howling 2-1
2人+1匹(狼、ただしヘタレ)登場。
ついでにファイア初戦闘シーン。
次の日。
サンダーとファイアは霧がかかった通学路を歩いていた。
「……なあ、ファイア」
その道中、黙って歩いていたサンダーが唐突にファイアに話し掛けた。
「何だ?」
「ウィンドはともかく、他の……スティリア達とかはどうして俺達よりも遅いんだ?」
「お前……そんな事も知らなかったのな」
ファイアが呆れたように溜め息をつく。
それでもしっかりと説明する所は、流石共同体一のムードメーカーだと言えるだろう。_____サンダーが家族の動向に興味が無いのを知っていたのも1つの理由だが。
「えーっとだな……。
確か、スティリアとルミナスは自分の準備があるだろ、それからダークは朝の鍛練があって、それから……あれ?アクアは何してるんだ?」
どうやらアクアの動向だけはファイアも知らないらしい。
それを聞いたサンダーは、ファイアを少しからかってみた。
「許嫁なのにアクアの動きを知らないのか。他のは知ってるのにな」
「ぐっ」
少しファイアがうろたえた所に、サンダーが追撃を重ねる。
「アクアに言っておくか。ファイアが浮気してるんじゃないかって」
「それは勘弁してくれ!!」
サンダーの無慈悲な追撃に、ファイアは悲鳴を上げた。
「それはそうと、ファイア」
「なんだ……?」
5分後。まだぶつぶつ言っているファイアの気分転換を図るために、サンダーは話し掛けた。
「囲まれたぞ」
「……へえ」
否、注意を呼びかけた。
「モンスターだ。Aランクが4体、Sランクが1体」
「最近の結界は穴だらけだなー。全く、どういう管理してるんだか」
央京を覆う結界の杜撰な管理に文句を言いつつ、ファイアは目の前の空間から武器を取り出した。
鞘は黒の地に紅の昇り龍という凝った意匠。
柄も黒ずんだ赤に金の格子、刃部は黒く光を反射して、薄い炎の神力と竜気を纏っている。
『竜滅刀•火之迦具土』の銘を与えられたそれを鞘から抜き放つと、ファイアは上段に構える。
対してサンダーは、いつもの双剣を片手剣に変換(何気なくやっているが、これも高等技術だ)して、空いた左手を前にかざして呪文を唱えた。
「リリース•ドラゴンブレイヴ•ライトニングバースト」
瞬間、左手首の腕輪に嵌っていた黄色の水晶が、ささやかな破砕音を立てて同色の粒子となった。
そのままサンダーが剣を横に寝かせた状態で右手を立てると、その粒子は右手に集まって、ガントレットになる。
そして状態を確かめるように軽く剣を振ると、下段に構えた。
「さーて、いっちょ始めますか」
「さっさと終わらせるぞ」
背中合わせで構える2人が、互いに言葉を交わす。
奇しくも、それが戦闘開始の合図となった。
不意に、並木の陰から黒い風が飛び出す。
狼のような形をしたそれは、そのままサンダーに牙を立て_____ようとした。
だが。
「遅い」
次の瞬間、それはサンダーの剣によって縦半分に両断されていた。
サンダーの後ろ、ファイアの斜め前からも来るが、それに肉薄したファイアによって挽き肉にされていた。
踏み込みからの切り上げで最初の1体を屠ったサンダーは、目で追えない速度で跳躍していた。
攻撃を回避された個体が突進を仕掛けるも空中横回転で難なくかわされ、その姿勢のまま2枚に捌かれる。
それが落下と同時に湿った音を立てた時には、後ろから襲いかかっていた個体が消し炭にされていた。
「……ありゃ?」
その瞬間的に相手を燃焼させた張本人は、あまりの手応えの無さに拍子抜けしていた。
「もう終わりか?おっかしいな~、あと一匹いたはずなんだけど」
「見つけた」
「きゃいんっ!」
後ろの声に振り向いてみると、サンダーが同じ位の大きさの灰色狼をホールドしている所だった。
「……お前なにしてんの」
「敵意が無くなったから捕まえた。それだけだ」
「いや、それだけって……」
_____ちなみに、その捕まっている方は、既に戦意を失っているどころか怯えて震えていた。
もしかすると、いや、もしかしなくても確実にヘタレだこいつ。_____などと思ったファイアは、取り敢えず状況を何とかしようと思った。
「ちょっと横いいか」
のしかかるように捕まえていた(どう考えてもその大狼の方が重いのに、何故か動けないようだった)サンダーに声を掛け、その大狼の前にしゃがむ。
「俺の話が分かるか?」
それの目には明らかに怯えの色が見えていて、ファイアの質問にすぐにくびを縦に振った。
「ん、よし。_____じゃあ、お前には2つ選択肢がある」
目の前のそれが話を聞く姿勢になったのを見ると、ファイアは続きを言った。
