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第8話 変態と念写

今までより長いです。また、変態的な描写が多いです。

「ぐへ、ぐへへへへ」


 横浜に小さく響く汚い声。その声の主はある女の子を見据えている。主は目を大きく開き、思い切り閉じる。そして、懐から写真用紙を取り出した。そこには、その女の子が写っていた。


「げへへへへ…すんばらしい力だ…これさえあれば…ぐひひひひ」


 男は口周りに生えた髭をいじりながら、低く笑った。



 僕は朝起きて、すぐに風呂に入った。大仕事の後の風呂は気持ちいい。30分かけてゆっくり入った。髪をかわかし、とりあえずXenoArtsの制服を着ておいた。ゼノンスーツとは違って、ゼノンを活性化させるわけでは無いようだ。今日は流石にゆっくりしたい。僕はテレビボールを点け、ソファーに座り込む。どの番組も面白くない。しょうもないお笑い。陰惨なニュース。どうでもいい子供向け番組。ゲームでもあれば面白いのに。と思っていたら、部屋の隅にゲーム機があった。最新型の3D体感型アクションゲーム。やってみるか、と電源を点けようとした時、チャイムが鳴った。


「よっ、目覚めはいいか」


 誠一だった。誠一も既に制服を着ていた。


「どうした、何の用だ」


「おいおい、そりゃねぇだろ。ロビーで会議だってよ。行くぞ」


「こんな朝っぱらからかよ!ったく、だりぃな…」


 僕は渋々付いていくことにした。何の会議だと言うのか。



念写(ソートグラフィー)能力者が現れました」


 探知(ディテクション)能力者の賢吾が眼鏡を押し上げながら言う。相変わらず不愛想な奴だ。朝からそんな顔を見せつけるんじゃない。


 会議には僕と花音、誠一、志乃、賢吾と後二人、見たこと無い女が二人いた。一体どういう面子なのか。


「と、いうことよ。じゃあ、紫苑くん、志乃さん、乃愛さん、忍さんは調査に行って頂戴」


「は?何の調査だよ」


「そりゃ、念写能力者の調査に決まってるでしょ。念写なんて能力は戦闘には使えない筈。すなわち、恐らくそいつは中立。ただ、その能力を何かしらのことに使ってるのは間違いない。だから、その能力者の動向について探ってほしいってわけ」


「なんだ、その程度か。大した仕事じゃねぇな」


「それはどうかな。案外厄介な事になるかもよ」


 花音が意味ありげな笑みを浮かべる。相変わらずよく分からない女だ。


「じゃあ、送り迎えは私がするから、四人とも宜しくね。さ、発進場に行こう」


 花音が椅子から立ち上がると、作戦メンバーが次々立ち上がり、いつの間にか待っていた発進場行きのタクシーに乗り込んでいった。


「じゃあな、頑張れよ紫苑!」


「ああ、ありがとう」


 誠一が手を振って送ってくれた。心強い奴だ。僕もタクシーに乗り込む。そして、前と同じぐらいの恐ろしいスピードで爆走した。



 発進場からジェット機に乗り、目的地である横浜に向かう。僕はタブレット型のゼノン探知機を渡された。


「それで居場所を探って。いきなり捕まえる必要は無い。相手が何を行っているかを探るの。相手の家に勝手に入っても構わない」


「何故最初から捕まえない」


「相手の性格がひん曲がっていた場合には記憶とゼノンを消すだけじゃなく、警察に突き出す場合もある。そこら辺の証拠を握るの」


「そうなのか」


 しかし、何とも居心地の悪い場所だ。自分以外に男がいない。他の四人は全員女。気まずい。話せる人も特にいないとは何て辛いことだ。ハーレムに憧れていた時期もあったが、あまり嬉しいものでもないことが分かった。


「そうだ。乃愛さんと忍さんは紫苑くんと初めて会ったんだっけ。自己紹介でもしたら?」


 花音が話題を振る。女と話すのは好きじゃない。何故かと言うと、よく分からないから。花音とも仕事関係の話だから話せてるのであって、普通のことになると話せない。


神谷乃愛(かみやのあ)です。宜しくねっ」


 元気そうな娘だ。こんな娘もゼノンヒューマンだと言うのか。しかし、一体何の能力を持ってるのか。


仙道忍(せんどうしのぶ)だ。以後宜しく」


 まさにクールと言った感じだ。目を閉じ、腕を組み、精神を整えている様はまさに忍。よく見ると、腰には小刀や手裏剣、背中には日本刀をかけている。コスプレイヤーなのか?大体どんな能力者なのか察しはつくのだが…


