第二話 愛されるのが遅かった少年〜二宮拓司〜
幼い頃は幸せだった。簡単な事を出来れば褒められた。入試に受かれば抱きしめ喜んでくれた。でも、この世界は意地が悪い。僕の価値を分からなくしてしまう。愛する両親を狂わせる。
「愛してるよ。」
それが、最後の言葉だ。
私は、ランドセルから水筒を取り出し。蓋を開ける。上についているカップを床に置き、透明な液体を注ぐ。さきイカと柿ピーも忘れずにランドセルから取り出す。寒いときには、これを飲むのが一番ね。
「宗太郎がいないと。ホント暇だわー。」
カップに注いだ液体を飲みながら、芋の風味をしっかり堪能していた。
暇つぶしには、「アレ」が一番楽しいのだけど。宗太郎がいないところでやると、何時かみたいに危険な目にあってしまうから、やらない。
「ふぅ、たまには芋もいいわね。」
私は、行くべき所にも行かず。数年後行くべきところの屋上で、芋飲んでいるのかしらね。
それが少しおかしくて鼻で笑った。
長い話が終わり下校時間になっていた。
「あーやっと終わった・・・・。俺は少し悪いことすれば報復が来ると教えただけなのに。俺が悪者扱いされるとは。」
あの、野郎が自分でやったくせに被害者扱いかよ。
「いやぁ・・・・。いくらなんでも、君が泣くまで殴るのを止めない!とか言いつつ。泣いても止めなかったし。藤盛屋君ママとか連呼してたよ。」
加藤良子が帰るのを待っていてくれたようだ。
「トイレで見たんだって。一年生が恐喝されてる所を。なのにアイツ本当のこと言わねーし。」
「でも、殴っちゃ駄目だよ。」
「最初は説得したさ。そしたら、藤盛屋のやつモップで殴りかかってきて。目潰しを投げてちょちょいと。」
「まぁ、戦い方は卑怯だけど。そんな優しい宗太郎君が素敵なんだけどね。」
褒められたからうれしかった。
「しかし、男子トイレに女子連れ込んで金を巻き上げるヤツなんてどーせ怒られるなら、もっとやっておけばよかったかな・・・・。」
「そ、それ違う。・・・生まれた事を後悔させても良かったんじゃない?」
「きゃっっほい!!!」
いきなり後ろから強烈な重みが。
「こころ!また勝手に忍び込んだな!」
「だって。暇なんだも〜ん。」
俺の背中にしがみつき、強烈なにおいを出していた。
「お前、アルコール臭いぞ!」
「飲んでないわよ。ちょっと理科の授業中にエタノールぶっかけられただけよ。」
「相変わらず仲良しねー。このロリコン鈍感男。」
加藤は微笑みながらも、顔に似合わない毒を吐いた。
「あー眠いわ。私寝る。」
大きなあくびをした後、俺の背中で眠りについた。
「あ、おい起きろ。家に帰ってから寝ろ!」
「駄目だね。完璧に酔ってるよ。これは家まで送ってあげるしかないね。」
「あーもーしょうがねぇ奴だな。」
「送り狼にならないようにね?」
加藤がニヤニヤしながら言っているが。意味が分からん。
「送り狼って何だ?」
「カマトトぶってんじゃねーわよ!」
怒られた。
「頭痛い・・・・。」
「お前みたいな小学生探しても二人と居ないだろうな。」
メーラーを起動して黄色で書かれた新着メールの文字を見ていく。大体はダイレクトメールだ。
「ごめん。宗太郎がいなくて暇だったのよ。」
「だからってそれは良くないだろ!」
「じゃぁ宗太郎が授業サボればいいのよ!」
「無理言うな!」
こころがパソコンのほうをじーっと見つめてる。
「ん。少年エロサイトか?思春期満開か?私というものが居ながら二次元か。このロリコンやろう!電脳の海に消えちまえ!」
「エッチなのはいけないと思うから。見ないよ。あーほれついに来たぞ。」
新着メールを開いた画面を指差す。
「戦闘兼家政婦専用アンドロイドみたいな事を抜かしつつ。その指で・・・・私を犯るのか!というのは冗談で、どれどれ?」
「戦闘兼家政婦専用アンドロイドって何だよ?」
「側頭部から髪の毛がみょんとでた家政婦よ。知らないなら知らないでもいいのよ。めんどくさいからメール読んで。」
「HP見ました。
私には一人の息子が居たのですが・・・。
一年前に遺書も残さず自殺しました。
どうかお願いします。息子が何を思って死んだのかを息子から聞いてください!
