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第5話 初仕事

いよいよ戦闘回です。

 走る。走る。マンションから出ると、そこには小型の車が待っていた。運転席の窓が開き、「早く乗るんだ」と急かされる。扉が勝手に開いたので、僕らは急いで車に乗る。そして、扉を閉める間も無く、猛スピードで走り出した。


「こんなに飛ばして大丈夫なのか?」


「ああ。これはこの広い広いXenoArtsを素早く移動するためのタクシーみたいなもんさ。実は目的地までの情報がインプットされてるから、運転する必要も無いし、事故も無い。しかも最短ルートで目的地まで連れてってくれるんだ。すげぇだろ」


 これもゼノンの力だというのか。しかし、さっきから妙に体が落ち着かない。ゼノンスーツを着てからだ。瞬間移動(テレポーテーション)も今なら使える気がする。だが、今は使ってはいけない気がしたので、使わないでいた。


「運転している人は誰なんだ?」


「ゼノンタクシーの専属運転手の福田さんだ。ロボットじゃなくて、普通の人間さ」


「そうなのか…で、敵はどんな力を持ってるんだ?しかも、大阪だろ?遠くないか?」


「さっきも言った通り、大阪を氷漬け…つまり氷結(フリージング)の能力者だ。俺の発火(パイロキネシス)能力と対を成す力だ。まあ、まだ間に合うだろ。大阪なんてゼノロボさえあればものの10分で着くさ」


「10分?そんなに速いのか…」


 感心している内に、発進場に着いた。一台の巨大なロボットが待機しており、その足元には花音とコノハがいた。しかし、凄い光景だ。僕らは急いで車から降りて、花音の元に駆けつけた。


「遅い!何してたの。早くエレベーターに乗るよ」


「エレベーター?」


「ゼノロボに乗るには胸部の操縦室に入らないといけないんです。ささ、乗って下さーい!」


 コノハが言う。それに従い、ゼノロボの正面足元にあるエレベーターに乗る。エレベーターは凄いスピードで上がり、あっという間に操縦室に着いた。開かれている胸部に飛び乗る。


 前に見た光景だ。あの時、花音に撃たれた場所。僕らが乗ると、胸部は閉じる。


「いい?大阪に着いて、敵を確認したら、まず、異界(ゼノフィールド)を展開する。そして、あなたたちを降ろす。しっかり戦ってね。あくまで殺すことは目的じゃない。相手の戦意を喪失させ、能力を消すこと。分かった?」


異界(ゼノフィールド)ってなんだ?」


「異界…つまり、この世界とは異なる世界を展開するの。ここと全く同じ地形なんだけど、人は一切いない。だから、人の命を守ることが出来るし、街の被害も防げる」


 なるほど。そんな世界が存在するのか。だから、この世界の住人はゼノンの存在を認識することは出来ない。


「ああ。分かった。それでさ…訊きたいんだが、このロボットの名前ってなんなんだ?」


「ゼノギウス…だけど、それがどうしたの?」


「いや…ゼノロボって言うのも何か変だし」


「まあ、そうだね。ゼノギウスは私がゼノロボ組に入ってからずっと乗ってきた愛機。喋ることは出来ないけど、心は通じ合ってるはず。そう信じてる」


 ゼノンが入っているロボットは感情を持つんだっけか。しかし、何故小型のロボットは喋ることが出来るのに、巨大ロボットは喋ることが出来ないのだろうか…


 ー聞こえるか…


 なんだ?誰の声だ?耳に何かが訴えかけてくるようだった。ここにいる誰の声でも無かった。精神感応(テレパシー)か?だとしたら誰が…


「おい、何ボーッとしてんだよ。もう標的が見えてきたぜ」


 誠一の声で我に返る。ああ、と返事をし、心を落ち着かせる。異聖剣(ゼノンカリバー)の持ち手を強く握る。鼓動が速くなる。やはり、この剣に流れるゼノンと、僕のゼノンが感応している。これさえあれば絶対に勝てる。氷結(フリージング)程度の能力、僕には敵いやしない。


 スクリーンから外を見る。そこは一面氷漬けにされており、不覚にも綺麗に思えてしまった。あの大阪の賑やかな街がひっそり閑としてしまっている。逃げようとして氷漬けにされてしまったと思われる人も沢山いる。氷像のようだ。沢山のビルも真っ白になっていた。


「いた!あいつよ。あいつが敵」


 花音が興奮しているような声で言う。ここら辺でも特に高いビルの上で突っ立っている男。ゼノン探知機に反応しているということは、やはりあいつなのだろう。まるで、つい先日の僕のような姿だ。


「じゃあ行くよ。異界…展開!」


 花音が叫ぶと、ゼノギウスの胸の青い(コア)から、青いドーム光線が振り撒かれ、一瞬で世界を覆った。


 そして、気が付くと、さっきまで氷漬けだった街は元に戻った。しかし、やはり物音1つしない。人がいないのか。つまりここは異界ということだ。ただ1人、ビルの上で突っ立っている男がいた。遠目から見ても混乱している事が分かる。


「じゃあ、2人とも、地上へ!」


 花音が言うと、ゼノギウスの胸が開いて、手前に巨大な手が置かれた。これに乗って地上に下りると言うのだろう。僕と誠一は操縦室から出て、手に乗る。そして、地上に下ろされた。


「だ、誰だお前ら!」


 氷結能力者が叫ぶ。僕は手に青白い光を纏わせ、口に当てる。あえて精神感応(テレパシー)で答えよう。


 ー僕はお前と同じ力を持つ男。精神感応を使える。それ以外にもまだ能力を持っている。僕には絶対に勝てない。おとなしく降参しろ。さもないと…ー


 見る見るうちに敵の顔が蒼ざめて行くのが分かる。哀れだ。その程度の覚悟で能力を使って世界を混乱させようとしていたのか?