「そうか…僕は日向紫苑だ。まあ宜しく…」


 僕はそのまま女共と目を合わせないよう、窓の方から景色を見ることにした。横浜なんか初めて来た。東京から出たことは無かった。というか家からも全然出たことは無い。


「さ、着いたよ」


「しかし速いな…たった30秒で着くとは」


 ジェット機はゆっくりと家が辺りに無い場所に着陸した。そして、僕と花音を除く女三人がジェット機から降りた。


「じゃ、ここで待ってるから後は宜しく。で、紫苑くん。くれぐれも人のいる所で能力は使わないでね」


「は?なんでだよ」


「何回も言ってるでしょ。ゼノンの存在は外部の人間に知られてはいけない。まあ目立つ能力じゃなければいいんだけど。紫苑くんのは目立つ能力ばっかだからね」


「ああ…分かった」


 だったら何で僕を作戦メンバーに入れたんだよ…そうツッコミそうになったが、女共がさっさと歩いて行ってしまったので、僕も付いていくことにした。ゼノン探知機を確かめると、意外に近い場所にいる。さっさと奴のやったことを確かめて、さっさととっ捕まえてやる。



「りなちゃん、何して遊ぶ?」


「うーん、何して遊ぼうか!」


 女の子二人がゲームランドで遊んでいる。最高の笑顔だ。これはいい画になる。リュックサックを背負い、大きな黒縁丸眼鏡をかけ、汚い髭を生やした太い男。子供の多いゲームランドでは異様な光景だ。そんな男が、その女の子二人に向けて大きく目を見開く。そして、思い切り目を閉じる。そして、怪しい笑みを浮かべ、懐から写真用紙を取り出す。その女の子が写っている。


「げへへ…いやぁ、いい能力を貰えたもんだ…あの変な男には感謝しねぇとなぁ…ぐふふ…」


 あいつだ。あいつが念写能力者だ。見るからに気持ち悪い男だ。今すぐ捕まえたい所だが、証拠が無い。あいつの家に行くことにするか。きっと証拠がある筈だ。


「行くぞ。あいつの家に」


「うん、分かった」


 志乃と乃愛が返事をする。忍は軽く頷くだけだった。



「ここが奴のアパートか」


 今時かなり古臭いアパートだ。ここら辺では一番安いんじゃないだろうか。僕らはとりあえず入ることにした。ロビーには管理人らしき人が頬杖をついていた。その管理人に乃愛が話しかける。


「あの~すみませ~ん。このアパートに髭の生えて、丸眼鏡をかけた~、太っちょな男の人はいますか~?」


 柔らかい口調で結構失礼なことを言う。相手は犯罪者なのだから失礼でも無いのだが。


「ああ…その男は…2403号室ね~」


「どうもありがとうございました!」


 乃愛は軽くお辞儀をして、僕らの元に戻ってきた。僕らは顔を見合わせ、エレベーターに乗り込む。24階のボタンを押すと、扉が閉まり、のろのろと上がっていく。24秒かかって24階に着く。扉が開くと、長い長い廊下が続いていた。


「2403…ここだな」


 最近では珍しく鍵で開くシステムだ。しかし鍵は無い。どうすればいいのか…


「この程度…余裕だ」


 忍が言うと、細い針金を出し、鍵穴に突っ込んだ。そして、軽くかき回すと、あっさり開いた。酷いセキュリティだ。扉が開く。中はカーテンが閉まっているらしく、暗い。恐る恐る中に入る。そして、思わず息を飲む。


「な、何これ…きもっ…」


 志乃が思わず呟く。僕も大きなため息をつく。廊下の壁一面に大量の女の子の写真が貼っていたのだ。皆純真無垢な表情で笑っている。何一つ汚れの無い顔だった。僕らは更に進む。部屋が三つあった。風呂場。防水加工されて大量の女の子が貼られてある。トイレにも余す所無く敷き詰められている。寝室にも大量のの写真があった。壁どころか家電にも貼り付けられていた。そしてリビング。床に及ぶ程の大量の写真。思わず目を疑う。これは酷い…


「きゃっ、まさかロリコン?」


「見なくても分かるでしょ、乃愛ちゃん…やばいよ。犯罪者だよ」


 志乃と乃愛があからさまに気持ち悪そうな顔をしている。忍は表情一つ変えていないが、内心どう思っているのかは大体分かる。僕だって気持ち悪い。とんでもない性癖の持ち主だ。だが、これはかなり良い証拠になる。


「皆、これはいい証拠になるぞ。ありったけの写真を奪うぞ」


「う、うん…」


 不愉快そうな表情で志乃と乃愛が返事をする。忍は軽く頷くだけだ。試しに写真を引っぺがそうとするが、全然取れない。超強力ボンドでも使っているのか。こんなことには使いたくないが、仕方なく観念動力で剥がしていくことにした。忍は小刀で切り取っている。志乃と乃愛は大分苦戦しているようだ。


 とりあえず全員10枚ずつ持つことにした。これを男の能力を消した後に警察に突き出せばいい。ここであえて記憶を消さないのも面白い。そんな底意地の悪いことを考えていると、志乃が呟く。


