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終わらない物語  作者: 華百合
7/10

衝動

 その夜、同期3人で飲んだ後、別方向へ行く沖田と別れて駅へ向かう。…皿池と2人きりだ。

オフィスや研修所なんかの、みんながいるところで2人で話すのはよくあったけど、こうして外で2人きりっていうのはたぶん初めてだ。たかが2人分の足音でも、友達や会社の人とは全く感じ方が違って…、隣を歩くだけでも緊張してしまう。

だけど、緊張してる場合じゃない。今夜、言うって決めたんだから。

「…なあ、皿池」

「んー?」

皿池はあまり飲んでないはずだけど、極端に酒に弱いからな…。なんだかふわふわ歩いていて、俺の神妙な口調にも気づいていないようだった。

「俺とつきあってよ」

「……え?」

皿池の大きな目が一気に見開かれ…。そして、頬はほんのり赤く染まった。

俺が立ち止まると、それに合わせて皿池も止まる。

「俺なら、お前を裏切るような真似はしない。絶対課長より大事にする」

「で、でも、阪本くん彼女いるんでしょ…?すっごい美人の」

慌てた様子で俺を見る皿池。

きっと、混乱させてしまっているだろう。けれど、もう止められなかった。

「あいつとはとっくに別れてる。それからずっと、お前のことが好きだった」

「えっ…、そんな、急に言われても……」

俺はほぼ無意識のうちに皿池の肩を引き寄せ、強く抱きしめた。ずっと、触れたくても触れられなかった…。好きな気持ちを押し殺して、友達としてそばにいたけど…、もう、これ以上は黙っていられなかった。

「お前が課長といい感じなの、ほんとは前から知ってたんだ。それで…ずっと、嫉妬してた。返事は急がないから。課長のことを忘れるために俺を利用してくれたっていい。そのあとに、俺だけを見てさえくれれば。…だから、真剣に考えてくれないか」

「……うん…」

皿池が抵抗しないのをいいことに、俺はさらに力を込めて体を密着させた。

こいつって、こんなに小さかったんだな…。それなのに、いつも笑顔で気を張って、精一杯生きている。守ってあげたいと感じるのも、そのせいかもしれない。

困らせてごめん。気持ちを隠せなくてごめん。でも…皿池が傷ついて、寂しそうにしてるとこなんて、見たくなかったんだ。

「…阪本くん」

「ん…?」

「痛い…」

「…あっ!ごめん!」

つい、力をこめすぎてしまったみたいだ。

俺は皿池からぱっと離れる。でも俺が告白したとき、皿池はどう思ったのかがわからないから、なんとなく顔を上げ辛かった。だから、

「帰ろっか!」

そう言って皿池がにこっと笑ってくれたとき、俺は心の底から救われたんだ。

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