 徐々に自分の心が妙な感情に支配されているのが分かった。何だこの感覚は…これはあの時の…


 鼓動が激しくなる。あの時の感じが。


 ー殺すー


 この任務では起こすべきでは無い感情が起きてしまった。僕は光を纏った手を敵のいるビルに向ける


観念動力(テレキネシス)っ!」


 ビルに大きな亀裂が入り、真っ二つに割れる。敵が落ちていく。これだけじゃ終わらせない。もっと苦しみを…


「お、おい、紫苑。滅茶苦茶すんなよ?」


 誠一が僕の異変に気付く。しかし、もう感情は抑えられない。超高層ビルから墜落する敵を地面すれすれで観念動力で止める。そして、そのまま手を後ろの方向に向けると、観念動力の力で自分の体を吹っ飛ばし、一瞬で敵の正面に立つ。


「ひ、ひぃぃぃぃいいいい!」


「ふははは!もっと苦しめよ!なぁ!?」


 僕は敵の腕を掴み、そのまま空高くへと瞬間移動する。僕の瞬間移動は触れているものなら同時に移動可能なのだ。軽く100m近くの場所に瞬間移動する。観念動力でそのまま空中浮遊する。敵を持ち上げるのも観念動力さえあれば片手で十分だ。


「は、離してくれぇ!」


「僕はいつでも離してもいいんだぜ?でも、そしたら君は死ぬよ?」


「…だったら…」


 敵はカッと目を見開く。敵の手が青白く光る。そして、それを地面に向けると、地面が一気に凍り、そして100mを超える氷柱を生み出す。


「何っ!?」


 そして、いつの間にか俺の腕は氷結していた。観念動力が使えない!僕は一気に重くなった敵を離し、落下する。敵は氷柱に乗り、助かっていた。


 まずい。死んでしまう。手に光が宿らない。瞬間移動も使えない。どの能力も手を使わないとダメだなんて…とんだ欠陥能力じゃないか。くそ。


 その時、物凄いスピードで黒い物体が飛んできて、僕を救った。いつの間にか、僕はその物体の手の上に倒れこんでいた。ゼノギウス…花音だ。


「あなた何やってんの?一人だけで行動しないで!団体行動が基本なの!何度も言うようだけど、あいつを殺すのが目的じゃない。あくまでゼノンの力で暴走した者を救うことが目的。分かってる?」


 ゼノギウスから大音量で花音の声が聞こえる。怒られてしまった。そうだ、僕は何をやっている。落ち着け…感情を昂らせるな。くそ…僕はまだゼノンを扱えていないという事なのか…


「あなたは暫く動かないで。後は誠一くんが何とかしてくれるから」


「ったく、全部俺任せかよ!何の為のゼノギウスだよ!」


「あら、これは対ロボット専用機だからね。人間には強すぎるから使わないって、前にも言ってなかったかしらぁ?」


 何て女だ。僕と戦った時は普通にゼノギウスに乗って襲ってきたくせに…


 誠一は諦めたようで、一気に真剣な顔になって巨大な氷柱へと突っ走る。氷柱に乗った敵は、手から氷の球を繰り出す。誠一は間一髪で避けた。しかし、敵は次々氷の球を繰り出し続ける。きりがない。そして、とうとう誠一の右腕に球が命中し、右腕が氷結してしまった。


「ふーん、なかなかやるじゃねぇか。だったらこっちも本気で行くぜ?」


 誠一の右腕が赤く発光する。右腕の氷は全て溶け、そして、天に向けた誠一の右手から火柱が現れる。


「炎と氷、どっちが強いか試してみようじゃねえか!」


 誠一は火柱を火炎球へと転じ、氷柱の根元へとぶつける。根元は火の熱さで溶けてしまった。氷柱はギシギシ音を立て、ゆっくり倒れていく。しかし、敵はまた新たに氷柱を作り、自分の体を支える。誠一はそれにも火炎球を撃つが、敵はまた新たに氷柱を作る。きりがない。


 その時、耳に違和感を感じる。何かが訴えかけている?僕は耳に手を当てる。すると、聞き覚えのある声が耳に入ってきた。誠一の声だ。


 ー頼む。お前の力であいつの動きを止めてくれー


 そうか。僕があいつの動きを止めればいいんだ。僕の観念動力があれば、それが出来る。


 ー分かった。やってみるー


 僕は返事をし、深呼吸して、手に光を纏う。落ち着け。ゼノンに心を支配されてはいけない。高まる鼓動を必死に抑えて、ゆっくり敵に向けて掌を向ける。


「止まれぇぇぇ!」


 敵の動きが空中でぴたりと止まる。相手は必死に動こうとする。それを僕も必死に押さえつける。


 ー今だ。誠一!ー


 誠一は頷き、手に巨大な炎を生み出す。そして、空中で泊まっている敵に向けて、放射した。


「ぎゃぁぁぁあああ!」


 炎を纏った敵は熱さに悶え苦しむ。僕は観念動力を解く。敵は地面に落ち、のたうち回る。


「そろそろ勘弁してやるか」


 誠一は再び掌を敵に向ける。すると、一瞬で炎は消え去った。服は丸焦げ、体も黒くなっている。まるで消し炭だ。誠一は安堵の表情を浮かべる。しかし、僕の心は晴れなかった。


「じゃあ、こいつを連れて、帰るよ」


 花音はそれだけ告げた。僕らは氷結能力者を回収し、ゼノギウスに乗り込んだ。


 全員無言だった。一体何を考えているのだろう。精神感応で聞いてみようかと思ったが、やめておいた。

異聖剣の出番が無かった…

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