「これ、ある女の子の写真だけ凄く多い気がするんだけど…」


 志乃が指差す女の子は、見た目は小3ぐらいで、髪が短く、笑顔の可愛い娘だった。確かに、辺りを見回すとその女の子が異様に多いことに気付く。


「恐らくこの女の子が本命なんだろうな…さて、騒ぎを起こさずいかにして能力者をおびき寄せるか…だが、乃愛、忍。お前たちの能力は?」


 二人が能力を告げる。成る程。花音がこの四人を作戦メンバーにしたのはこの作戦をしやすくするためなのか。この作戦なら奴を捕まえられる…!僕は思わず笑みを浮かべていた。



「さて、次は誰にするかな…」

 

 男はハンバーガーを食べながらのそのそ歩く。なかなか小さな女の子が見当たらない。それに、最近あの大本命の女の子も見当たらない。一体どこに行ってしまったのか。早く、早くあの子を撮りたい。早く、早く…その時。目の前にその女の子が現れた。


「あ…あ…みっちゃん…みっちゃん…」


 来た。彼女は最高の笑顔でこっちを見ている。最高のシャッターチャンス。そう思って、目を大きく見開く。が、女の子は突然後ろを向いて走り出す。


「なっ!」


 男は慌てておいかける。しかし、体に付いた贅肉が邪魔だ。追いつけない。だが、絶対に追いついてみせる。男は今出せる本気の力で走った。女の子はどんどん走る。疲れて死にそうだが、このシャッターチャンスを逃してはいけない。今逃したら次にいつ会えるかも分からない。


 気がつくと、いつの間にか路地裏に来ていた。さっきまでと違い暗い場所だ。小さな女の子がこんな所に来てはまずい気がするが、今そんなことを考えている暇は無い。女の子は曲がり角を曲がりまくる。必死に付いていく。が、とうとう見失ってしまった。


「そ、そんな…」


 男はその場にへたり込む。一気に疲れが襲う。死にそうだ。最後にあの笑顔を写真に収めたかったが…夢破れたり…そっと目を閉じようとすると、足音が近づいてくる。


「だ、誰だ!」


 男は立ち上がり、こちらを向く。そこには忍がいた。さっきの女の子は変身(オウィディウス)能力で化けた乃愛だった。そして、志乃の千里眼(クレヤボヤンス)能力で乃愛の位置を見定め、ここに来たのだ。


「変態…覚悟!」


「だ、誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ」


 忍は有無をいわさず、小刀を腰から抜き、猛ダッシュで男に襲い掛かる。リュックサックが切れ、中から大量の写真が溢れ出る。


「ああ!僕の女の子達が…」


 男は急いで写真を服に詰めると、忍の反対方向に猛ダッシュで逃げる。だが、そこには何故か忍がいた。


「な、な、な、」


 男は更に別の道を進むが、そこにも忍が。更に反対方向に逃げても忍がいた。


「忍法…分身(バイロケーション)!」


 あくまで忍法では無く、ゼノンの能力である。男は完全に包囲された。顔から大量の汗が噴き出る。


「し、仕方が無いな…」


 男は懐からナイフを取り出す。


「ぐへへ…僕の邪魔をするなら…死ね!」


 男はナイフを持って突進する。だが、忍の手裏剣がナイフに当たり、ナイフは吹っ飛んで行った。そして、忍は日本刀を抜き、男の腹に突き出した。


「貴様の罪は重い…腹を斬れ」


「う…命だけは…」


 男は項垂れ泣き始めてしまった。そろそろ出てもいい頃だ。僕は瞬間移動で男の目の前に現れる。


「ひぃっ!」


「よく聴け。お前が今までやってきた行為は犯罪。その念写の能力はゼノンという力によるものだ。どうせ怪しい男にでも渡されたんだろう。お前はその力を誤った方向で使ってしまった。だから、僕らはお前の能力、記憶を消さなければいけない。そして、警察に出さなきゃならない」


「き、記憶なんてどうでもいいから…警察は…」


「ふざけんな。自分の罪を認めろ。さもないと…」


 僕は観念動力で男の首を絞めつける。苦しそうに悶える。


「分かった…行くよ…行けばいいんだろ!」


「ああ、そうだそれでいい。だが、ひとまず僕らの施設に来てもらわないといけない」


 こうしてジェット機で男を運ぶことになった。かなりきつい。もっと痩せた奴だったらよかったのに…志乃と密着している。志乃は顔を赤らめていた。何考えていやがる…



 取調室ではあんなことをした動機を訊かれた。ただ単に小さい女の子が好きだからだという。やはりロリコンだ。ゼノンはやはり中立だった。変なスーツの男から貰ったらしい。飲んでみると激しい苦痛に襲われたが、気付くと念写能力を得ていたらしい。


 言ったことはそれだけだった。とりあえず二度と力を使えないようゼノンの力を消去した。そして、記憶操作でゼノンの力で撮った記憶だけを抜き、女の子達はカメラで撮ったことにした。そのまま男を警察署に連れて行った。男はあっさり逮捕され、事件は終わった。

長いので、中途半端な所で切ってます。

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