「1つは、このまま結界の外まで何もしないで戻る。2つ目は、外に戻らないで俺達の家で飼われる、だ。
_____で、お前はどっちを選ぶ?」
『嘘で釣って殺したりしないっすか……?』
「しねーよ。って言うか、それに何の得が有るんだよ」
『そ、そうっすよね……』
_____この時、ファイアが『本当にお前ヘタレだな』と一瞬口に出しそうになり、慌てて抑えたという事を言っておこう。
『じゃあ、お邪魔させて貰うっす』
大狼は少し考えてから、そう言った。
それを聞いたサンダーは、ホールド状態を解除する。
「そうか。最近オフィリスが『やっぱり竜人やドラゴン以外の子も来て欲しいわね~』って言ってたから、丁度良かったんだよな」
『つまり自分は運が良かったって事っすね……』
「……別に殺さないし、変な真似をしない限りはお仕置きしないよ、俺達は」
『優しいんすね、サンダーさん達は』
「良く言われるな」
ちょっと談笑した後、ファイアが話を進めた。
「取り敢えず、皆に紹介するのは後にして、まずは登校しようぜ」
「そうだな。ええっと……」
『ミカゲっす』
「そうか。じゃあ、ミカゲ。暫く遁甲しててくれないか」
『わかったっす』
そう言うと、ミカゲはファイアの影に沈んだ。
『しばらくお邪魔するっす』
「おう。こっちこそよろしくな。
……じゃ、行くか」
「そうだな」
2人は周囲を確認すると、次の瞬間霧を吹き飛ばして空中を跳んでいった。
『眩暈がするっす……』
「流石に速過ぎたか?」
3分後。
無事に学園に辿り着いたサンダー達は、まだ人の居ない教室で話をしていた。_____ちなみに、ミカゲは10セル位の小さな姿で机に伏せている。
「これでもサンダーにはかなわないんだよな~」
「俺もウィンドには勝てないよ」
『基準が分からなくなって来たっすよ……』
そうしていると、教室に2人の男子生徒が入って来た。
1人は白黒の体毛を持つ虎獣人。髪と目の色が黒曜石を想起させるような黒だが、瞳の輝きは彼の気さくさを感じさせる。
もう1人は狼獣人。どうやらハイエルフとのハーフらしく、今はエルフの姿だ。
尻尾と獣耳、髪の色は若草のような緑。目は蒼く、サンダーの方を心配と興味が混ざった視線で見ている。
「お、2人共。今日は早いな」
そしてどうやら、ファイアとは仲が良いようだ。
「ファイア、その2人は?」
「ん?ああ、お前は知らないよな……。
ええと、こっちの虎人が黒蓮 白虎。んで、そっちの狼人がローグ•リゼラス。昨日知り合ったばっかだな」
「黒蓮白虎だ。よろしくな」
「ローグ•リゼラスです。……あの、新入生総代のサンダー•ライトロードさんですよね?」
「……あ、ああ」
少し嫌な予感がして、サンダーは一瞬答えに詰まった。
そして当然の如く、それは的中した。
「やっぱり、あのサンダーさんなんですね!クラスの皆が噂してましたよ、サンダーさんがこのクラスに来る、って!」
急に目を輝かせたローグのセリフに対し、
「俺は何時からそんなに有名だったんだ……?」
と、困惑を隠せないでいた。
「そりゃあ、期待の新入生総代だもんな。ま、俺達はそんな事気にしないけどな」
「_____そうか。じゃあ、2人共。これからよろしくな」
「おう!」
「はい!」
そうやって楽しそうに話す3人を、ファイアは安心したように見ていた。
『……どうしたっすか?ちょっとほっとしたような感じっすけど』
「……ああ。いや、ちょっとな。あのサンダーが珍しく他の奴と調和してるな~、って思っただけさ。
……あいつ、今まで友達とかいなかったしな」
『そうなんすか……』
理由を聞いたミカゲも、その後暫くファイアと一緒に傍観していた。
※追加説明※
◎モンスターランクについて
ファルド文字(アルファベット)と数字で表される、モンスターの指標の事。
最低はE5、最高はSSS0+。
+(プラス)、-(マイナス)はモンスターが亜種の時に付き、原種より強いと+、弱いと-が付く。
ちなみにミカゲはブラックウルフ(A0ランク)の亜種、の更に亜種である『アシッドフェンリル』なので実質的な強さはS5ランク。だが、ブラックウルフの亜種の中でもかなり希少な部類に属するので、S3+ランクにランク付けされている。
◇ファイアの武器
今回は刀。描写が大変だなあ……。
『竜滅刀•火之迦具土』
ATK+10411
SPD+5541
STR+8099
MAG+10065
VIT+7988
属性 炎•闇•聖
備考 竜殺呪付加
EXスキル 「八方竜鬼炎獄陣」
EXスキルはどこかで一気に紹介します。




