎も一緒に行ってやってくれ。ローグ1人では危険だからな」
「お前の方は……大丈夫か。分かった、任せろ」
それにアイコンタクトで感謝を伝えると、サンダーは前を向き、時間停止を解除した。
(5)
「聞き分けの無い人ね。それなら力ずくで去って貰うわ」
「人の話を鵜呑みにする巫女に言われる筋合いは無いな」
(4)
「何ですって!?」
「まだ気付かないのか?お前達のやっている事が」
(3)
「そんな事位知ってるに決まっているでしょう!!あの邪悪な狼人を浄化するのよ!」
「……やはり、お前は何も知らないんだな」
(2)
「どういう事……」
「そのままの意味だ。……言われた事を鵜呑みにして、自分での思考を避けた」
(1)
「うっ……」
「ついでに言うとな。……お前の術はただ教えられた事を実戦に使っているだけだ。
俺をそんな術で縛る事など出来ない」
(0)
「こんな風にな」
そう言うと同時に、サンダー達3人の束縛が光と共に消滅した。
後ろに居た巫女が慌てて術を行使しようとするが、次の瞬間そこにはサンダーしか立っていなかった。
慌てて周囲を探すと、樹の真ん中辺りに疾走する2人を見つける。
しかし、それを撃ち落とそうとした神職は、サンダーによって昏倒させられた。
「2人の邪魔はさせない」
「貴方、自分のしている事が分かって……」
「その言葉、そっくり返そう。お前達は今自分が何をしようとしているのか分かるのか?」
「決まっている!あの穢れた狼を浄化するだけだ!」
サンダーは溜め息をつくと、剣を大振りのサバイバルナイフに変えた。
「1つ教えておこう。お前達が今言った『穢れた狼』というのは、神霊族の1人で、夢を司る者、そして全ての狼の頂点_____ナイトメアフェンリルの『ソムニス』その人だ」
手で弄んでいたナイフを向け、サンダーは更に言い放つ。
「あの人がいれば確実に止めただろう、あの人は彼に会った事があるからな」
「そ……それと今のこの状況と何の関係があるのよ!」
「俺は、あの人と約束した。お前が道を外れそうになったら、俺が止めると。
_____さあ、始めよう。言っておくが、手加減などしないからな。『リベレーション•ドラゴンソウル•ホワイトウィンド』!」
その瞬間サンダーが白と黄緑の風に包まれ、近くに居た咲耶達を吹き飛ばした。
咲耶は3リメル程後退しつつも辛うじて転倒を避け、目の前の敵を驚愕の表情で見詰めた。
白く輝く羽毛と翼、そして黄緑色の焦点の無い目を持つ竜人に変化したサンダーは、右手のサバイバルナイフを咲耶達に向けた。
「2人の邪魔をするなら、容赦しないよ……」
対して咲耶は大幣を構えると、サンダーに向けて言い放った。
「それなら、貴方を倒して進むだけよ!」
一瞬の沈黙の後、2人は相手に飛びかかった。
今回は説明無しです。
思い付いたら書くかもしれないです。