だって。ちょうど明日は土曜日で休みだ、どうする?」
「息子が死んで、まだこの世に居ると思いたい親か・・・・。やりましょう。」
「なぁ。現に残っているじゃないか。大二郎の霊のときみたく。」
「それは、宗太郎が主観的になりすぎてるだけ。普通の人ならHP見ただけで嘘だと思うわ。よほど、その子から理由を聞きたいのね。」
たしかに、普通ならいんちき臭く思うだろうな。子供の死は親も狂わせるってか。
「なら。OKのメールを出すぞ。」
ご依頼、ありがとうございます。
以下の必要な情報をいただければ、即調べに行きます。
息子さんがお亡くなりになられた場所。
息子さんのお亡くなりになられた時の特徴(身長、髪型、格好、体格)
名前と家族構成は息子さんから聞きますので結構です。
翌日
「何ここ霊がいっぱい居るじゃない!これじゃ特定できないじゃない。」
寂しげな廃ビルには大量の霊がいた。
「寂しいのは廃ビルじゃなくて。ここにいる人たちかもな。」
「詩的なこと言ってないでどうするの。一人づつ見て行けって言うの!?」
「そんなことしたら日が暮れるよ。だから、特徴を聞いたんだろ?」
「あんなサウンドノベルの人物みたいなの見分けつくわけ無いでしょ!」
「実は、よく見るとな、その人がどんな姿だったか見えるようになったんだ。」
だから、この商売を始めようと思ったんだ。
「なに?その特技私そんなの持ってねーわよ!」
「でも、この量は半端じゃないな。こころ気をつけて歩けよ?少し触れただけで読み込んじゃうぞ。」
「分かってるわよ。両手を隠せば問題ないわ。」
エントランスに入りあたりを見回す。
1流企業だったのか高そうな絵が並び豪華なインテリアが並んでいる。
「あの、絵とか持ち帰って売れば金になんねーかな・・・?」
「それは、犯罪よ。ここに入り込んでるのもだけど。でも、それ皆贋作で価値は無いわよ。価値があるなら倒産したときに皆持ってくわよ。」
「贋作?まぁ用は金になんないのか。」
エレベーターは・・・さすがに動かないか。
「階段しかないわね。」
「そこにF1てプレートに書いてあるドアがあるぞ。アレじゃね?」
「宗太郎、ちょっとしゃがんで。」
「ん、ああ。何でだ?」
とりあえずしゃがむ。急にこころが背中に抱きついた。
「よっしゃ。レッツゴー、がんばれ宗太郎!」
「歩けよ!畜生、やってやるぜ!」
階段を駆け上るそれはもう苦痛だった。
屋上に着いたらなんて叫ぼう。
いいよな、これは言っちゃても。
やった、屋上だ!
「エ・・・・・!」
「エーイドーリアーン!!!」
こころに横取りされた。
「今、すごく泣きそうになった。」
「ごめん・・・・。」
本当に申し訳なさそうだった。
すぐ立ち直って。ゴールの扉をこころに開けられた!
「畜生!」
「あ、いやなんだかよく分からないけどホントごめん!」
「屋上に霊は居ないな。」
「しっかし高いわね。30階くらいあるんじゃないの?」
「屋上のくせにやけに広いし。」
「あそこに何か居るわ。」
「あーホントだ・・・。体育座りしているぞ。」
「宗太郎の聞いた特徴とあってる?」
お坊ちゃんヘアーで顔にほくろ1つ、やや肥満気味。
「ばっちりだ。」
「じゃぁ、はじめるわ・・・。」
こころが両手で少年の頭に触れる。その場に倒れる。
あーそうだ起きたら、その人間になりきるんだ。ということはだ、このまま放置したらこいつになりきって飛び降り・・・。
「らめぇぇぇ〜!落ちちゃう!」
とりあえず、こころの両手両足をロープで縛っておきました。
こころの寝言が始まった。
「ちょっと、手首とか足首が痛いんだけど何かした?集中したいから邪魔しないで。ってこいつかなり病んでるわね。ちょっ、やめなさい!」
こころの寝言が終わった。
「こころ!大丈夫か?」
頬をペシペシ叩く。
「目を覚まさせなきゃ。死ねば僕は愛され悲しんでくれる。」
「こーこーろ、目を覚ますのはお前だ!」
「っつ。あー怖かった。この恐怖がたまらなくいいのよ。ってこのロープ何!?ついにやる気か!でも、宗太郎ならいいよ。」
「良かった、戻ったか。」
こころを縛ったロープを解く。
「何で解くのよ!このままがっといけよ!畜生、ぐれてやる!」
「十分ぐれてるよ・・・・。」
「でも、どーせ受験勉強で疲れてましたーって話だろ?」
「そうね。愛が確かめたかっただけ。死ぬことによって悲しんでくれるなんて分かっていた。でも、それが純粋に愛する者が死んだことによる悲しみなのか。親が老後のあてにしていた者が死んだことによる悲しみか。知りたかったのね。本人は当たり前だけど前者を強く願っていたけどね。」
「親から愛されているか分からない可哀想な奴もいるもんなんだな。何か、両親に伝えたい事ってあったか?」
「ええ。「生まれてよかった。愛してる。」と。」
「へ。それだけ?」
「死んでから両親の気持ちが分かったみたいね。」
「俺も愛されているか試したくなるときが来るのかな・・・。」
「それは、大丈夫。だって私が愛してるもの。」
「そうか、それは安心だ。」
「脈なしかよ!この、鈍感ロリコン野郎!」
第2話愛されていた受験生〜拓司〜
ストーリーの肝心なところが出始めました。
まだまだ続くんでよろしくお願いします。
感想・おかしいところがあれば指導してください。
全部おかしいってのは勘弁してください・・・・。